2009年9月26日 (土)

映画「裏切りの報酬」

裏切りの報酬

2005年チェコ
監督:ジリー・スヴォボダ
キャスト:
カレル…ミハル・ドロウヒー
ルドヴィク…ヤン・ドランスキー
イヴェータ…アリス・ヴェセラー

 1990年代。今まで正しいとされてきたことが間違っていた、ということとなり、全ての価値観、全てのモラルが崩壊したチェコ。明日が見えない。生きていくための指針もない。何でもあり、というような風潮の中で、ごく普通の人までも今の最低の生活から抜け出したい、もっとでっかいことをやってやる、との欲望を際限なく抱く。
 そんな中でも踏み越えてはいけない一線というものがあるのだ。

 若手№1の実力を持つ特別機動隊員カレルは、非番の時はカジノの用心棒をして小銭を稼いでいる。…というのは表向きの顔で、裏では武器の横流しをして荒稼ぎしている。しかし、そんなものははした金。彼と仲間たちはもっと大金があればでかいことをやれるのに、と常に金づるを探している。
 そんな代わり映えのない毎日。ルドヴィクという若者がカレルに近づいてきてからなにかが狂い始める。

 ルドヴィクはコソボのアルバニア人ということだが、殺しも含めて犯罪に対する罪悪感がいっさいないから、何も恐れない。義理とか人情とかもない。麦を刈ったり魚を釣ったりするくらいの感覚で人を殺し、それを楽しんでさえいる。ルドヴィクに引きずられるようにしてカレルも殺しに荷担してしまうが、それも信義にもとるような殺しで、心から愛する女性に出会えた時に、じわじわとカレルを追いつめていくことになる。

 1990年代のなんとももやもやした雰囲気がすごくよくでている。むしろ今の日本のようでさえある。象徴的に何度も出てくる橋の映像が印象的。

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2009年9月24日 (木)

映画「バトル・オブ・リガ」

バトル・オブ・リガ [DVD]

2007年ラトビア
監督:アイガルス・グラウバ
キャスト:
マーティン…ヤニス・レイニス
エルザ…エリタ・クラヴィナ
パーヴェル・ベルモント…ギルツ・クルミンス
ゴルク将軍…ロムアルドス・アンサンス

 恋人が出征して長い間帰ってこず、いざ帰ってきてみればなんともいえない違和感を感じて結婚しないとか言い出す戦争物によくある揺れる乙女心の話か、と思って見ていたら、ストーリィ部分はまぁそうなんだけど、歴史の流れ自体が壮絶。こんなすごかったんだ。
 バルト三国のひとつ、ラトビアの歴史、特に独立時代の歴史って詳しく語られる事が少ないから、非常に新鮮に感じた。

 第一次世界大戦が終わってドイツが敗北、ラトビアは独立を勝ち取った。
 しかし、駐留ドイツ軍のゴルク将軍はドイツに引き揚げる気はない。ボリシェビキから逃れてラトビアにやってきたベルモント大佐を利用してリガへの侵攻を始める。独立に伴いラトビア軍が創設されたとは言っているが、そんなのドイツ・ロシア連合軍に比べたら赤ん坊同然。平和な暮らしをすることだけが望みのリガ市民も自分の街を守るという気概に欠ける。英仏もラトビアのような小国に親身になってくれはしない。果たしてリガを守る者はいるのか?

 おもしろいことに、みんなしゃべってる言葉がバラバラ。ロシア語しゃべる人はドイツ人に対してもロシア語でしゃべってる。あれでお互い通じてるのかねぇ?
 ベルモントはコサックなのかな。こいつも含めロシア人はなんか抜けてるような感じで、敵役なんだけど笑っちゃう。
 「ああ、ラトビア人ならピンとくるんだろうな」と思える印象的なシーンがいくつかあった。この映画を見てからラトビア独立の歴史を読んだら、「ああ、あれか!」って思いそうだ。


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2009年8月 7日 (金)

映画「レッド・ウォリアー」

レッド・ウォリアー [DVD]

2005年フランス/カザフスタン
監督:イヴァン・パッセル/セルゲイ・ボドロフ
キャスト:
マンスール…クノ・ベッカー
エラリ…ジェイ・ヘルナンデス
賢者オラズ…ジェイソン・スコット・リー
ガルダンツェリン…ドスハン・ジョルジャクスィノフ
ガウハル…アヤナト・クセンバイ
シャリシュ…マーク・ダカスコス

 18世紀。
 オイラトのジューン・ガルがカザフをたびたび攻撃した。そのころ、カザフは大きく三つの集団(ジュズ)、無数の部族に分裂しお互い協力するという事をしなかったため、アクタバン・シュブルンドゥ(跣足の逃走)と呼ばれる災厄に耐えるしかなかった。
 賢者オラズは、
「いつかチンギスハンの末裔の勇者が現れ、カザフを束ねて外敵を退ける」
という伝説を信じ、未来のカザフの救世主を探して諸国を渡り歩いている。
 ある日、オラズが先祖の記念碑である草原の石人に祈っていると、天啓によってその勇者が生まれたことを知る。しかし、ジューン・ガルの巫師もそれを感知していた。ジューン・ガルのハーン・ガルダンツェリンはその赤子を殺そうと刺客を差し向ける…。

Semenovs_footnotes
 壮大な山々を遠景に美しいカザフスタンの草原を勇者の卵たちが裸馬に乗って疾駆する。
 ジューン・ガルは既に砲兵部隊を持っていてカザフ側の要塞を砲撃するんだが、カザフ側はモロトフ・カクテル(?)で反撃、大爆発するシーンは圧巻。お約束の車裂もモロ。フレッシュな枝肉のようにぷるるん、と足が躍動。これだけあっけらかんと千切られちゃうとグロくはないのだけれど、これ見ると、「モンゴル」はあれでも相当抑えた表現になってたんだぁ、と思ってしまう。

 ジューン・ガルのガルダンツェリンがオルタ・ジュズ(中オルダ)のアブライを捕らえて2年近く捕虜にしていたという史実から生まれた民話、もしくは英雄叙事詩といった趣きの物語。
 カザフ人自身がカザフという「民族」のアイデンティティーをどの辺りに置いているのかと実感できる点でも興味深い映画だ。原題の「NOMAD: The Warrior」もあんまり適切じゃない気がする。むしろ「カザフ」という名の原義「ハーンの支配の枠から離れた民」「放浪者」を邦題にした方が良いような気がする。そうするとガルダンツェリンが賢者オラズのことを「カザフ」と呼ぶのも生きてくる。でも、それじゃあその筋の人しかぴんとこなくなっちゃうのかもしれないな。

 こんな感じでカザフスタンの国策映画っぽい内容なのに、主役級の人たちがどう頑張ってみてもアメリカ人にしか見えない(クノ・ベッカーはメキシコの人らしいけど)のがとても不思議だった。
 ひょっとすると、「ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習」に大いに憤慨したカザフスタンが、
「正しいカザフとはこうだッ!!!」
とアメリカ人に教え諭すために、アメリカ人にも受け入れ易い顔の人を起用したって事なのかな。

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2009年8月 4日 (火)

ドキュメンタリー「KGBシークレット・ファイルズ スパイ・ゾルゲ ~裏切りの特派員~」

KGB シークレット・ファイルズ スパイ・ゾルゲ~裏切りの特派員~ [DVD]
Sorge2005年ロシア
制作:TV CHANNEL RUSSIA

ゾルゲ事件
 1941年10月にリヒァルト・ゾルゲを中心とするソ連の赤軍第四本部に属する諜報グループが検挙された事件。グループのうちゾルゲは駐日ドイツ大使・オットーの、尾崎秀美は近衛文麿のブレーンの一人であった。ゾルゲと尾崎は1944年11月7日に絞首刑になった。

 原題は「リヒァルト・ゾルゲの謎」。
 「謎」っておまえが言うな、と標的にされた側としてはイラっとしないでもないが、ブハーリンらゾルゲにとっても知己であった共産党やコミンテルンの指導者たちが次々と人民の敵と暴かれ消えていく異常事態を目にしながらなぜソ連に尽くしたのかは、確かに大きな謎である。国外にいたから知らなかったというわけでもない。上司のヤン・ベルジン、セミョーン・ウリーツキーら身近な人たちがあまりにも頻繁に交替しているのだ。見なかったことにするにしても、実際は見ているのだから、心穏やかでいられるはずはないのだ。
 それでも義務を果たし続けるゾルゲの心情、行動の論理を解き明かそうとするドキュメンタリーだが、かなり現代的な解釈になっているように思う。このくらいの合理的解釈をしないと21世紀のロシアの人々には既に当時の心理が理解できなくなっているという事か。

 このドキュメンタリーに出てくる「ラムゼイ(ゾルゲ)」グループのメンバーは、尾崎以外全員共産党員だから、知性のある党員だったらレーニンの戦友たちが人民の敵だろうかと疑念を抱かないはずはない。あるいは独ソ不可侵条約に衝撃を受けないはずはない。
 そのうえ、ゾルゲに対してモスクワが
「ドイツか日本の二重エージェントなのではないか?」
と疑っている事は、その反応で薄々わかる。信じて身も心も捧げているものから信じてもらえない哀しみ。ゾルゲの微妙な心の揺らぎを彼が本部に送った通信文の行間や東京での行動の乱れから読み解いていく。

 その頃つきあい始めた石井花子に癒し(あるいは救い)を求めていたのだろうと思われることからもゾルゲの苦悩の深さを見て取れる。
 このドキュメンタリーを見て思ったのは、その時々につきあっていた女性のタイプからその時々の男の本音がここまで赤裸々に出てしまうものなんだな、という事。
 例えば、オットー夫人とはお互いに利用し合う打算? モスクワで待っている本妻カーチャはソ連への変わらぬ愛?
 なお、尾崎をゾルゲに引き合わせたスメドレーはここには出てこない。スメドレーも不可解な状況下で死亡しているが、カーチャの死の状況はもっと悲惨で謎めいている。

 ゾルゲはロシアやドイツでは日本で知られているほどには知られていないということで、ドイツのモスクワ占領を防ぎ、現在のモスクワの繁栄に陰ながら貢献している名もなき英雄を取り上げるというような描き方。なので、スターリンが猜疑心が強く自信過剰なだけの凡庸な人物に、ゾルゲの最後の上司フィリップ・ゴリコフがお追従言いのど素人に、ジューコフがハルヒン・ゴル(ノモンハン事件)とモスクワ防衛の英雄に、と単純化されマンガチックに描かれているのは仕方ないか。この辺の人が型にはまった感じがするとドキュメンタリーとはいえ物語風に脚色されていると感じてしまうのだが、88分あるとはいえ、ゾルゲを名前くらいしか知らない人たちにその活動の全容を知ってもらい、ゾルゲの心情をあぶり出すにはその他のことをバッサリ切るしかない。悪役扱いされている人たちにもそれぞれの言い分があり、他の評価もある(スターリンについては「スターリンについて知っているいくつかのこと」。ほとんど神格化されているジューコフについても、実は…というのは、KGBシークレット・ファイルズ「ノモンハン事件~第2次世界大戦への爪痕~」や「恐怖の核実験~世界終焉への予行演習~」で触れられている)。
 とはいえ、モスクワでのゾルゲの生活ぶりや上層部との絡みはなかなか興味深い。ゾルゲ事件について日本には厖大な資料があるとはいっても、その部分はやはり謎だったからだ。
(第2部の最初で少し触れられる日本に亡命したチェキスト、ゲンリヒ・リュシコフの末路については「日露の戦い~諜報合戦~」で述べられている。)


 ところで、ゾルゲはこんな事を言っている。

「スパイ」に対する最良の対策は、何事も秘密にして「スパイ」を防ぐのではなく、「スパイ」が知ろうとする事をどんどん変えるのが一番である。そうすれば「スパイ」は、遂にはつかれて、その知ろうとする努力をやめて仕舞うものである。(『獄中手記』より)

 だとすれば、首相が1年も経たずにころころ替わったり、閣僚がめまぐるしく交代する日本は、特に防諜機関がなくても最強のスパイ対策ができてるって事ぢゃないか。ヨカッタヨカッ……、、、、って良いのかな、これ? あまりにも大量な、信憑性があるんだかないんだかわからない情報がたれ流しになっている東京は、情報将校にとっては情報を集めても集めても終わりのない過労死間違いなしの地獄だと恐れられているそうではあるが。


参考文献:
■F.W.ディーキン・G.R.ストーリィ著/河合秀和訳『ゾルゲ追跡 リヒアルト・ゾルゲの時代と生涯(1980年)』(筑摩書房)
文庫版→ 『ゾルゲ追跡〈上〉 (岩波現代文庫)』(岩波書店)
ゾルゲ追跡〈下〉 (岩波現代文庫)』(岩波書店)

■尾崎秀樹著『ゾルゲ事件 尾崎秀実の理想と挫折(中公文庫)』(中央公論社)

■石井花子著『人間ゾルゲ (徳間文庫)』(徳間書店)

■尾崎秀樹著『越境者たち―ゾルゲ事件の人びと (1977年)』(文藝春秋)
※獄死した宮城与徳の伝記。

■山崎淑子著『ブランコ・ヴケリッチ獄中からの手紙』(未知谷)
※獄死したヴーケリッチと日本人の妻・山崎淑子の往復書簡。

■川合貞吉著『ある革命家の回想 (徳間文庫)』(徳間書店)
※川合はラムゼイ・グループのひとりだが、二‐二六事件(1936年)直前に検挙され、以後活動していない。

■ジャニス・マッキンノン・スティーヴン・マッキンノン著/石垣綾子・坂本ひとみ訳『アグネス・スメドレー 炎の生涯』(筑摩書房)

■リヒアルト・ゾルゲ著『ゾルゲ事件 獄中手記 (岩波現代文庫)』(岩波書店)

■尾崎秀美著『ゾルゲ事件 上申書 (岩波現代文庫)』(岩波書店)

■尾崎秀美著『尾崎秀実時評集 日中戦争期の東アジア (東洋文庫)』(平凡社)

■尾崎秀美著/今井清一編『新編 愛情はふる星のごとく (岩波現代文庫)』(岩波書店)

■尾崎秀樹著『生きているユダ ≪ゾルゲ事件-その戦後への証言≫(徳間文庫)』(徳間書店)


■『現代史資料〈第1〉ゾルゲ事件 (1962年)』(みすず書房)

■『現代史資料〈第2〉ゾルゲ事件 (1962年)』(みすず書房)

■『現代史資料〈第3〉ゾルゲ事件 (1962年)』(みすず書房)

■『現代史資料〈24〉ゾルゲ事件 (1971年)』(みすず書房)

■白井久也著『米国公文書 ゾルゲ事件資料集』(社会評論社)

■ビクトル・スヴォーロフ著/出川沙美雄訳『GRU―ソ連軍情報本部の内幕』(講談社)

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2009年7月15日 (水)

ドキュメンタリー「KGBシークレット・ファイルズ ノモンハン事件~第2次世界大戦への爪痕~」

KGB シークレット・ファイルズ ノモンハン事件~第2次世界大戦への爪痕~ [DVD]
Halhin_gol2004年ロシア
制作:TV CHANNEL RUSSIA


ハルハ河会戦(またはノモンハン事件、ハルヒン・ゴル紛争ともいう)
 1939年5月から9月にかけてモンゴルと満州の国境、ハルハ河付近でソ連・モンゴル軍と日本・満州軍が衝突した戦争。モンゴル人民共和国と満州国の国境紛争が、戦車や航空機を投入した赤軍と関東軍の大規模な戦闘に発展した。
 双方とも多くの死傷者を出したにもかかわらず、「よくある国境紛争」として紛争中もその後も両国民に詳しい経緯が説明される事はなかった。

 敵の侵入を阻止し得たとはいうものの、

指揮系統の混乱
脆弱な通信網
貧弱な補給線
将兵の訓練不足
等の原因で7976名もの将兵が戦死したという事実を国民にひた隠しにしてきた、
ソ連軍の話である。

 問題点が日本軍にあまりにも似ていて呆れた。こんなヘタレ軍隊に負けたのか、関東軍。大東亜戦争も始まってないのに終わってる。

○指揮系統の混乱
 日本の奇襲を予知できずに事態の収拾にも失敗したフェクレンコをクビにして経験豊かで補給の大切さをよくわかっているグリゴリー・シュテルンに替えたため、ソ連軍のこの問題は徐々に改善していく。
 現に7月9日にザバイカル軍管区と第57特別軍団を統合した「前線集団」の司令官にシュテルンが任命され、道路を造り電話線を引き、また規律を重んじて通信網、補給路、軍の組織を整えてからは日本軍は敵わなくなっているではないか。
 その代わり、シュテルンよりあとに任命されたゲオルギー・ジューコフとの確執が問題になってくるが、シュテルンもジューコフのごり押しに負けてはいない。

○脆弱な通信網
 部隊間の連絡がとれずに、友軍であるモンゴル騎兵を攻撃したり、ソ連機が自陣営を爆撃したり、歩兵(自動車化狙撃)部隊が迷子になって戦車部隊が単独で日本軍のただ中に突入したり、散々である。
 誤射・誤爆は一度ならずあったらしく、ここで紹介されている報告書では「地上部隊は意気消沈した」とあっさり書かれているが、味方の誤爆くらいがっくりする話はない。

○貧弱な補給線
 日本軍はソ連側の鉄道が数百km離れていて補給がうまくいかないことを期待したのだろうが、弾薬も食料も充分でない日本軍が歯を食いしばって叩いても、ソ連軍は翌日にはけろっと回復していて、物資は無尽蔵であるかのように見えたのは、前述のようなシュテルンの尽力のたまものだったのだ。

○将兵の訓練不足
 ソ連兵は白兵戦を嫌ってすぐ逃げてしまったと日本側の参加者が度々指摘している。ソ連軍はウラル軍管区の予備役から編成されており、兵器を初めて手にする者さえ少なくなかったのだという。
 ソ連(というかスターリン)ご自慢の航空部隊が初期に壊滅といっていいほどの打撃を受けたのも、ソ連の戦闘機イ15が96式戦闘機に比べ性能が劣っていたのに加え、パイロットの経験不足が大きかったという。
 スムシケーヴィチ率いる経験豊かで腕の良いパイロットが投入され、またジューコフに鍛えられながら度重なる実戦で兵士たちの経験値は否応なくあがっていく。

 …とまぁ、ソ連が弱点を克服していった様子を見るだけでも、戦いが長引けば長引くほど日本が勝てる気がしない。
 それに加えて、ヨーロッパ情勢との絡みでソ連には決して負けられない理由があったのだという。

 短いドキュメンタリーなので「知られざるハルヒン・ゴル」……ソ連の一般市民が平和に安心しきって暮らしていた裏で、赤軍が意外な脆さをさらけ出されてその克服に文字通り血を流していた点に重点が置かれ、日本軍については軽く触れられるだけだ。そのせいか、少々買いかぶりすぎだなぁ、と面映ゆく感じられる箇所もある。日本軍も実情はぐだぐだなんだけどなー。

 ソ・モ軍の特徴や、個々の戦闘については日本側の資料とよく符合している。ソ連軍のナゾの行動の意味がわかるようなエピソードもあり、舞台のセットを裏から見るようなおもしろさ。日本軍がハルハ河を越えてモンゴル領に侵攻したとき(7月2日~5日バヤン・ツァガーンの戦闘)には、「ソ連軍はもう少しで壊滅するところだった。ヤバカッタ」なんて話を聞いたら悔しさのあまり卒倒する人もいるのではないだろうか。

 そもそも、モンゴルはノモンハン・ブルド・オボーを通る線を、満州はハルハ河を国境だと主張しており、両国間の国境警備隊の間で小競り合いが絶えなかった。
 日本は進んで戦う気もなかったが、かといって話し合いで解決する事も好まず、モンゴル軍が満州=日本の主張する国境線を越えて侵入してきた機を捉えて一撃を加えて出鼻をくじき、モンゴル、ひいてはその背後にいるソ連に手を出せば痛い目に遭うぞ、と思い知らせることによって国境線を安定させようと考えていたという。

 しかし、思い知ったのは日本の方であった。日本はこの後、同盟国ドイツにいくら尻を叩かれても対ソ「第2戦線」を開くことはなかったのである。


参考資料:
■防衛庁防衛研修所戦史室著
関東軍〈1〉対ソ戦備・ノモンハン事件 (1969年) (戦史叢書)』(朝雲新聞社)

■アルヴィン・クックス著/岩崎俊夫訳/秦郁彦監修
ノモンハン 草原の日ソ戦-1939<上><下>』(朝日新聞社)

■シーシキン著、シーモノフ著/田中克彦訳
ノモンハンの戦い (岩波現代文庫)』(岩波書店)

■ア・ベ・ボロジェイキン著/林克也・太田多耕訳
ノモンハン空戦記―ソ連空将の回想 (1964年) (フロンティア・ブックス)
』(弘文堂)

Khalkhingol■マクシム・コロミーエツ著/小松徳仁訳/鈴木邦宏監修
ノモンハン戦車戦―ロシアの発掘資料から検証するソ連軍対関東軍の封印された戦い (独ソ戦車戦シリーズ)』(大日本絵画)




■O.プレブ編/D.アルマース訳/田中克彦監修
ハルハ河会戦 参戦兵士たちの回想』(恒文社)

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2009年7月 2日 (木)

映画「アルマズ・プロジェクト」

アルマズ・プロジェクト

2007年アメリカ
監督:クリスティアン・ジョンストン
キャスト:
リック…ジェームズ・ボブソン
ウィスリー…ギデオン・エメリー
ララ…インナ・ゴメス
ボリス…イーゴリ・ショイフォト

 1998年、ロシアの宇宙ステーション、アルマズ4号が軌道を外れ大気圏に突入、バラバラになってウクライナに落下した。アルマズの名を持つ宇宙ステーションは軍事目的のものと言われる事もあり、そのためかロシア政府はこの事故について口を閉ざした。
 しかし、アルマズのブラックボックスを入手した民間の団体が、数年を掛けて解析、編集したものが本作品である。あなたには、真実が見えますか?

……といった趣向の映画。

 原題「アルマズ・ブラックボックス」なのに邦題が「アルマズ・プロジェクト」なのは、アルマズ買い取りのための調査に来たESAのウィスリーの持ち込んだテレビカメラの映像が「ブレアウィッチ・プロジェクト」風だからか。でも、乗組員たちを蝕む何かの得体の知れなさ、不気味さはリングの「呪いのビデオ」により似ているかもしれない。フラッシュバックのようにたびたび現れる画像の乱れや解析映像も中毒性のようなものがあり、その画をもっと見せろ、もっと見たい!と思えてくる。
 そして「リング」なら、「呪いのビデオ」中の画像の意味は主人公たちによって説き明かされていくが、それがない。解釈は見た人次第。ロシア政府の陰謀か、エイリアンの仕業か、錯乱した乗組員の狂気が見せた幻影か、未知の病原体なのか、あるいは……。

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2009年6月27日 (土)

ドキュメンタリー「KGBシークレット・ファイルズ 日露の戦い ~諜報合戦~」

KGB シークレット・ファイルズ 日露の戦い~諜報合戦~ [DVD]
Duel

2004年ロシア
制作:TV CHANNEL RUSSIA

 シベリア単騎横断でおなじみの福島安正から始まったので、何やらトンデモなものかも?!と思ってヒヤヒヤドキドキしながら見始めたが、実に真摯な日本とロシアの交流史であった。明治政府辺りのことはよく知らなかったので、通史的に知る事ができてとても良かった。
 日露戦争など日本にとって重要な歴史的な出来事でロシアと深く関わっているにもかかわらず、学校の歴史の授業ではごく浅くしかやらなかったような気がする。伊藤博文暗殺事件についても、それがロシア領(鉄道の敷地内のため)で起こったために両国間の懸案になったなんて知らなかった。

 というわけで「諜報合戦」と銘打ってはいても、既に歴史になっている時代を扱っているうえに軍事情報中心なので、それほどえぐい話はでてこない。

 むしろ「日本、敵ながらあっぱれ」という感じのドキュメンタリーになってる。福島は新生日本に情報機関をうまく組織した有能な軍人に描かれており、彼の組織に完敗したロシアが反省して努力を続けた結果、第二次世界大戦で雪辱を果たす、という流れになっている。
 しかし、その間ロシア革命やら大粛正やらあって、ロシア~ソ連の情報機関の人員はめまぐるしく変わっているはずで、そういった国家百年の計みたいな長期目標を継承して来れたのか非常に疑問に思うところではある。例えば、ゾルゲの上司なんて何度も替わっているうえに引き継ぎがちゃんとできていないではないか。
(『KGBシークレット・ファイルズ スパイ・ゾルゲ~裏切りの特派員~』参照。)

 とはいえ第二次世界大戦の結果は実際あの通りであって、見終わったあと、やはり「ロシアさん、執念深いなぁ」という印象が残る。

 解説によると、このドキュメンタリーはあまりにも親日的だという理由で編集し直されているそうだ。事実の羅列に親日も反日もあるか、と思うのだが、確かに福島ばかりでなく広瀬武夫や乃木希典、内田良平等々、誠実で信念のある人に描かれている。特に広瀬は悲劇のヒーローみたいになってる。
 しかし、ソ連のためにダブル・エージェントになった人物を日本のスパイとして処刑してしまったソ連側に対し、日本側の情報将校は最後まで彼を守ろうとして口を割らなかったケースなどは、日本びいきというよりは粛正に次ぐ粛正で有能な人たちの虐殺を繰り返してきたソ連の治安機関に対する皮肉にも見えるのだが…。
 そう考えると、このドキュメンタリーはロシア=ソ連軍びいきなのであって日本びいきではなく、NKVDなどの治安機関に対するあてこすりが結果的に親日的に見えたというだけかも知れないので、ロシア人は親日的だと油断してはいけないのである(笑)。


 このてのものを見る人は、OGPUとかNKVDとか当然知っていることになっているらしく、解説がない。ソ連の情報機関はたびたび名前が変わっているので、タイムラインにまとめてみた

もっとも、軍事情報だとGRUなんだが…。

参考文献:
ロシヤにおける広瀬武夫 上 (朝日選書 57)
ロシヤにおける広瀬武夫 下 (朝日選書 58)
ツシマ〈上〉バルチック艦隊遠征
ツシマ〈下〉バルチック艦隊壊滅

※日露戦争については、アジア歴史資料センターで「日露戦争特別展 公文書に見る日露戦争」を開催しているのでそちらも参照。

悪魔の飽食 新版―日本細菌戦部隊の恐怖の実像! (角川文庫 も 3-11)

※なお、ゾルゲ事件については
KGBシークレット・ファイルズ スパイ・ゾルゲ~裏切りの特派員~
ノモンハン事件については
KGBシークレット・ファイルズ ノモンハン事件~第2次世界大戦への爪跡~
にまとめたのでそちらをどうぞ。

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2009年6月19日 (金)

ドキュメンタリー「KGBシークレット・ファイルズ スペース・ドッグス~実験・宇宙犬~/青い血の秘密~フェイク・ブラッド~/恐怖の核実験~世界終焉への予行演習~」

KGB シークレット・ファイルズ スペース・ドッグス~実験・宇宙犬~/青い血の秘密~フェイク・ブラッド~/恐怖の核実験~世界終焉への予行演習~ [DVD]
Spacedogs_2

2004年ロシア
制作:TV CHANNEL RUSSIA


スペース・ドッグス~実験・宇宙犬~

 例のライカの話である。
 ライカの乗ったスプートニク2号は無事楕円軌道にのったものの、予定していたより太陽に近づき過ぎ、カプセル内の温度が急上昇して…。
 ライカが地上に戻る事はないと最初からわかってはいたけれども、苦しんで死んだに違いない事は実験に参加した人たちの心にしこりとして残っている。

 それにしてもおとなしい犬だな。その辺から野良犬をいわば「徴兵」してきてアストラハンの施設(今は廃墟)で訓練したそうだから、由緒正しい血統書付きの犬でもなければ子犬の頃から英才教育を受けた天才犬でもない。中には飛行直前に脱走した犬もいたそうだが、宇宙船内の映像ではどの犬も鳴いたり暴れたりしていない。原題の「宇宙野良犬部隊」ってなんだか人間を主人公にしてもありそうな題名だな。

 犬は群れで行動する動物だから、群れに所属してその中に自分の居場所を得、賢いリーダー(飼い犬なら人間)の命令に従って行動することに苦痛はなかろう。むしろ犬の自然な姿ではないだろうか。死というものを理解しないにしても、自分がリーダーに信頼され、群れの中で大切な役割をしているということはわかるのではないか。
 実験時に命を落とすのも、大きな獣に群れで襲い掛かかった時、蹄や角に引っかけられて死ぬのと犬にとっては大差ない気がする。

 特殊な才能を持って生まれながら、その能力を一度も使うことなく毎日かわいいかわいいとなでられ、食べるものにも不自由せずに一生を終えるペットとどちらが犬にとって幸せなのか。
 それは犬にしかわからない。


青い血の秘密~フェイク・ブラッド~

 人工血液の開発に文字通り命をかけたアストラハン出身の医師、ベロヤルツェフの死をめぐる疑惑。

 人工的な血液の代替物というと思い浮かぶフルオロカーボンは乳白色だが、ベロヤルツェフの開発したペルフトランは日に透かすと青っぽく見える程度の透明な液体のようだ。
 ようやく「KGBシークレット・ファイルズ」の題名に相応しい謎めいたおどろおどろしい話が出てきたぞ、とミステリーを見るようなお気楽・他人事気分で見ていたら、事件の淵源に話しが及んだとたんに飛び上がりそうになった。
 うっわー、それってミドリ十字だろ? いやいや、マジヤバイから。というか、「歴史」として語るにはまだ生々しすぎる話だ。
 …でも、内藤良一は1982年7月7日没だから。機密でも何でもない。ウィキペディアにも出てる。
 そんな感じで、じっくり見ても知識がないので手も足も出ず、もやもやしたスッキリしない気分だけ残る話なので、医療分野に詳しい方のツッコミ希望。

 それにしても、厚労省まわりの案件って何もかも黒いのな。


恐怖の核実験~世界終焉への予行演習~

 1954年9月14日。
 南ウラルのトツコエで軍事演習が行われた。当時は核戦争がリアルに差し迫った脅威であったため、より演習を実戦に近付けるために核兵器が使用された。
Totskiypoligon

 機密解除された演習の記録映像はたぶん宣伝用なんだろう。一般的には公開されていなかったとしても、例えば友好国の軍や政府の高官に見せてソ連の軍事力を誇示するために使われたもののようで、なるほどこれなら公開しても差し障りないと思える内容だ。しかし、それがかえって恐ろしい。このドキュメンタリー、どういう内容か知らずに漫然と見始めたので、
 え? 演習だよ?
 まさか実際に核爆弾使わないよな?
 4万5千人以上の兵士が参加してるんだよ?
 実戦さながらって言ってもまさか本当に地上で爆発させないよな?
 シミュレーションだよな?
信じられない思いで何度も問い返しつつ見た。ところが、爆発のタイミングさえよく制御できない段階の核爆弾を本当に爆撃機で投下したんである。
「背中にアイロンを当てたような熱を感じた」
「白い攻撃機が雲に突入して、出てくると真っ黒になっていた」
「防御服を脱いで作業した」
といった話が続出で絶句する。

 ところで、いわば火消し役でインタビューに答えている軍事史家のマフムード・ガレーエフって元の名前はガレイ(ギレイ)でハンの血筋の人? とか思った。
 まぁ、それは本題に関係ないが、ガレーエフ氏も演習に参加しており、この演習の指揮を執っていたゲオルギー・ジューコフ元帥も核爆発の瞬間にシェルターに入らずに爆発を見ていたという。そして、核爆弾で死んだ者は一人もいないとガレーエフ氏は強調する。
 「ヒロシマ」という単語は皆知っていても、放射能の危険はそこじゃないと誰もわかっちゃいなかったのだ。もしくはわかりたくなかった。兵士は核の直撃に耐え、一定時間(5時間とか)戦闘を行って敵に反撃することができれば充分で、以後のことは軍の知った事じゃないのだ。だから追跡調査も行わない。

 日本以外の国は他国からの核攻撃を受けたことはない。しかし、全ての核保有国でこの手の話はあるわけだ。ソ連の例は極端かもしれないが、核がどちらの側に牙を剥いているのか、核の傘に守られていると主張する人は一度点検してみると良い。

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2009年6月12日 (金)

映画「ストリート・レーサー」

ストリート・レーサー [DVD]

2007年ロシア
監督:オレーク・フェセンコ
キャスト:
ステパン…アレクセイ・チャドフ
カーチャ…マリーナ・アレクサンドロヴァ
ドッカー…スタニスラフ・ボンダレンコ
カーチャの父…ニコライ・チンジャイキン
モコフ父…アレクセイ・グシコフ

 ステパンが兵役を終えて帰ってきた。元戦車乗り、初めて乗るセリカでサンクトペテルブルグの市街地をぶっ飛ばす彼に、皆は「T-34」というあだ名を付けた。

 セリカの持ち主、カーチャはストリートレーサー・グループのリーダー、ドッカーと最近別れたばかり。でもドッカーが他の女の子といちゃいちゃしていると心穏やかではいられない。こう言っちゃ女性に怒られるかもしれないが、いやまったく
「怒った顔もカワイイね」
って感じ。カーチャやドッカーの浮気相手の女の子が綺麗な顔を屈辱や嫉妬で歪め、細い指をブルブル震わせてタバコに火を付ける様がなんとも。
 しかし、道行く女の子たち、あんなひらひらのスカートでパンツをはいてない。そんなもんなんだろうか。それじゃあ暴走車が通るたびにぴら~っておしりが出ちゃうだろ。え? Tバックとかですか? 私見事に欺されてますか?(笑)

 派手に車が転がる転がる。横転、前方転回、空中分解に爆発。冒頭では戦車もびょんびょん跳んでた。いつも不思議に思うんだけど、戦車がジャンプして大きく跳ねる映像ってよく見る。あれって中の人はどうなってるんだろう?
 そうそう、サンクトペテルブルクの跳ね橋はかちどき橋と違ってちゃんと稼働してるから、期待通りジャンプもしてくれる。
 で、最後にはドッカーとステパンがニッサン350Zとフェラーリ512TRで対決するんだが、実際のところ勝負になるのかな? カーチャがセリカで狭い露地まで入り込んで身軽に動き回ってパトカーを翻弄するのはありそう?なんだけどさ。

 交通警察との絡みがおもしろい。取締の理不尽さ加減は日本の比でないのか、茶化して大袈裟に言ってるだけのか、交通警察に対する普通の人の反応がいちいち可笑しい。カーチャの親父も取り締まる側なんだが、この親父かなり酷い。娘が連れてきたステパンをいたく気に入り、酒を勧めて彼が車だからと断ると
「気にするな、わしも飲酒運転だ」。
「免停になったときはわしに委せろ」
とも言ってる。
 そもそも、あれだけ目立つ車で公道レースをやって、拠点もわかってるのに捕まえられないなんて警察はどれだけ能なしなのか。こっくりさん(ウィジュ板方式)でこのストリートレースの開催場所を占っていたりして駄目だこいつら…。

 でもこれには裏があるんである。

アレクセイ・チャドフが出演している映画:
レッド・スナイパー 独ソ最終決戦」「チェチェン・ウォー」「ナイト・ウォッチ」「デイ・ウォッチ」「ヴィイ(邦題未定)

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2009年6月10日 (水)

映画「特殊部隊エスヴェーエル S.V.R」

特殊部隊 S.V.R [DVD]

2003年ロシア
監督:セルゲイ・アコポフ/オレーク・ポゴジン
キャスト:
ヴィクトル・ブィストロリョートフ(トラベラー)…ヴァレーリィ・ニコラエフ
リタ・ノヴォショーロヴァ…マリヤ・キッヴァ
ロコトフ大将…ユーリィ・ソローミン
カズナチェーフ…ヴァシーリィ・ミシェンコ
マルシャンスキー(スモーカー)…パーヴェル・デレヴャンコ
コフチューギン兄(キング・コング)…ヴラジーミル・トゥルチンスキー
コフチューギン弟(ゴジラ)…ドミートリィ・デュジェフ
ヤン・ヴァンタル局長…オレーク・シテファンコ
マダム・ゴール…ナターリヤ・ボルトニコヴァ

 大昔見てた「スパイ大作戦(Mission:Impossible)」みたいな話だなー、マトリックスっぽい映像だよなーと思ったら、原題「遂行不可能な任務」か? まんまじゃん。銭形警部からみたルパン三世っぽくもあるが(ただし相手はルパンでなく峰不二子)。

 潜入捜査を得意とし、おそろしく身の軽い主人公のヴィクトル、主に拠点となる車で機器の操作をしてる眼鏡くんのマルシャンスキー、体育会系のコフチューギン兄弟、主人公に好意を寄せるショートカットのできる女リタ、ボス的ではない彼らの上司カズナチェーフ局長、彼らに理解のあるお偉方のロコトフ将軍。
 この人たちを中核に個々のエピソードによって多少出入りがある。でも、こういうレギュラー陣の中に入ってくる人ってそれだけで死亡フラグだよなぁ(笑)。

 ちゃんとイヤなやつは死に、爆発は大爆発、格闘シーンは主人公が体操選手かってほど柔らかな動きをし、女同士の戦いではネイルチップがババっとはじけ飛ぶのが格好いい。日曜の夜なんかに何も考えずに気楽に見るにはちょうど良い。あんまりじっくり見てしまうと、
「こいつら実はあんまり優秀じゃないんじゃ…」
と思うようなところが多々あるもので…。通しで見るとお手軽じゃない長さなので前後編になってるのかも。

 第一部で重要な役割をするのは猫。
 グルザという謎のテロ組織からニューヨーク、東京、モスクワのどこかを爆破する、という予告電話が入る。中東のどっかの国の大金持ちシェイバニもグルザに資金提供しているらしいと疑われているが、はっきりしたことはわからない。そこで、大がかりな仕掛けを用いてヴィクトルがシェイバニの身近なところに潜入する。味方に犠牲を出しながらも、ヴィクトルはシェイバニの信頼を勝ち取り、ボディーガードとして屋敷に入り込むことができた。
 待つこと数日。お待ちかねの客が来た。屋上でべこべこ音がするのでぎょっとする客(ギュンター)にシェイバニが言う。

シェイバニ:ああ、猫がいるんだ
猫:(足元で)なごーん
一同:?!

じゃあ屋根にいるのは誰だ? ……もうおわかりですね(笑)。

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