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2007年1月14日 (日)

映画「アジアの嵐」

アジアの嵐Chingiskhan

1928年ソ連
監督:フセヴォロド・プドフキン
キャスト:
アマゴラン…ワレーリー・インキジーノフ
パルチザンの隊長…アレクサンドル・チスチャコフ

 原題「チンギス・ハンの末裔」…エッ、この題名、良いのか?と目を疑った。ソ連も初期は普通の国で「チンギス・ハン」とか口に出して言っても良かったって事かな。
 直球勝負の冒険活劇。
 なにしろ、イギリスの駐在武官(?)なんか、怒ると体中の毛穴から蒸気シュポーッ! もう大爆笑!!
 動きが大げさでそれだけもコメディみたい。モンゴル人もロシア人もアメリカ人もイギリス人もロシア語でアテレコされていてわかりにくいが、まぁもともとサイレントだし仕方ないか。

 冒頭、
「犬を見よ!」
と言っているらしい箇所がある。おお犬、本物のモンゴルの犬じゃないかー! わーい、わーい、かぁわいい! しかも凶暴!(笑)
 ところがこの犬、つないであるのである。普通モンゴルじゃあ放し飼いだろうに。でもこれ、その辺のしろうとの犬を連れてきたんで、放してあったら撮影なんかできなかったからだよ、きっと。
 こんな感じで、何気ない背景までもモンゴルモンゴルしていてステキ。パルチザンが帰って行く時、山から雲(霧?)が湧くシーンなんてモノクロなのに(モノクロだからこそ?)すごい印象に残っている。
 ツァムのシーン(みょうに長い)も実際にガンダン寺でロケしてるんじゃないかな。五体投地礼用の斜めに置いた石版がちらっと見えて、うわーこの寺本物だー、と思った次第。

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 病気の父が仏教のラマに祈祷してもらってもちっとも良くならないので、アマゴランは父の虎の子の銀狐の毛皮を換金しに市場に行く。
 ところが、気取ってるけどケチなアメリカ商人に無理矢理安い値段で毛皮を取り上げられてしまう。納得がいかないアマゴラン。言い争っているうちに乱闘になり、結局、馬まで失って歩いて北の方に逃げていくと、そこではパルチザンが何かと戦っていた。

 パルチザンにはロシア人以外にもモンゴル人(ブリヤートだったりして)が加わっているが、何と戦っているかよくわからない。ウンゲルン? 白衛軍だったら外国の干渉じゃないよな…。
 ソ連映画のせいか、パルチザンの連中はみんな良いヤツである。パルチザンの隊長が死ぬ場面もやたら格好良い。
「祖国のためにモスクワを守れ…。故郷の炭坑夫たちによろしくな…。ガクッ」
も、モスクワですか~? 遠いっすよ、隊長ぉ。
 時は1920年。ボリシェビキは、自分たちの事でいっぱいいっぱいなのか、助けてはくれない。
「お互い外国勢力から祖国を守るために頑張ろうな!」
と連帯を示すだけ。

 さて、イフ・フレー(庫倫。現在のウランバートル)では英国の駐在武官が幼い活仏を取り込もうとあれこれ腐心しているが、欲深く頑迷固陋な高僧たちが取り巻いていてままならない。
 っていうか、これチベットっぽくないか?
 っていうか、英国の駐在武官は活仏を夫人に
「仏教のローマ法王のようなものだよ。」
と教えているからジャプツンダンバ・ホトクトの事なんだろうが、1920年にジェプツンダンバ八世(1870~1924年)って赤ん坊じゃないよな…。

 こうしてにこにこしながらお互い腹の探り合いをしている間にも、イフ・フレーの近郊にパルチザン出没。それに参加していたアマゴランは駐留イギリス軍に捕まってしまう。で、銃殺されるのだが、彼の持っていたお守りの中に「これを所持する者はチンギス・カンの子孫である」と書かれた証文が入っていた。
 読めない文字で書いてあるので学者が呼ばれるが、
「これはチベット語です!」
と言いつつ、細長い紙を縦に持って読んでますが(笑)。画面に映る紙面の文字はたぶんモンゴル文字。
「世紀の大発見だ! ロンドンへ送れ!」
いや、チンギスの子孫はいっぱいいるでしょ。それにわざわざ証文にしないでも誰が黄金氏族の人かってみんな知ってるんじゃないかと思うけど…。

 とにかく、良いもん拾った、とばかりにアマゴランをキン肉マン二世…ではなくジンギスカン二世に仕立てて傀儡にしようとたくらむイギリス。二世って何よ(笑)。あとの方でチンギスの第15代の子孫とかなんとか言ってるが、元朝だってトゴン=テムルで断絶してるわけじゃないぜ。

 そして、アマゴランを国家元首に祭り上げて自分勝手な条約を結ぼうと、いろいろ滑稽なことが繰り広げられるのだった…。

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 ということで、最後はモンゴル人が決起する場面で終わるが、不思議なことに中国が全く出てこない。
 当時、イフ・フレーには中国人が3万人ぐらいいたそうだ(イフ・フレーのモンゴル人人口も3万人ぐらい)。1920年だから、いったん宣言されたモンゴルの独立が中国・ロシア・モンゴルの協定で取り消され、中国内の一自治領になっていたところにロシア革命が起き、そのどさくさに紛れて自治さえ蔑ろにされていた頃かな?
 しかし、即位式に臨むアマゴランが伝統的な礼装をする場面で、お付きの人が頭上に清朝風の帽子を載せようとすると、イギリスのご婦人連中が、
「あら、そんなのダサイわ。」
「ない方がセクシーよ。」
とかいって帽子を投げ捨ててしまうのは意味深長である。いや、何の意味もないかもしれないけど。こういうのがちょこっと入っているから、あまりにも生々しい問題なので史実に忠実に描くのを避けたのか、ただ単によく知らないで植民地化のステレオタイプで描いたのか、どっちかなー?と考えてしまう。
 もっとも、このままでも、今の中国では上映できないかもしれないけどねー(笑)。

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コメント

いったいどこでこのような突っ込みネタ満載の映画を見る事ができるのでしょう(笑)

ところでアマゴランは銃殺されてから利用される、ということでしょうか?

投稿: 蒸しぱん | 2007年1月17日 (水) 22時31分

これはモンゴルだからって理由だけで買ったんですが、予想外におもしろかった!
「爆笑!カルト500」みたいな感じで500円とか1500円とかのシリーズを作るとしたらその一つに絶対入れたいです。

>銃殺

ええ、普通は危機一髪で証文が解読されたりパルチザンが現れたりして主人公は撃たれないものでしょうが、撃たれてしまうんです(苦笑)。英軍の兵士がいい加減でやる気がないので、よく死んでるかどうかちゃんと確かめなかったんですね。

投稿: 雪豹 | 2007年1月18日 (木) 00時06分

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