映画「ベルリン陥落」
1949年ソ連
監督:ミハイル・チアウレリ
音楽:ドミートリィ・ショスタコーヴィチ
キャスト:
アレクセイ・イワノフ…ボリス・アンドレーエフ
ナターシャ・ルミャンツェワ…M.コヴァリョーワ
ヨシフ・スターリン…M.ゲロヴァニ
アドルフ・ヒトラー…V.サヴェリエフ
ウィンストン・チャーチル…V.スタニツィン
フランクリン・ローズヴェルト…O.フレリク
スターリンを崇める映画。
…のはずだが、ヒトラーの方がよっぽどキャラが立ってる。
ヒトラー役の役者さん、記録映画をよく研究したんだろう、記録映像で見るヒトラーにものすごいそっくり。もちろん、吹き替えでなくロシア語をしゃべっているので、少々違和感があるんだけど、そのせいか、演技というよりパロディに見えてすごくおもしろい(え)。いや、やってることは、すぐ「銃殺しろ!」とわめいたり、自国の民間人を見殺しにしたりとおぞましい限りなのだが、コロッケの美川憲一の物まねを見るようで、思わず黒い笑いが(爆)。
第一部
ケシの花畑の中を走る子供たち。この花畑の色が劇的におかしい。どうおかしいかというと、昔のソ連の絵葉書の色そのもの。見る者を一瞬にしてあの時代へ連れて行ってくれる(笑)。
それより、オープニングのモスフィルムのロゴ、男女の像の向きが変わるとこ、かくかくかくって…手動デスカ?
この子供たちが社会見学で訪れる製鉄所で働いてるのがアレクセイ。
真っ赤に焼けた鉄に子供たち近づき過ぎ。…ホラー映画だったら、一人二人消えてるよね。
アレクセイが鉄鋼生産の記録を立てたことで、レーニン勲章を受賞することになり、このとき引率していた先生、ナターシャが祝辞を述べることになる。
ナターシャ先生、アレクセイに対する賛辞なのに、スターリンに言及するところでもじもじ、もじもじ…ってなんで恥じらってるのー? 軍国少女か(笑)。
その後、アレクセイとつきあうことになるのも、アレクセイが好きなんじゃなくて、アレクセイがスターリンと会ったからだろ~、と疑ってしまう。
とにもかくにも、二人はつきあうことになり、麦畑でいちゃいちゃしていると、突然、超低空をかすめていく飛行機の編隊。え?何?
なんだかわからないうちに爆弾をどかどか落とし始める。敵だったのかー!
しかも、いきなり(2秒くらいで)ナターシャの服が刃物で切り裂いたようにぼろぼろになってる!!!
ナターシャを抱えて逃げ回るうちにアレクセイは爆風に吹っ飛ばされて意識を失う。
ショスタコーヴィチの交響曲7番「レニングラード」の第1楽章で散々繰り返されるメロディー…一言で言うとアーノルド・シュワルツェネッガーの出てたアリナミンVのCM、「ちちんぶいぶい」のメロディー。(古い?)
ちーちんぶいぶい、と侵攻してくるドイツ軍のサイドカー。セルフパロディかいな(笑)。
さて、アレクセイが目を覚ますと、3か月経っていた…って、それでソ連軍がけちょんけちょんにされるところは省略かよ。随分都合の良い展開じゃのー(笑)。さすが「ベルリン陥落」。
しかし、モスクワは包囲され、空にはなにやら飛行船がうようよ。絶体絶命ぢゃん!
ここでようやくクレムリン内部登場。でも、スターリン以外の政治家は、十把一絡げで配役見ても名前が出てない(ヒドイ)。軍人は、ちゃんと一人一人書いてあるのに。
おりしも、11月7日。絶体絶命でも、赤の広場ではいつもの通り、粛々と軍事パレードが行われる。
そのころベルリンでは、各国代表がヒトラーを表敬している。
スペイン、トルコ、大日本帝国、ヴァチカン…。ん?
日本がいるのは当然としても、トルコは第二次世界大戦ではのらりくらりと中立を保って、最後の最後で連合国側に付いたんではなかったけ?
この直後、ヒトラーはスターリンの演説をラジオで聞いて大激怒。
モスクワをさっさと落とせとわめいたために、大量の航空機がモスクワに向かう。
この大編隊、すごく懐かしい感じでほのぼのする。
まー、模型なんですがね、昔の怪獣モノを思い出しますわ。例によって「ちーちんぶいぶい」のテーマ曲に乗って飛んでいく。結果はもちろん、失敗に終わる。
(これを見ると「レニングラード大攻防1941」の飛行機の動きのリアルさは際だつ。あの部分だけでも見るに値する映画であった。)
この時点でも乗り気のなさそうな将軍連中にヒトラーは、ドイツ軍だけで兵力が足りないなら、全ヨーロッパから招集せい、とまたまた無理難題を言い出す。
「共産主義は世界の敵だ。…イタリア、ルーマニア、ハンガリー、スペイン、フランス、スウェーデン、トルコ、まさに現代の十字軍をこの手で指揮するのだ!」
なぬ? ト、トルコ? 十字軍にトルコが入ってるのか! やめてよ!!(爆)
さすがに後ろで呆れかえって顔を見合わすゲーリングとゲッペルス。
やんわりとヒトラーに休むように勧める。
休憩中、
「スターリングラードでスターリンにとどめを刺す」
という思いつきをエヴァ・ブラウンに褒められて更にいい気になる。
思いつきかよ…。でも、これって本当の話だよね…。
既にゲーリングは裏ではヒトラーをばかしにしてるし、やけにエラソーだし、大丈夫かよ、ドイツ首脳部…(いや駄目だし)。
一方、スターリングラードでのドイツ軍との戦闘で、チュイコフ将軍から勲章をもらうアレクセイ。
ドイツ軍を駆逐してスターリングラードに入ると、廃墟になった自分の家が。最初のシーンって、スターリングラードだったのねー!
それはともかく、アレクセイはナターシャがドイツの捕虜になったことを知る。
ここから、ベルリンへの進軍が始まる…。
真っ平らな平原一面に戦車やらなんやらが走っていく様はやはり壮観。
なお、ソ連軍の戦車の砲塔には「ファシストぶっ殺せ!」の文字。
そしてヤルタ会談(1945年2月)。早っ(笑)。
ここでは、チャーチルがヒールになっている(笑)。
ローズヴェルトが座ったままで物わかり良く穏和な仲介者のような感じに描かれていいるためにほとんど印象がないのに対して、葉巻を振り回して強硬な姿勢を貫き、一番目立っている。穏やかに話すスターリンが霞むほど(笑)。
でもなんで、頑固に反対してたのにドイツが敗北して3か月後に日本に宣戦布告する、と断言するとよろこんで同意するのよ? イギリス日本にほとんど権益ないのでわ? アメリカを牽制するためか?
第二部
ソ連軍怒濤の進撃。
戦車の砲塔には「ベルリンへ行こうぜ!」の文字が。
ヒトラー周辺で繰り広げられる喜劇(真っ黒だけど)は本編を見ていただくとして。
ベルリン空爆が圧巻。
ミニチュアに見えないいいいい!
いったいどのくらいのスケールで造ったのか。…1/1スケールとか(さすがにそれはない)。
ベルリンに迫る頃には、ソ連軍戦車のボディペインティングも「祖国のために!」になってる。
結果は歴史の通り。でも、ベルリンまでやって来たのに、アレクセイはナターシャとは会えない。
最後は、ベルリンにスターリンが降り立つ。
ヨーロッパ中の国の旗…いや星条旗も見える…を振る人々がスターリンを出迎える。
「ギリシャ国民からも感謝を! ウラー!」
「チェコの英雄、スターリン!」
「ビバ! スターリン!」
「%$#6+*!!(←何語か不明)」
…。
一部絶対にそんなこと言うわけない国が混じってないか~?
(え、このシーン全体がありえないって? いいじゃん、ファンタジーだもの。)
そんな中、偶然、アレクセイとナターシャは出会うことができましたとさ。めでたしめでたし。
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 映画「父は憶えている」(2023.12.19)
- 映画「深い河」(2019.12.28)
- 映画「予想外のでき事」(2019.12.22)
- 映画「ソローキンの見た桜」ららぽーとでも上映しないかなぁ?(2018.12.17)
- 映画「天才バレエダンサーの皮肉な運命」(2018.12.16)
「ソ連」カテゴリの記事
- ついに出た『集史』「モンゴル史」部族篇の日本語訳!(2022.05.27)
- C98に向けアラビア文字のタイポグラフィーについて考える(2020.03.08)
- モンゴル近・現代史理解に不可欠の良書・佐々木智也著『ノモンハンの国境線』(2019.12.01)
- 『大旅行記』の家島彦一氏の講演を聴きに行ったよ(2019.06.09)
- コミケット95ではありがとうございました(2018.12.31)
「トルコ」カテゴリの記事
- コミックマーケット100に参加します(2022.06.11)
- ついに出た『集史』「モンゴル史」部族篇の日本語訳!(2022.05.27)
- C98に向けアラビア文字のタイポグラフィーについて考える(2020.03.08)
- 古代オリエント博物館にギョベクリテペ遺跡関連の講演を聞きに行ったよ(2019.12.02)
- 『大旅行記』の家島彦一氏の講演を聴きに行ったよ(2019.06.09)
コメント