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2007年3月 1日 (木)

映画「妖婆 死棺の呪い」

Viy妖婆 死棺の呪い

1967年ソ連
監督:コンスタンチン・エルショフ
(総監督:アレクサンドル・プトゥシコ)
音楽:カレン・ハチャトゥリャン
キャスト:
ホマー…レオニード・クラヴレフ
お嬢様…ナターリア・ヴァルレイ

 「まんが日本昔話」を見て、一人でトイレに行けなくなったことはありませんか。
 祖父ちゃんや祖母ちゃんなどの家族がありがたがっている仏像や、自慢の掛け軸が飾ってある部屋が何となく気味悪くて避けていた事はありませんか。

 この物語は、ロシアの文豪ニコライ・ゴーゴリがウクライナで蒐集した民間伝承をほぼそのまま記録した「ヴィイ」を映画化したものです。

 ヴィイとは、地の精霊の最も強力なモノで、ひょっとしたら、キリスト教到来以前には神として崇められていたのかもしれません。従って、キリスト教の祈祷ごときにやすやす調伏されはしないのです。
 ヴィイのまぶたは普段は地面に届くほど垂れ、目を塞いでいます。しかし、まぶたを持ち上げたヴィイに見られた瞬間、あらゆる生物の命は失せ、世界は色あせると言われています。

(覚悟ができた人は続きをドウゾ↓)

 ウクライナのどこかの神学校。夏休みになったので、ホマーたち神学生も帰省して良いことになった。
 しかし、この悪ガキども、日頃の行いが行いなので、心配した校長先生はお説教をするが、神学校の門を出るなりガチョウを盗んだり市場で娘たちをからかったり、な~んにも聞いてやしない。

 しかし、こんな元気な連中でも、だだっ広いウクライナの平原のど真ん中で日が暮れてしまうと、さすがに心細くなってくるらしい。しかも道に迷ったようで、宿屋はおろか人家も全然見かけない。暗闇の中で野獣の声が迫ってきたり得体の知れないモノをむんずとつかんでしまったり…。こんな所での野宿だけは避けようと、もうみんな必死。
 ようやく一軒の人家を見つけるが、ウシやブタの他にはお婆さんが一人しかいない様子。しかもこの婆さんがなんだかあやしい。あやしいが、他人に宿所を貸してと頼むのに、
「まるでバケモノだな…。」
はないだろう、君たち。ホラーな目に遭ってしまえ~(笑)。

 ともかく、みんなバラバラではあるけれども、泊めてもらえることになる。

 ホマーは家畜小屋に連れて行かれる。
 ホマーが藁の中で寝ようとすると、婆さんが無言で逼ってくる。そうだっ、人間、幾つになっても青春だっ!(笑)

…とお約束のネタかと思いきや、彼女は術でホマーを金縛りにして肩にちょこんと乗り、
「きゃっほぅ!」
とばかりにホマーを急き立て、真っ暗な原野に繰り出す!

 婆ちゃんを背負って走り出すホマー。
 やがてホマーの足は地面から離れ…。な、なるほどー。魔女のほうき代わりだったのか。婆ちゃんめちゃくちゃうれしそうだ。良い事したな、ホマー(笑)。

 ところが地面に着くなり、
「この魔女め!」
とばかりにホマーは、婆さんをめった打ちにする。

…と、突然
「ああん、それ以上はダメ…。」
!!!!!
婆さんは若い女に変身! もだえているではないか! くねくねくね~…って、なんじゃそりゃあ(笑)!

 普通、逆だろ!
 若い女だと思ったのが実は魔女だったってのがお約束なのでは???

 だって、こんなにきれいな人だったら、多少あやしくたって、
わたくしを踏んで下さいませ、お嬢様!!!
と思えるんではないだろうか!
…そうなったら、魔女じゃなくてむしろ魔性の女とか呼ばれちゃうんだろうか!


 でも、高速道路でマッハで走る婆ちゃんに並走されるよりも怖い思いをしたホマーは、這々の体で神学校に逃げ帰る。こいつ、相当のビビリですね。(←と、言えるのも他人事だからだ)

 神学校には、ホマーが戻るか戻らないかのうちに、どこからか村の領主からの使いが来ていて、たくさんのお礼の品々を積んで、
「死にかけているお嬢様のために、ホマーに祈祷してもらいたい。」
と頼んでいる。
 このお嬢様が実はホマーが半殺しにした魔女なのだけれども、どうも、この村人は何か知ってて隠しているっぽい。実にあやしい(笑)。
 このあやしい村人たちに連行されて、ホマーは村に…。

 しかし、お嬢様の臨終には間に合わず、ホマーを迎えに来た村人の一人が、着くなりお嬢様の死を聞かされて、
「エッ、もう?」
って…。ひどいな~、あんたらが途中の酒場で飲みすぎたせいじゃないの???(笑…っていいものか)

 依頼主が死んでしまったので、これで帰れるかな、とホマーも一瞬期待したが、死者のために三晩祈祷をするよう、娘の父であるご領主様に命じられ、逃れることはできないのだった。
 死者とともに三晩…これで何も起こらないわけがないじゃないですかー(笑)。


 一晩め。
 お嬢様、ムクッと起きあがる。
 しかしホマーが慌てて床に描いたサークルの中には入れず、一番鶏の鳴き声を聞くと何か忌々しげにつぶやいて棺桶の中に戻る。

 二晩め。
 いきなり棺桶アターック!!!
 こ、これはコワイ!(爆笑)
 ホマーの髪も恐怖の余り真っ白に。
 しかし、やはりサークルを破ることはできずに一番鶏が鳴く時間になってしまう。

 三晩め。
 お嬢様、ありとあらゆる物の怪を召還。
 二晩めまではしゃべらなかったので、キョンシーと同じでしゃべれないのかと思っていたけれど、しゃべれるんだ、お嬢様…。…っていうか怒った顔もかわいい。
 物の怪(ザコ)どもがホマーを探せないので業を煮やしたお嬢様は、遂にヴィイを召還する。

 ホマーの運命やいかに?!

…とまぁ、こういうお話です。
 え、導入部と本文のノリが違うって?
 いやそれは、映画自体が「あなたの知らない世界」風におどろおどろしく始まっているから、それに倣ったのですぞ。

 それにしても、あやしい村人、日本人には異質に感じられる宗教儀礼、超絶美しいお嬢様。
 伊藤潤二のホラーマンガの世界みたいです。この映画のワンシーンを思い出そうとすると、どうしても私の頭の中には、あの絵柄のお嬢様とかあやしい村人とかが浮かんでしまうのです(笑)。

参考文献:

文豪ゴーゴリの他の突拍子もない(笑)お話。
たとえば、自分の鼻がどこかに勝手に出かけていって、自分になりすます(「鼻」)って、相当ぶっ飛んでないか?(笑)。

昔気質の地主たち―付・ヴィー(地妖)
原作の邦訳。近所の図書館になかったから、邦訳は無いのかと思ったら、なんとAmazonで見つけたよ。すごいな~。

アレクサンドル・プトゥシコ監督作品→「巨竜と魔王征服 イリヤ・ムーロメッツ」「石の花 ウラル地方の物語

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コメント

この映画、どうやら「シティコネクション」のオレグ・ステプチェンコが監督して、リメイク版が作られているようだ。
ヴィイ公式サイトにはまだ何もないが、トレーラー(恐ろしく重い…)を見る限りでは、本気のホラーみたい。お嬢様(オリガ・ザイツェワ)が「エクソシスト」の悪魔に取り憑かれた子みたいだった。
あと、ホマー(アレクセイ・ペトルーヒン)がサークルを描く場面があるが、あのサークルが強調されてタイトルのロゴになってる。…「リング」がどれだけホラー映画界に影響与えたんだかって辺りの興味でも、見てみたいなぁ。

追伸:そういえば、「お嬢様(パーンナチカ)」って不思議な響きだなぁ、と思ってたら、ウクライナとかポーランドの地主・貴族をパンといい、そこから派生した単語だってね。
ウクライナ語とかポーランド語なのかのう???

投稿: 雪豹 | 2007年3月26日 (月) 18時56分

http://jp.youtube.com/watch?v=Ytf3j5TakDE
Kidnapping, Caucasian style

この作品のヒロインは妖婆のお姐さんです。

投稿: 通行人 | 2007年10月 3日 (水) 14時19分

 あのおねいさんは、割と日本人好みの顔だよね!ね?(←えっ、私の好みなだけですと?)とおそるおそるのぞいてみたのですが…………英語字幕のうるささに1分も耐えられませんでしたとさ(がーん)。
 Youtubeは音が悪くて聞き取れないから、むしろロシア語字幕の方が必要ですねぇ…。あれを初めて知った頃は、外国語聴き放題じゃん!と喜んだもんたけど、結局、初心者が聞き取れるような音質じゃないから、見なくなっちゃたんだよなぁ…。
 某警察沙汰になるような語学教室に行くくらいなら、DVDに買って楽しく見た方が勉強になるし、ならなくても楽しいわって思う今日この頃…。

※アルバトロスやら彩プロやらキングレコードやらも、ロシア語の字幕付けてくれるともっと購買意欲をそそるんだけど(笑)。←少数派かな~

投稿: 雪豹 | 2007年10月 4日 (木) 00時44分

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 ロシアの文豪ゴーゴリの同名小説の映画化です。どうやら「衛星劇場」で放映されたものの録画を、画像状態が悪いながら、今回観る事ができました。ゴーゴリの幻想小説といえば、むしろ哀愁漂う物語の「外套」、風刺の効いた滑稽譚「鼻」が有名ですが、この小説も日本の翻訳怪奇小説集に入っており、ずっと以前に読んだ事があります。Вий (ヴィー)とは、ロシアフォークロアに登場する強力な地霊で、地面に付くほど垂れている瞼を持ち上げて彼に見られたものは命を失うとされているそうです。この映画で登場するのは最後の数分...... [続きを読む]

受信: 2007年10月 8日 (月) 23時25分

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