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2007年3月29日 (木)

映画「蒼き狼 地果て海尽きるまで」

2007年日本
監督:澤井信一郎
キャスト:
チンギス・ハーン…反町隆史
ボルテ…菊川怜
ホエルン…若村麻由美
クラン…Ara
ハサル…袴田吉彦
ジュチ…松山ケンイチ
ジャムカ…平山祐介
ケクチュ…津川雅彦
トオリル=カン…松方弘樹

 まずはたまらずに身をよじったセリフを2点ご紹介。

(ジャムカはアンダ(盟友)だから裏切れない、というテムジンに対し、)
トオリル:アンダがなんだ。

ジャムカ:わしがたった一人のになるッ!
部民:オウ!

く、くだらねえええ。しかし笑ってしまった以上、こちらの負け…。潔く敗北を認めよう(かといって絞殺はやめてね)。

 戦闘シーンがとても良かった。弓主体で槍を多用してる所が好感が持てる。あと馬から落ちても割と平気っぽいところとか。モンゴルの草原を騎馬の軍団がドドーッと移動するところとか…。

 でもまぁ、この映画が全世界に配給されることになって、
日本のモンゴル研究のレベルってこのくらい? プッ。」
とか思われるようになりはしないかと心配していたけど、杞憂だったか…。

 だって、これだったら日本人以外は絶対見ないっしょ!(爆)。

(↓以下ネタバレはそれほどない(?)が、これから見ようという人は見ない方がよいかも↓)

Linew_2

顔が日本人以外の何者にも見えない。

 違和感ありまくり。ただ、セリフが棒読みだったおかげで日本語吹き替えに聞こえ、音声の面ではほとんど違和感はなかった(フォローになってない)。
 でも、欧米向けって無理があるような気がするから、いっそのこともっと日本向けに徹底して、戦国時代劇っぽくしたほうがよかったんじゃないかなぁ。その方が日本の観客に、へぇ、結構日本の戦国時代と同じじゃない? と関心を持ってもらえ、モンゴルへ入ってくるきっかけとして大いに役だったに違いない。

 あるいは、テムジンの髪型がみずらに見えてしょうがなかったので、日本の古墳時代の大河ドラマ作るぞーというくらいの意気込みで日本化した映画にしたら楽しいかもしれない。その時代だと、シャマンが出てきてもそれほど不自然じゃないし。
 でも今の日本で巫女というと、女性という印象が強いから、津川雅彦が卑弥呼みたいな格好して出てきたらそれはそれで不気味か…(笑)。
 あとセリフ。テムジンが
「このいくさは…である。」
って言う箇所がある。帝国軍人か君は。時代劇口調でも現代語でも良いから、そろえようよ。チャンポンは悪酔いするぞ。

何がメインのストーリィかわからない。

 トオリルやジュチの死に方は史実とは違うが、娯楽ドラマとしては許される範囲の脚色だろう。
(もっとも、「おいおい、爺さんここで殺されちゃってるよ! わははは!」と笑いを堪えるのがたいへんだったが。)
 しかし、ジュチとの関係をメインにするには、伏線が弱すぎないか。もっと前々からふっておかないと、ジュチが死んだとき心から泣けない。

 ジャムカに関しても同じで、もっと少年ジャンプ的なクサさでいいから男の友情を盛り込んでくれないと、ジャムカが死んだとき泣けない。せっかく少年時代から出ているというのに。少年時代のシーンを入れた意味がない。
 つーか、素手で絞め殺してたので声を出して笑いそうになってじたばたしてしまった(←面倒くさそうな人)。

 キルギス英雄叙事詩「マナス」に主人公マナスと互角にやり合う女傑が何人も出てくるので、クランが女戦士でもいっこうにかまわないのだが、ただの思いつきに終わっていてあまり出てきた意味がないような…。
 日本的な感覚で通そうとするなら、第二婦人を娶った時点でボルテから一言あってしかるべきなのに完全にスルー。なにこれ。

 だいたい、なんでホエルンもボルテも
「あんたの子だってあたしが言ったら、子だってば子だってば子なんだってばよー!」
と往復ビンタを食らわしてやらんのだ。

衣装が雑。

 なんでブルーシート着てるの、こいつら。激甚災害にでも遭ったか(爆)。
 弱小部族だった頃から随分布をふんだんに使った服を着てるが、貧しい人たちは毛皮かフェルトしかないんじゃないか? 羊毛があったとしてもそれをよって糸にして機を織るとかしないような…。
 あと鎧がイカン。ああいうのみんな自前で、おのれの命を守るためのモノなんだから、もっと一生懸命丁寧に縫うでしょ。縫い目とか合わせ方とかあまりにも雑すぎる。みんな、命は惜しくはないのか。
 実物そのものを着たら重くてアクションできないってのは理解できるが(たいしたアクションしてないが)、それにしたって柔らかすぎる。せめて細かなアクションをしなくていい指揮官の鎧をもっと重厚に作れなかったのかな。地方都市の祭日のイベントに出てくる怪獣の着ぐるみみたいな質感だったよ。予算がなかったとか?

モンゴルの自然の厳しさが少しも表現できてない。

 一つ判断を誤れば命を落とすほどの厳しい自然の中でこそ、弟を手にかけてまで結束を保とうとする厳格な性格が形成されるのではないだろうか。この辺りの説明がないと、兄弟さえ殺す血に飢えた殺戮者って印象しか残らない。
 だいたい、戦争って冬にしないか? 夏はいろいろと忙しいだろ、乳絞ったりとか。出稼ぎ(遠征)は冬でも、部族間抗争は季節関係無しで良いのかなぁ?

 そのほか、草原者にとって当たり前で言わずもがなのことでも、騎馬民族モノに初めて接する人に対しては説明がいる箇所ってあるかもしれない。そういうところを丹念にあたる映画にした方が、良かったんじゃないかなぁ、と思うのだ。少なくとも良心的だろう。

 全体的に、なんだかやっつけ仕事で作ったみたいな映画だったな。
 たっぷり笑わせてもらったので文句は言わないが、これでは、カルトの殿堂に入れるわけにはいかないのお(笑)。

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コメント

>>帝国軍人か君は。

反町ハン…… そういう役どころ多かったからねぇ、最近。
自分でもわけわからなくなってたりしてw

>>一つ判断を誤れば命を落とすほどの厳しい自然の中でこそ、弟を手にかけてまで結束を保とうとする厳格な性格が形成されるのではないだろうか。

日本人の視聴者に、その辺はあまり理解されにくいでしょうね。
中国史の関連でも、そのことでやたら貶めようとする人もたしかにいます。

>>戦争って冬にしないか?

見てないのでアレですが、やっぱ普通に理解不足なんじゃない?
日本でも中国でも、普通農閑期に戦争ですもんね。。。(でもそれって、大いくさのときだけか?よくわからん…)

ん~。 意外とジャムカとの相克はあっさりしている?
かつての旧友が敵同士、とかって見所にするだろうに…
いかん、いかん! そんなことでは。
これはまだまだ、金庸ドラマから抜け出ることはできそうにないな!(少年ジャンプくささと、耳つんぼな人が大勢いますしねぇ)

投稿: | 2007年3月29日 (木) 19時46分


すみません、上の名無しさんはマルコです。

投稿: マルコ | 2007年3月29日 (木) 19時47分

あーっ、見てない人は見ない方が良いって書いたのになーーー(笑)。

>かつての旧友が敵同士、とかって見所にするだろうに…

いや、まったくそうなんですよ!
「射ちょう英雄伝」はかなりベタだけど、ちゃんとドラマとしてはできてたんです。
「射ちょう」ではコジンの方が政略結婚を嫌ってるような設定になってたんだけど、トゥサカが本当に嫌ーなヤツに描けてて、納得できる展開になってましたよ。
その方が「蒼き狼…」のように「モンゴルの女の悲劇を云々…」とセリフで誰かに言わせるだけより説得力があります。
ま、2時間の尺じゃ「射ちょう」のようにじっくりと描く時間はもともと無いのだけれど、それならば焦点を絞ればいいのにそれができてない。
…いっそのこと、ドラマ部分を全部カットして、全編騎馬戦のシーンにするとか…(笑)。

投稿: 雪豹 | 2007年3月29日 (木) 20時17分

とうとう見に行かれましたか・・・。

私が言っていた馬がちゃかちゃかと首を上下に振る仕草どうでしたでしょうか?私は気になって気になって仕方がなかった。反町ががんばって台詞を言っても画面下の方で馬の耳がぴょこぴょこ動くので笑いそうになった・・・。

ハミが合っていないから口角が「いてーよ」と言って首を振っているのか、かー、乗り手が下手で拳の位置が常に騎乗中動いて口角に当たって「いてーよ」となって止まった時に「ああもういてーよ」とばかりに首を振っているのか・・・。どっちにしても馬には迷惑だったんでしょう。なんで馬術指導が全て日本人だったのかもギモン。日本の馬術(ブリディッシュ)がモンゴルの馬にすっぽりと当てはまるんだろうか・・・。

笑いそうになったのが、最初の敵におっかけられるシーンで逃げる馬が駈歩で追いかける馬が襲歩。おいおい・・・。まぁ、あんなモンゴルのごつごつの大地で襲歩して落っこちたらえらいことにはなるが・・・。

その他で気になったのは、反町が今から突撃だー、という時に騎馬の戦列がばらばら。実際のモンゴル兵がそうだったのかもしれないのだが、そこは話を盛り上げるためにもきっちりと一列に並べて欲しかった。戦闘列がぐちゃぐちゃなんで緊張感が出てこない。その点はロードオブザリングスはきっちりとして一列に騎馬が並び、馬が微動だにしない。軍馬らしい演出になっていた。軍馬というのはいつでも動けるように常に騎手に神経を集中させてないといけないでしょう・・・。耳が後方に向いてどんな指示ももらさぬようにとしてぴしっとしていない。だらだらーと馬がしていたので馬が「よし、休憩だ」と思い込んでいる状態。緊張感がない・・・。後ろのエキストラの乗っている馬は動いていないというのに・・・。俳優の手綱も脚もだれだれだったので馬もだれだれだったんだろうと思う・・・。あれはいかん緊張感がない。

とー、「まさか首たるチンギスがセン馬にのっておるんじゃないのか?」と思いながら反町の乗っている馬の後躯の付け根を気にしていたが見えませんでした・・・。

投稿: 大角 | 2007年4月 1日 (日) 22時59分

うおっ、そんなに駄目駄目でしたか。
あの首を振るのは、たぶん、言われないで見ても、素人目にも気づいたね。まるでワザとやってるみたいに、日本人が集まって止まるたびに振ってましたもんね。

>馬が「よし、休憩だ」

あひゃひゃひゃひゃ(笑)。
さあ、突撃だ、と俳優が言っているところであくびしている馬もいたような…。
よくわからないけど、『セツェン=ハンの駿馬―モンゴルの馬文化』にモンゴルの馬の調教方法がちょっと書いてあるけど、日本とは随分と違うんじゃないんですかね~。

さすがに、実際に馬に乗る人は見所が違いますね。あの馬の顔見てても、何考えてるのか全然わかりませんでした。
乗馬ならいたけど、貧乏だからなー。

ところで、猛々しい種馬に乗るのが部将のステータスって、日本だけかと思ってたけど、そういうもんなんですかね? たぶん、モンゴルでは軍馬ってほとんどタマなしだと思うけど。英雄叙事詩でも、英雄の乗ってる馬でも普通にせん馬だったり雌馬だったりしたような気がするんですが…。

投稿: 雪豹 | 2007年4月 2日 (月) 19時31分

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