映画「エア・パニック ―地震空港大脱出―」
1979年ソ連
監督:アレクサンドル・ミッタ
音楽:アルフレッド・シュニトケ
キャスト:
アンドレイ・チムチェンコ…ゲオルギー・ジジョーノフ
ヴァレンチン・ネナロコフ…アナトーリィ・ヴァシリエフ
イーゴリ・スクヴォルツォフ…レオニード・フィラトフ
タマーラ…アレクサンドラ・ヤコヴレワ
栗原小巻
ジャンルとしてはコメディのような気はするが事態は深刻である(笑)。
機長のアンドレイ、副操縦士と思われるヴァレンチン、エンジニアのイーゴリ、フライトアテンダントのタマーラの私生活や家族の状況がそれはもう丹念に描かれている辺りは、「エア・クルー」という原題の方がぴったりくる。
コメディというか、ドロドロの昼メロというか、例えば、気の多いイーゴリなんか期待通り修羅場になってくれますとも(笑)。
前半、そんな調子でまったり進んでいくので油断していたら、突然の急展開。タメの取り方がなんか変~(笑)。
アルメニアを思わせるビドリという地方都市が地震で壊滅。そこに彼らクルーが救助に向かうのだが、ビドリ空港の立地に絶句…。
絶対にそんなところに空港造らんでしょ!!!
ビドリの市街は壊滅状態。
病院も既に崩壊しており、状況は予想していたよりはるかに悪く、負傷者や女子供を乗せてすぐに飛び立とうとするのだが、そこを余震が襲う。
滑走路に亀裂!
管制塔崩壊!
危険を感じて早々に離陸しようとした旅客機が爆発炎上!
残骸の中から人の手が出ていたりして情け容赦がない。
「飛行許可を…。」
なんて言ってる場合じゃないよ、機長。管制塔燃えてますって。
更に斜面の崩壊が石油コンビナート(こんなところに造るなー)を巻き込んだ土石流となって空港を襲う。
「離陸は不可能、残れば生き埋め…じゃ、離陸だな!」
おいおい…。戦闘機やヘリならともかく、大型旅客機(ツポレフTu-154Bと思われる)で言うセリフかーーー!
しかしどうせ死ぬなら試してみるしかない。
照明塔が倒れ込んできて危機一髪のところを無理矢理離陸。
何とか助かった、と思ったのも束の間、高度が上がると子供達が、
「耳が痛い。」
といっせいに泣き出すのだ。うわぁ。やだやだ。
そして、案の定、空気が漏れているのである。どうやら、照明塔が触れたらしく尾翼に亀裂が入っているようなのだ。
高度を3000メートルに下げると同時に、この人達、修理しようとしているよ。あわわわ。
高度3000メートル(富士山よりは低いか)を飛んでいるジェット機の機外に出て!
ほ、本当にやるんですか、キチョーーーー(泣)!
なお、ローマ空港でハイジャックされた航空機をアエロフロートのクルー達が他人事のようにながめてるシーンに栗原小巻が出演している。
あれはやっぱり、ハイジャックって言うと、「超法規的措置」が思い浮かぶからなんだろうなぁ。
A.シュニトケが音楽を担当している他の作品:
ジジョーノフも出てる→「スターリングラード大攻防戦」
「エア・クルー」のトレーラーも入ってる→「ロマノフ王朝の最期」
追記:
こういう飛行機が爆発したり墜落したりするパニック映画は、飛行機を造る側からすると非常におもしろくないと思うけど、その飛行機を造っている会社が国営で、しかもその国が自称「常に正しい国」だったりすると、ほとんど制作不可能なんじゃないか? よく制作できたなー。
そのせいかもしれないが、ここに出てくるツポレフはやたら頑丈だ。
数々の困難を乗り切って、豪雨のモスクワ・シェレメーチェヴォ空港に着陸するのだが、亀裂の入っていた尾部は着地の衝撃で吹っ飛ぶものの、車輪は全部出ているし左右のバランスも良く、きれいに着陸して摩擦で止まるまでひたすら真っ直ぐ滑っていく。日本の空港だったら間違いなくオーバーランだ。
前半のホームドラマ部分は正直閉口するが、ソ連初のパニック映画らしいので大目に見るとして(あるいは、カットするとして←こらこら)、あのSFXというより特撮といったほうがしっくりするカタストロフのシーンは本当にうまい。火や爆発が真に迫っている。…というか、ホントに爆破してるよね、あの辺とかあの辺とか(笑)。
いやー、火炎は実写に限るわい(笑)。
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