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2007年4月24日 (火)

映画「アレクサンドル・ネフスキー」

Nevskiyアレクサンドル・ネフスキー

1938年ソ連
監督:セルゲイ・エイゼンシュテイン
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
キャスト:
アレクサンドル・ネフスキー…ニコライ・チェルカーソフ
ブスライ…ニコライ・オフロプコフ
オレクシチ…アレクサンドル・アブリコーソフ

 うわ~、これおもしろいじゃないっすか。
モンタージュ理論がどうのーとか、
社会主義リアリズムがどうのーとか、
映画史上におけるなんとかがどうのーとか、
事前に雑音が入りすぎていた。
 なんか、栗生沢 猛夫著「タタールのくびき―ロシア史におけるモンゴル支配の研究」が一部地域でベストセラーになっているみたいだから私も読んでみた。アレクサンドル・ネフスキーつながりで見たのだけれど、「氷上の戦い」が!

 もっとも、「タタールのくびき」を読んで私の想像したアレクサンドル・ネフスキー像は、むしろ「アンドレイ・ルブリョフ」の公爵に近い。
 つまり、弟アンドレイを追い落とすためにモンゴルを引いたって感じ。
 で、正統な皇帝(もちろんカラコルムの)には一生懸命に仕え、徴税人に便宜を図って兵を出し、それに対する叛乱が起こってうまく税金が集められなくてサライに呼び出しを食ってしまい、どうしたら身の潔白を証明できるのかキリキリ胃の痛む日々…。なんとかサライで言い訳を聞いてもらえてほっとしたので、張りつめいていたものがプツっと切れて帰途死んじゃった、みたいな(←アレクサンドル・ネフスキー信奉者に毒を盛られそうなイメージだな)。

 もちろん、この映画のアレクサンドルは、そんなんじゃなく、伝統的な見方であり、最初に出てくるモンゴル兵に守られた中国の役人みたいな人(なぜムスリムでなく中国の役人みたいなんだ、という疑問はさておき、たぶんあれが数算える人なんだろう)にも別に卑屈じゃなくて堂々としている。でも、
「おまえなんか戦争やってばっかりだ~。」
ってノヴゴロドの一部の人々に嫌われてるし、割と普通の戦争に強い部将って感じに描かれていて、聖人として祭り上げられているわけじゃない。

 まー、
「ロシアのために戦うぞ!」
なんて言ってるのは時代錯誤かもしれないが、1938年だからなぁ…。そういうことを言いたいお年頃ではある(笑)。日本の戦国武将が「日本のために戦うぞ」って言ってるくらい変な感じではあるものの、その実、ブスライもオレクシチも好きな女性にいいとこ見せたいがために頑張っているので、それほど違和感はない。
 それにしても、ブスライのおかんがものすごい存在感。
「うちのワーシカはいつも一番だよ!」
と、そのシーンしか出てないのに、アレクサンドル公より強烈な印象が残ったりして(笑)。

 ドイツ騎士団がカルト教団みたいに描かれてるのもおもしろい。この辺の歴史ってよく知らないから誇張されているのかどうかよくわからないが、そもそも十字軍出すような宗教は真にカルトだよな(爆)。

 それにしても、“татарское иго”を「モンゴルの羈縻支配」でなく「タタールのくびき」と最初に訳したのはどこのどいつだ? 小一時間問いつめたい(笑)。


関連作品:
エイゼンシュテイン監督/プロコフィエフ音楽/チェルカーソフ主演「イワン雷帝
エイゼンシュテイン監督/マイゼル音楽→「戦艦ポチョムキン

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コメント

タイトル画像が変わりましたね。すばらしい景色です。
いいなぁ。

投稿: 蒸しぱん | 2007年4月24日 (火) 23時42分

ようやく少しは草原らしくなったでしょうか。
これはバヤンゴル、この先でオルホン河に注いでいます。
ゴビにしようとしたのですが、なんだか殺伐として見えるので…。なんだかんだ言っても、結局オルホンの谷が一番美しいのかもしれません(笑)。

投稿: 雪豹 | 2007年4月25日 (水) 00時03分

ああ、やっとコメントできる(笑)
ほんと、この写真良いですねえ。
そろそろ次の大陸旅行…というチャンスを考えてるんですけど、時間が取れるなら西夏関係遺跡巡りというのが案なんですけどね、こういう写真みると、あぁモンゴルまだやんと思ってしまいます。

投稿: 武藤 臼 | 2007年5月20日 (日) 10時59分

昨日や今日のようにさわやかな天気だと、夏のモンゴルの気候を思い出してむしょうに行きたくなります。
モンゴルもいいですよ~。

投稿: 雪豹 | 2007年5月21日 (月) 22時21分

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» 初期のタタール政策とアレクサンドル・ネフスキー研究が中心です。栗生沢猛夫先生の『タタールのくびき』読みました。 [クワルナフ・ブログ]
『タタールのくびき ロシア史におけるモンゴル支配の研究』 (栗生沢猛夫先生。東京大学出版会。2007年。8900円。437ページ)日本におけるロシア中世史の代表的研究者の一人である栗生沢猛夫先生の新刊です。翻訳や論文はいくつもありましたが、本だと『ボリス・ゴドノフと..... [続きを読む]

受信: 2007年4月25日 (水) 01時02分

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