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2007年4月19日 (木)

映画「チェチェン・ウォー」

チェチェン・ウォー

Thewar001

2002年ロシア
制作:アレクセイ・バラバノフ
キャスト:
イワン…アレクセイ・チャドフ
ジョン…イアン・ケリー
マーガレット…インゲボルガ・ダプクナイテ
メドベージェフ大尉…セルゲイ・ボドロフ
ルスラン…エフクリト・キュルジディス
アスラン…ゲオルギー・グルグリヤ

 ジャンルとしてはコメディだろうが、とってもブラック。あまりにもリアル過ぎて笑えない。
 いわば、「スターリン・ジョーク」実写版ってところ。ああいうのが好きな人のツボにははまると思われる。…って、あれれっ?これ、すごく褒めてるつもりなのに褒めてるように見えないぞ???おっかしいなぁ(笑)。つまり、お勧めって事です(笑)。

 チェチェンのどこかの村。ロシア兵のイワンは、アスランという有力者に捕まってこき使われる事2か月。
 そこに英国人のジョンとマーガレットが連れてこられた。彼らの前でロシア兵は斬首されるわ、ビジネスマンのユダヤ人は指を詰められるわ、いろいろ恐~いものを見せつけられる。ジョンは、
「人権侵害だ!」
とか英語で叫んでいるが、いろんな意味で(笑)通じない。

 さんざん脅されたあとに送られた先もなんだか普通の村。つーか、アスランちじゃないのかな。家の中で普通に女の人が家事してるぞ。
 彼ら捕虜が放り込まれる縦穴は庭にあり、そこでは普通に尻尾がふるふるの羊を屠っていたり、村人(もちろん銃は持ってる)が屋根の上でうんこ座り(←ナカーマ)で見物してたりする。

 穴の中には先客のメドベージェフ大尉がいるが、彼は背中に大砲の破片が入っていて、自由に動けない様子だ。しかーし!こんな穴蔵で、同じ捕虜の立場でも、軍の階級章は絶対であるッ!
「気をつけ!」
と大尉に怒鳴られてイワンはビシッとかかとをあわせて報告。だって戦争中だから!

 マーガレットといえば大尉に一目惚れ? 会ったその時から熱心に看病している。…しかし、彼女ちょっと熱心過ぎないか? 婚約者のジョンの前で(笑)。

 アスランはジョンたちに200万ポンド(2007年4月20日のレートで4億7516万8千円)という法外な身代金をふっかける。しかし、電話ではラチがあかないので(そりゃそうだ)、マーガレットを人質に残し、ジョンに金の工面をさせるため、イワンを付けて解放する。

 さぁ、これからがたいへんだ。ジョン、ただの役者だし。そんな大金財産を全部売り払っても出てこない。英国政府が出すわけないし…。NATOに
「チェチェンのテロリストを空爆してくれ!」
と頼みに行く。んー、それって、NATOがロシアを空爆ってことになるみたいだよ。…ムリだろ。

 一方、大尉の釈放にはアスランの甥の解放が条件になっているけれど、イワンがそれを軍に訴えてもなしのつぶて…。一応、大尉の家族に会ってから故郷のトボリスクへ帰る。
 息子に会うなり母、
「テレビに映ってたんだってね! あたし、見逃しちゃったの~。」
生身の息子よりテレビか~。かあちゃんよおおおお。

 さて、公式のルートではみんなに断られてしまったジョンが、裏のルートを使おうとして、イワンに通訳になってくれるように頼みにくるのだった…。

Linew_2

 それにしても、殺した敵の耳を切り取るのって、今もやってるんだなぁ。モンゴルの伝統は生きているって事か?

アレクセイ・チャドフ出演作品→「レッド・スナイパー ~独ソ最終決戦~」「ナイト・ウォッチ」「デイ・ウォッチ
エフクリト・キュルジディス出演作品→「ロシア特殊部隊スペツナズ

(以下はネタバレ↓)

 主人公に共感も同情もわかないが、たぶん、それは制作者の意図通りだろう。

 イワンの
「まさか有罪になるとは思わなかった。」
との言葉に、思わず
「いや、そりゃ有罪だろ。」
と冷静に突っ込んでしまった(爆)。

 だってさ、どんなに極悪非道のヤクザのボスで、自分の近しい人がそいつにヒドイ目に遭ったとしてもだよ。警官でもない一般市民が殺しちゃったら殺人犯でしょうが。
 イワンは除隊した直後で、法治国家に住む者としてのスイッチが充分に入りきっていなかったという点を酌量しても、あまりにも浅はかだったんじゃないの、としか思えない。

 それは平和な国に暮らしている者の感覚で、ロシアは内戦状態だからそんな甘っちょろい事言ってる場合じゃない、と言いたい人もいるかもしれない。でも、私にはそうは思えない。この映画のテーマは、「人殺しは悪いことなのに、どうして戦争だと人を殺して良いのか」という事じゃないかなぁ。そういう重めのテーマを軽いノリで見せるとはなかなかのもの。

 それにしても、ジョンが痛い。人権、人権って言ってた人間が、自分の勝手な思いこみで、約束特に破ってない(たぶん)アスラン撃ち殺してんだもんな。ひでー。
 でもまぁ、彼はマーガレットの愛の代わりに富と名声を得ただろうから、とりあえずはめでたしめでたし、と…(←この辺も妙にリアルすぎて笑えない…)。

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コメント

はじめまして
むとうす様のブログから飛んできました。
映画の記事は本当に面白いです。『ベルリン陥落』、私も「ちちんプイプイ」が耳について離れません(笑)
『チェチェン・ウォー』もなかなかブラックなお笑いがあるようで。

私もユーラシアやロシアに関心を持っているものです。
自己宣伝ではありますが、私のブログに八旗のロシア人部隊の記事を載せてありますので、よろしければご一読くださいませ。

投稿: 電羊齋 | 2007年5月29日 (火) 23時32分

コメントありがとうございます。
『ベルリン陥落』は万人にお勧めできる(?)おもしろ映画だと思います。

『チェチェン・ウォー』だと不謹慎だと怒る人がいるかもしれません。
でもこれ見ると欧米のいわゆる「人権活動家」に対して皮肉な見方をしているのはお偉いさんばかりではないのだな、と。

あと、ブログすごく充実していますね。インスタントストアも上手く利用されているし。
…他所様の綺麗なブログを見ると自分ちのごたごたぶりが目についてがくっとします(笑)。

投稿: 雪豹 | 2007年5月30日 (水) 22時38分

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