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2007年5月 1日 (火)

映画「ミュンヘン」

ミュンヘン

2005年アメリカ
監督:スティーヴン・スピルバーグ
キャスト:
アヴナー…エリック・バナ
スティーヴ…ダニエル・クレイグ
カール…キアラン・ハインズ
ロバート…マチュー・カソヴィッツ
ハンス…ハンス・ジシュラー

 トルコの諺に、「血で血は洗い流せない。血を洗い流せるのは水だけ」というのがある。
 その昔、この諺を引いてエスカレートする報復合戦を止めた偉大なカガンがいたが、それとはまったく逆の判断をしたのが、イスラエルのメイア首相である。1972年のミュンヘンオリンピックでパレスチナのテロリスト集団「黒い九月」によって起きたイスラエル選手団殺害事件に対し、血で報いる事を決意した、といわれる。
 メイア首相の選択が間違っていたというつもりはないが、やはり血で血は洗い流せないのではないだろうか、と思えて仕方ない。この映画は真っ正面からこの事件に取り組んでいる。


ネタバレはないつもりだが、一応、新しめの映画なので。本文はこのあと↓。

Linew_2

 ミュンヘン・オリンピックに参加していたイスラエル選手団が「黒い九月」によって射殺された事件を受け、このテロを組織したと見られる11人のアラブ人を暗殺するチームのリーダーにアヴナーが選ばれた。アヴナーはモサドの職員だが、メイア首相を警護したことがある警護官であり、この手の活動には全くの素人。彼ばかりでなく、彼のチームのメンバーのほとんどがどうも寄せ集めの素人っぽい。天下のモサドがこれで良いのか~(爆)。
 でも、今までこの手の活動に関わっていなかったために全くのノーマークで、次々と標的を消していく。しかし、見ているこっちの方がはらはらするほど危なっかしい。

 だいたい、得体の知れない情報屋のルイに頼りっきりってまずいような気がするが…。
 故意か偶然かわからないが、ルイの手配したセーフハウスで、アラブ人テロリストと鉢合わせたりもする。その時、
「PLO! PLO!」(PLO…パレスチナ解放機構)
「ETA! ETA!」(ETA…バスク祖国と自由)
とお互い叫び合ってるのが可笑しい。バスクだったら、他のテロ組織と利害関係がないのはわからないでもないが、PLOってその筋では人畜無害な組織と見られていたんだろうか???
 そのセーフハウスで自称ETAのアヴナーは、自称PLOのアリと雑談する。ムキになってイスラエルを援護したりして、あまりにも見え見えじゃないか~(汗)。アリはアリで、ユダヤ人がイスラエルに帰るのにかけたのと同じだけの時間をかけてでも、パレスチナに戻るんだと言う。
「祖国がすべてだ。」
と。

 しかし、そうして成功を重ねていけば、だんだん目を付けられて来るのは確実。KGBらしいロシア人を射殺してしまったあたりから、だんだん包囲の輪が狭まってはっきり見えるようになってくる。仲間が一人、二人と消されてくると、今まで自分たちがやってきた事を自分にされるんじゃないか、という恐怖に、精神的にも追いつめられていく。

 メイア首相の選択が必ずしも間違っていたという訳ではない、というのは、イスラエルという国の立場ならばその選択もありだろう、という程度の意味。しかし、なんだか道義的責任を任務を遂行する個人に全部おっかぶせてしまって、組織自身はしれっとしているように見えるんだがなぁ。
 …そういう組織の非情さを知りすぎているので政府には協力しないと言っているとすれば、ルイたちの言い分にも一理あるような気もする。もっとも、ルイたちが本当は何なのかはわからないのだが。

 アヴナーを含め暗殺チームの人たちは、最初はテロに対する怒りから夢中になっていて何かを考える余裕もなかったが、だんだんと疑念がわいてくるのだ。
例えば、イスラエルには死刑がないのに、テロ指導者とはいえ爆殺するのは正しいのか、とか…。
例えば、そもそも本当にこの11人がテロを組織した者なのか、とか…(テロの実行犯はミュンヘンで既に射殺されてしまっているので、問いただす術がない)。
だいたい、アヴナーの母親が祖国イスラエルを守らねば、という論理があの自称PLOのアリとまったく同じじゃないか。自分たちが正しくて、パレスチナ人が正しくないって言えるのだろうか…?

Linew_2

 可笑しかったのは、モサドの会計係(?)がアヴナーに領収書の提出を求めているところだ。えー、こんな秘密の活動に? ギャグか、と一瞬思ったが、財政的に決して豊かじゃないけれども、これをやらなければ国が消滅する、という危機感の表れなのだろう。その切実さについ同情したくなる。

 これに比べて、事務所費の領収書添付が繁雑とかぬかすどこぞの国の国会議員の危機感のなさは…。

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