【翻3-23】ホルVSリン 熱闘!ケサル王
государство Линь がすぅだーるすとう゛ぁ りーに
リン国。
北史突厥伝の冒頭、
突厥者、其先居西海之右、獨為部落、蓋匈奴之別種也。姓阿史那氏。後為隣國所破、盡滅其族。
というテュルクの伝説に関する箇所に出てくる「隣国」をオゲルがそう翻訳しているのだという。しかもご丁寧にリン国は鮮卑系との説明付。それはさすがに違うんじゃないかなぁ…。
チベットの英雄叙事詩「ケサル」にはリン国って出てくるけど、時代が違うしねぇ。これは漢字の意味通り隣の国っしょ。
その漢字が音訳なのか意訳なのかってのは、判別が難しいんだろうな。伝統的な解釈が間違ってる場合もあるだろうが、考えすぎてトンデモになっちゃうのもまずい。
日本語だと、漢字をそのまま書いておいた方が親切って場合が多そうだけど、漢字のない言葉に翻訳するときは音訳にするのか意訳にするのか、いずれにしろ苦労しそう。
第三節の中の「セミレーチエの諸都市」では、清地(イシク=クル)のことをПрозрачное озеро(ぷらずらーちなえ おーぜら 澄んだ湖)と訳してある。大文字で始まるから固有名詞扱いなんだろうけど。
まぁ、ここでは地名や役職名はたいてい漢字音と意味が併記してあるし、テュルク人の名前なんかはそれ自体が研究対象なんで詳しく書いてあるので、大丈夫なんだけどね。
参考文献:
『北史』中華書局
「突厥伝」の冒頭、三二八五頁。
翻訳されているものなら、『騎馬民族史2』の「周書突厥伝」p.29、「隋書突厥伝」p.39、「北史突厥伝」p.65。
君島久子訳『ケサル大王物語 幻のチベット英雄伝』
筑摩書房世界の英雄伝説9 1987年3月
とにかく「ケサル」はおっそろしく長いうえにバリエーションが多いので、日本語の全訳はないようだ。
これは、ケサルがリン国に生まれることになるいきさつと、リン国とホルとの戦いまでの抄訳。本文は200ページほど。解説・櫻井龍彦。
金子英一「ケサル叙事詩」
『北村甫教授退官記念論文集 チベットの言語と文化
』(冬樹社)昭和62年4月
pp.408-427
若松寛訳『ゲセル・ハーン物語 モンゴル英雄叙事詩』
平凡社東洋文庫566 1993年7月
ゲセルはケサルから派生して発展したのだという。「解説」にはケサルについても説明されているのでこちらも参照。
護雅夫「べー=オゲルのshad号研究」
『古代トルコ民族史研究I
』昭和42年3月 山川出版社
題名の通り、シャドについてしか検討してないんだけれど、オゲルがどういう人かはこれ読めばわかる。
…でもシャドの音写「殺」についても、「隣国」と似たようなことやってるなぁ、と。
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