【翻3-2】ツァーリ≡ハーン
царевич つぁれーう゛ぃち
царь(つぁーり)の息子なので、-евичを付けて皇子、王子。娘はцаревна(つぁれーう゛な)。父称と同じ作り方でんな~。
冒頭にイリテリシュ=カガン(突厥第二帝国の初代カガン、クトルグ)の息子たちがツァレーヴィチと書いてあって、思わずひっくり返った。感覚的にツァーリとハーン(カガン)は全くの等価のようだ。
山川の『北アジア史』には護雅夫氏がこのカガンの息子たちを「皇子」と呼んでいるので、それに従って訳語に「皇子」を使おうと思ったが、ぢつは、護氏は、『古代トルコ民族史研究III』では、その部分を「王子」と改めているのだ。なので、皇子と書く気にならなかったので、「カガンの息子たち」となんかこうばらけた書き方をしてしまった。だって、私の頭の中では、格好いい度合いはこう(下図参照)なっているもので(笑)。
ツァーリ<ハーン<カガン
ちなみに、カガンの息子だからといって、父称を作る要領でкаган(かがん)+ович(…オヴィチ 父称を作るときの接尾辞)でカガノヴィチとかにしてはいけない(笑)。
【3-2】参考文献:
護雅夫「突厥の遊牧国家」
護雅夫著『古代トルコ民族史研究III』
に収録。
総論 古代北アジア遊牧国家史概観の第二節第一項(p.43)。
護雅夫「突厥の遊牧国家」
世界各国史12『北アジア史』(新版)
山川出版社
第三章「遊牧国家の「文明化」」の第一節(p.83)。
宮脇淳子著『最後の遊牧帝国 ジューンガル部の興亡』講談社選書メチエ
ツァーリとハーンが等しいというのは、「「黄金のオルド」を継承したロシア」で説明されている(特にp.160あたり)ような理由からだろうが、実際にここまで混じっているのを見ると、「西に向けてはツァーリの顔、東に向けてはハーンの顔」っていう政治外交上の打算じゃないんじゃないかと思える。
※セミョーン・ベクブラートヴィチ(サイン・ブラト)については映画「イワン雷帝」も参照。
あと、チンギス統原理のようなのは阿史那氏にもあるので、この本は見かけたら迷わず買えと言いたい(笑)。
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