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2007年8月30日 (木)

映画「ブラッド・ブラザース」

Bbブラッド・ブラザース / 刺馬

1973年香港
監督:チャン・チェ(張徹)
キャスト:
マー・シンイ…ティ・ロン(狄龍)
チャン・ウェンシャン…デビッド・チャン(姜大衛)
ホアン・チュン…チェン・クアンタイ(陳観泰)
ツェン・ティエンヤン…ダニー・リー(李修賢)

 清の時代。長髪賊(太平天国の乱)との戦いで活躍したマー・シンイ提督が刺殺された。犯人はその場で取り押さえられたが、それはマー提督の義弟で、戦でも常にマーを助けて戦っていたチャン・ウェンシャンだった。生死を共にすると誓ったはずの二人の間に何があったのだろう。
 裁判官の前に引き出されたチャンは、むしろ進んで「真実」を語り始める…。


 原題「刺馬」。チャン・チェ監督が、男と男の愛情…じゃなかった、男と男の友情の絆の脆さをいつものティ・ロン、デビッド・チャンコンビで描く。
 ダニー・リーがどこに出てんだよ、と思ってたが、前方転回している(!?)長髪君だよね? キャスト見ると役名付いてるけど、名前なんて全然全くひとことも呼ばれんからよくわからん…(笑)。いやだいたい、自分はダニー・リーを「中国超人インフラマン」で知った人だから、顔よくわかってないだけだったりしてー(自爆)。

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 チャンと彼の兄ホアン・チュンがマーとの出会いは、彼らが山賊暮らしをしていた9年前にさかのぼる。
 一人馬に乗って峠を通りがかったマー。待ってましたとばかりに襲いかかるホアン。
 しかし、この男、できる。どうもマーは、ここに腕の立つ山賊が出ると知った上でやって来たようなのだ。強い相手と知って力試ししたくなった二人が戦っていると、ホアンの妻ミランがマーの金を奪って逃げたので勝負もお開きに。だが、マーは三人のねぐらまで追ってきて自分の大望を語るのだった。マーが大人物に思えた二人は、彼と義兄弟の契りを結ぶ。
 やがて三人は、山東省の山賊団のねぐらを襲撃、屈服させて手下にする。マーは彼らを弟子にして厳しく武術の訓練を施し、兵士に仕立てていく。

 そんな中、チャンとホアンは山を下りて町に遊びに行き、不用意な言動から、捕吏に追われる羽目になる。マーが助けに来てくれたのでかろうじて山に逃げ帰ったが、そのせいでマーは負傷してしまう。チャンとホアンは、このことに恩義を感じ、ますますマーを尊敬するようになるが、ホアンの妻ミランまでもが、夫の義兄という以上に好意を持ってしまうのだ。

 チャンは感づいてるね、完全に。てか、あれだけあからさまだと誰でも気付くか(笑)。ホアンが鈍すぎるんだ(笑)。もっとも、わかりやすく演技しているからニブイ私でもわかるんであって、実際だったら私も気付かんクチだと思う(爆)。

 でも、まぁ、さすがに兄弟の嫁とできちゃうのははまずいと思ったのか、受験を口実にマーは山から下り、ミランの前から姿を消す。

 2年後…。
 山の仲間たちのところに、将軍になったマーから迎えの使者が来た。チャンや弟子たちに自軍に入って欲しいという。
 出世して偉くなったマーに、以前とは違う微妙な距離感を感じ戸惑いながらも、チャンたちは文字通り命をかけて長髪賊と戦いめざましい戦功を上げるのだった。

 しかし、いつまでたっても山賊臭さが抜けず、今の自分の立場がまるでわかっていないホアンが、マーにはだんだん邪魔になってくる。そして…。

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 下積み時代に一緒に苦労した仲間もしくは彼女が出世するにつれて疎ましくなって…というのはよくある話だが、この場合、マーは最初っからチャンやホアン、あるいは弟子たちを出世の踏み台にしようとしてないかぁ? チャンにしてみれば、あこがれの兄貴に裏切られたと感じるだろうが、マーからすれば、用済みになったらポイってのは最初から織り込み済みだったのかもしれないね。
 むしろ、マーにとって誤算だったのは、ホアンの妻ミランに惚れてしまった事じゃないのか。

 でもさー、それを出世の邪魔だから取り除くのか、女を自分のものにしたいために取り除くのか、どっちがメインか知らんが、いずれにしろあさましいよな。

 でも、まー、これは上記DVDパッケージに使われているのと同じ写真だろうけど、矢印部分に注目。
Bbo
こんなんで何時間も戦ってるのでまぁ、いろいろあったけど、ここは水に流し、心臓をぐぐっとえぐってさわやかに〆ようではないか(爆)。

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2007年8月28日 (火)

映画「セブン・ソード」

セブンソード

2005年韓国/香港/中国
監督:ツィ・ハーク(徐克)
音楽:川井憲次
キャスト:
楚昭南…ドニー・イェン(甄子丹)
楊雲驄…レオン・ライ(黎明)
武元英…チャーリー・ヤン(楊采妮)
風火連城…スン・ホンレイ(孫紅雷)
韓志邦…ルー・イー(陸毅)
緑珠…キム・ソヨン(金素妍)
傳青主…ラウ・カーリョン(劉家良)
劉郁芳…チャン・チンチュー(張静初)
辛龍子…タイ・リーウー(戴立呉)
穆郎…ダンカン・チョウ(周群達)

 清朝ウィークと言うわけでもありませんが。…というか一応清代という設定ではありますが、これを歴史物というのもいかがなものかと(笑)。
 しっかし、ここまで対戦ゲーム風に徹すると、CGも浮いてなくて馴染むもんですな~。ザコキャラざくざく斬りまくり。敵キャラの十二門将でも良い役七剣士でも好きなキャラでプレイでき…ませんけど、それぞれの使用武器で結構見分けがつくし。
 何事も徹底的にやるが吉ですな。

 原作があるらしいので、原作知っている人には物足りないのかもしれませんね。しかし、短い時間の割に登場人物が多いにもかかわらず、それぞれの性格付けがある程度できているのは原作ありの効果でしょうか。もっとも、こういう定番ストーリィ+ノリだったら原作いらないかも(爆)。

 空飛ぶギロチンに似た武器が出てきたり、車裂のシーンが出てきたり(もちろん「英雄十三傑」とは違って裂かれませんが…笑)、香港映画のパロディっぽいシーンの数々にクスリ。
 でも一番吹いたのが、故郷の鴨緑江に向かって何か(遺灰?)を撒いたとたんに乗ってる馬にドバっとかかり、とたんに馬が「なにすんねん」とばかりに頸を後ろに向けて乗ってる人をにらんでんの。ガブッといけ、ガブッと(笑)。

 それにしても、天山の雪景色が素晴らしい。どんよりした雲が険しい峯にかかっている様なんか見てると身体が震える。

 ただし、VFX多用の弊害か、ラウ・カーリョンが出てる割には、ぐっとくるアクションはなかったなぁ…。よってこれをアクション映画と分類するのは大間違い。武侠ってファンタジーなんですかね?

関連作品:
スン・ホンレイ出演→「初恋の来た道」「MONGOL
ラウ・カーリョン監督→「霊幻少林拳

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2007年8月19日 (日)

千葉に残るロシア語の地名

 さて、草野川や葭川の上流を探っている時、こういう地名があることに気がつきました。

0817s400209
地元の人以外に一部方面の方には結構知られているかもしれませんが…。

 これだと読めちゃいますかね?
0817s400204
千葉市と四街道市の境にあります。

0817s400207
なんと、とおちか=トーチカ(точка 点、ピリオド)からきた地名なんだそうな。

 ローマ字表記だと、まさにロシア語起源だという感じですね。
0817s400208

 これは、ロシア系渡来人がここに来た証拠!
……ではなく、この辺り一帯は戦前~戦中軍の演習場で、この辺にトーチカ(火点)があったからということであります。
(そもそも渡来人が来るような時代に「ロシア人」っていないし)

 以上。

おまけ:
0817s400223
そろそろ稲刈りの季節ですね。

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2007年8月16日 (木)

映画「UFO少年アブドラジャン」

AbdullazhanUFO少年アブドラジャン

1992年ウズベキスタン
監督:ズリフィカール・ムサコフ
キャスト:
バザルバイ…ラジャブ・アダシェフ
アブドラジャン…シュフラト・カユモフ
議長…トゥイチ・アリボフ
ホリーダ…トゥチ・ユスポワ

 特撮が何ともチープなんだけど、むしろそれを逆手にとって笑いを取りにくるところに脱帽。クワ飛行シーンなんて、もう特撮じゃない! 完全に仮装大賞だ(爆)。思わず笑っちゃう事間違いなし!

 それでいてヘリコプターや戦車が本物なんだよなー。最初の方のソ連(撮影当時)とアメリカのスペースシャトルが宇宙で出会ってコンニチワするシーンのパロディなのか、二機のハインドがホバリングしながらコンニチワしているシーンには思わず唸ってしまった。なんでそこが実写なんだよ~(笑)。

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 ある時、ウズベキスタンの田舎のコルホーズ「コミュニズム」にB7455星雲から宇宙人がやってきた。彼(生殖器がないらしいので、男女の別はないと思うが)は見た目、金髪碧眼の少年なので、第一発見者のバザルバイの隠し子だと誤解されてしまう。しかしバザルバイは、彼の正体がバレる事を心配してか、誤解を積極的に解こうとはしない。アブドラジャンという名前を付けて、7番目の子供として一緒に暮らす事になる。

 やがてコルホーズに異変が!
 キュウリやスイカ巨大化!
 ニワトリ卵ぼこぼこ産みまくり!
 運転手のヒゲがボウボウのびる!

…という奇っ怪な事件続発。最初は騒いでいたコルホーズの人々までもがクワで飛び出す始末。
 しかもみんな、奇っ怪な現象を普通に受け入れて便利がってるし! まー、電気がきた時もそんな感じだったかもしれないけど。

 しかし、コルホーズの人々がそれを宇宙人の仕業と思わなくても、これだけヘンテコなことが続けば、モスクワのナフロブチコ将軍が感づく。そもそも、ナフロブチコ将軍は、UFOがこの方面に来ることを知らせる通知を出していたのだから(村人はあんまりその意味を理解していなかったが)。

 何のために出動したかよくわからない軍隊がコルホーズに迫る!
 どうする? アブドラジャン!

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 副題に「スティーヴン・スピルバーグに捧げる」とあるように、コルホーズの一人がスピルバーグに出した手紙という形式で話が進む。

 それにしても、ところどころ日本語しゃべってないか? 「クーワ返せ!」とか。ネコもはっきり「ヨーク!(うんにゃ~)」ってしゃべってるしな。空耳じゃないよね? 安斎さん?(謎)


関連作品(?):「不思議惑星キン・ザ・ザ

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2007年8月15日 (水)

映画「Mongol」トレーラーについて

何かいかにも貼ってくれといった風にパーツが提供されていたので貼ってみた。
幅400ピクセルって入らないかな…。

大意:
「ナーシェ・キノー」プレゼンツ
セルゲイ=ボドロフ(スタールシィ)監督作品

ロシアでは……「破壊者」
東方では……「神」

チンギス=カン

……彼は何者だったのか。
『MONGOL』

カミング・スーン!


…これ日本での公開はどうなってんの???
ロシアでは9月20日から公開らしいけど。

参考:
映画「Mongol」のキャスティングについて
今日封切り!(ロシアで)映画「MONGOL」

2008年4月7日付「モンゴル」見てきた。

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2007年8月12日 (日)

分水嶺を越えていく

 お天気のお姉さんが言っていた。
「…駐車中の車内の温度は30分で50℃にもなります。少しの間だからとお子様やペットを置き去りにせず…」
それはエアコンのないわしの部屋のことぢゃあないか?
いやいや、さすがに50℃にはならないぞ。

 みんな、ありがとう!
 みんなががクールビズとやらでクーラーの温度を28℃に設定してくれたおかげで、私の部屋は38℃だ!
 いやー、本当にみんな、ありがとねっっっ! はっはっはっはっはっは…(汗)はぁ暑い。

 それにしても暑すぎる。
 パソコンも立ち上がらん…。
 こういう暑い日には、そおだっ、外出だ! 散歩だ!!

 以前、草野川の水源はどこかな、と歩いていった時、宮野木ジャンクション下でしょんぼりなくなっており、なんだか不完全燃焼でありました。
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宮野木ジャンクションの下あたり
「暗渠のフタを開けてみる」の続きですが、あまりにもしょんぼりだったので、何も書く気になれなかったものです。

 そこで、もう一つの支流の方に沿って歩いてみる事にしました。
…といってもこういう
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半分干上がった様子

ばっかりだと余計暑いので、今回は少し涼しげな写真を。

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 なお、植物は元気です。
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0811s400121

 地下に潜って京葉道路をくぐります。
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交通情報でいつも渋滞している穴川ジャンクションの少し北の下

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更に細くなる道

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セミの抜け殻とか

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ここで地下に潜ってしまいます。

0811s400131
逆から見るといかにも谷川、この辺にわき水でもあったのか、という感じでかつて清流と呼ばれていた事も想像できるよい風景です。

 でも地下からは水の流れる音がしています。
 そこで、また地上に出ているか、湧水が寺社等のかたちで残ってないかと河の延長線上に沿っていってみると、大型ショッピングモール(ワンズモール)でした。今地図を見ながら考えると、おそらくこの辺りが頂上で、分水嶺になっていたのだと思います。

 しかし、未練たらしく更に先に行ってみると「草野神社」という小さな神社があった(草野地区だからだと思うけど)ので気をよくし、更に延長線上に歩いていくと谷川のような細い川がありました。
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看板には六方水と書かれています。でも、流れが全く逆です。

 分水嶺というと、ヒマラヤ山脈かアルタイ山脈か?くらいの感じですが、ほとんどアップダウンもないような所でもそういう場所があるとは、とちょっと感動して、六方水を遡ってみました。
 途中暗渠になって、駐車場になっている箇所を過ぎると小さいダムのような所に出ました。
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六方調整池

 そもそも、ワンズモールの辺りが長沼町といういかにも水分が多そうな地名です。
 歩いてみた印象では、木陰もなくすさまじい照り返しでひたすら暑く、土も赤土でかぱかぱだったので、水が豊かという実感がなかったのですが、調べてみるとこの一帯は、豊かな水で有名だったとのこと。

 なお、六方水は葭川(よしかわ)の上流でした(葭川の水源と言われているのは紅嶽弁財天の湧水で、別の場所)。葭川は都川に合流して、草野川同様東京湾に注ぐから、こういうのはひょっとして分水嶺とはいわないのかな?(笑)

この日は少しは歩いたかな?
0811s400136
千葉都市モノレールと葭川

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2007年8月 4日 (土)

映画「ステイト・オブ・ウォー」

ステイト・オブ・ウォー

2005年アルゼンチン/スペイン
監督:トリスタン・バウアー
キャスト:
エステバン…ガストン・パウルス
マルタ…ヴィルジニア・イノセンティ
バルガス…パブロ・リバ
ホアン…シザー・アルバラシン

 まず、アルゼンチンでは戦死者に匹敵する人数の帰還兵が自殺したという事実に衝撃を受けた。
 フォークランド紛争のニュースはリアルタイムで見た微かな記憶がある。しかし、もう終わったこと、歴史上の出来事として、全く思い出すこともなかった。

 1982年4月、家族や恋人に電話を掛ける時間さえ与えられずに、マルビナス(フォークランド)諸島に送り込まれたアルゼンチン第4航空旅団。
 エステバンとバルガス、ホアンの三人は、熊が冬眠する巣穴のような塹壕の中で一緒に寝起きするチームである。マルビナス諸島といえば、こんなに南(←Google マップ)で南極のすぐ側であり、南半球で4月といえば寒さに向かっていく頃である。寒いばかりか満足な食糧の補給もないのに、
「祖国のために寒さも飢えも忘れろ」
とかむちゃくちゃな訓辞をするジルベール大尉。その最中に、ハリアーが爆弾を落としていく…これで士気を挙げろと言われてもなぁ…。
 空腹に耐えかねた三人は、将校用に放牧されている羊を捕まえて食べてしまうが、その罰として冷たい雨の中、地面に縛り付けられていたバルガスはすっかり健康を害してしまった。しかし、それでもエステバンやホアン等と一緒に最前線に行くことを命じられる。

 戦闘シーンは、映画なので微かに周囲が見えるようになっているが、時たまイギリス軍の砲撃によって燃え上がる炎によって照らされる以外は真っ暗。イギリス軍の姿は全く見えない。ザクザクという兵士たちの足音、ひっきりなしに耳元を掠めていく弾丸が空を切る音、ナイフで何かを切り裂く湿った音以外はなにもない静寂の中、スペイン語の悲鳴だけが響くという地獄絵図である。

 敗戦後、帰ってきた兵士たちは英雄として歓迎されることはなかった。母だけとはいえ迎えてくれる人がいたエステバンは、まだ幸せな方だ。冒頭の自殺者数がそれを物語っている。
 こういうのを聞くと、アメリカ人が「原爆投下は正しかった。戦争を早く終わらせるためには必要な犠牲だった」と意固地に言い続けるのもわからないでもない。自己正当化し続けなければ、精神の均衡を保てないからなんだろう。

  マルビナス諸島では、イギリス占領下の現在でさえ、危険すぎるため地雷が除去できずにそのままになっているという。イギリス人が現に住んでる島でさえ、だよ? 今後アフガニスタンやイラクはどうなんのよ?

 原題は「ILUMINADOS POR EL FUEGO」。スペイン語なのでよくわからないが、アメリカでは「Blessed by Fire」の題名で公開されたそうだから「炎に照らされて」という感じだろうか。それがなぜこういう邦題になるのかはナゾ。

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2007年8月 3日 (金)

映画「戦艦ポチョムキン 復元・マイゼル版 クリティカル・エディション」

Potemkin戦艦ポチョムキン 復元(2005年ベルリン国際映画祭上映)・マイゼル版 クリティカル・エディション

1925年ソ連
監督:セルゲイ・エイゼンシュテイン
音楽:エトムント・マイゼル
キャスト:
ワクリンチュク…アレクサンドル・アントノフ
マチュシェンコ…ミハイル・ゴモロフ
ギリャロフスキー大尉…グレゴリー・アレクサンドロフ

 戦艦ポチョムキンの水兵たちは、ひどい労働条件や上官のいじめに日々不満を募らせていた。その上、唯一の楽しみである(たぶん)食事にウジのわいた肉で作ったスープを出される。さすがにこれは食えん、と皆でボイコットするのだが、それを上官に対する反抗とみなしたゴリコフ艦長は処罰しようとする。しかし、水兵を射殺するよう命じられた衛兵も、そのあまりの理不尽さに大いにためらう。
「プリー(撃て)!」
艦長の号令と同時にワクリンチュクが叫んだ。
「兄弟! 誰を撃つ気だ!」
仲間を撃つことを拒否した衛兵は、皆と一緒に士官たちを海に放り込む。
 こうして戦艦ポチョムキンの水兵たちは反乱した。しかし、混乱のさなか、ワクリンチュクは、ギリャロフスキー大尉に射殺されてしまうのだった。
 ワクリンチュクの遺体はオデッサの岸壁に安置されるが、その死を悼んで集まった群衆にさらなる悲劇が襲い掛かる…。

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 あらら~、ウジも肉と一緒にミンチにしてコロッケにしてしまえば気付かず食ってたのにさ~(爆)という冗談はさておき。

 話題の(一部地域で)マイゼル版である。

 画面が段違いにきれいになっている。士官が投げ込まれた海中の藻が鮮明に見えるほど。1976年完全版(ショスタコーヴィチの音楽が付いているもの)を見たときは、いくら名作と言われてもこの画質で普通の映画として楽しむのはキツイのぉ、とやや義務的に見たが、この2005年復元版だと娯楽作品として普通に見られるし、シンプルにおもしろい。

 なにしろ、音楽が画面に完全に合っている。これぞサイレント映画の音楽という感じがいい。1976年版では、ショスタコーヴィチの交響曲がぶつ切りになっているところでどうも気が散ってしまい、絵の間に出てくる字幕も何だが映画のテンポを乱しているような気がしてならなかったが、これだとすべてが調和していて自然だ。音楽の果たす役割って大きいな。これが「マイゼル版」と通称されるのも実にもっともなことだ。

 ロシア革命の流れを全部描くとなると、ダイジェストでも相当の時間を必要とするだろう。何しろ、20世紀の出来事だから、資料も豊富、いくらでもきめ細かに多面的に描くことができよう。そもそも、エイゼンシュテインも「1905年」という題材でもっと長い映画を作る事になっていたんだそうな。
 しかし、資金繰りやら(オリジナルネガをドイツに売っちゃうって、どんだけよ)時間的制約やらでそれが不可能になり、戦艦ポチョムキンの反乱をロシア革命の象徴的典型的エピソードとして取り上げることになったわけだ。
 まー、金をじゃぶじゃぶ使えばおもしろくなるもんでもないって例は、それこそ腐ってウジがわくほどあるわけだし(笑)。
 
 特典で付いてるドキュメンタリー「『戦艦ポチョムキン』を追って」単体でもおもしろい。50ページもある解説の小冊子もついてて、お得感アリ。

関連作品:
エイゼンシュテイン監督→「アレクサンドル・ネフスキー」「イワン雷帝
エイゼンシュテイン監督について→「セルゲイ・エイゼンシュテイン-人と作品-

ロシア革命時期のサイレント映画を舞台にした映画→「愛の奴隷」(ミハルコフ監督)

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