映画「ステイト・オブ・ウォー」
2005年アルゼンチン/スペイン
監督:トリスタン・バウアー
キャスト:
エステバン…ガストン・パウルス
マルタ…ヴィルジニア・イノセンティ
バルガス…パブロ・リバ
ホアン…シザー・アルバラシン
まず、アルゼンチンでは戦死者に匹敵する人数の帰還兵が自殺したという事実に衝撃を受けた。
フォークランド紛争のニュースはリアルタイムで見た微かな記憶がある。しかし、もう終わったこと、歴史上の出来事として、全く思い出すこともなかった。
1982年4月、家族や恋人に電話を掛ける時間さえ与えられずに、マルビナス(フォークランド)諸島に送り込まれたアルゼンチン第4航空旅団。
エステバンとバルガス、ホアンの三人は、熊が冬眠する巣穴のような塹壕の中で一緒に寝起きするチームである。マルビナス諸島といえば、こんなに南(←Google マップ)で南極のすぐ側であり、南半球で4月といえば寒さに向かっていく頃である。寒いばかりか満足な食糧の補給もないのに、
「祖国のために寒さも飢えも忘れろ」
とかむちゃくちゃな訓辞をするジルベール大尉。その最中に、ハリアーが爆弾を落としていく…これで士気を挙げろと言われてもなぁ…。
空腹に耐えかねた三人は、将校用に放牧されている羊を捕まえて食べてしまうが、その罰として冷たい雨の中、地面に縛り付けられていたバルガスはすっかり健康を害してしまった。しかし、それでもエステバンやホアン等と一緒に最前線に行くことを命じられる。
戦闘シーンは、映画なので微かに周囲が見えるようになっているが、時たまイギリス軍の砲撃によって燃え上がる炎によって照らされる以外は真っ暗。イギリス軍の姿は全く見えない。ザクザクという兵士たちの足音、ひっきりなしに耳元を掠めていく弾丸が空を切る音、ナイフで何かを切り裂く湿った音以外はなにもない静寂の中、スペイン語の悲鳴だけが響くという地獄絵図である。
敗戦後、帰ってきた兵士たちは英雄として歓迎されることはなかった。母だけとはいえ迎えてくれる人がいたエステバンは、まだ幸せな方だ。冒頭の自殺者数がそれを物語っている。
こういうのを聞くと、アメリカ人が「原爆投下は正しかった。戦争を早く終わらせるためには必要な犠牲だった」と意固地に言い続けるのもわからないでもない。自己正当化し続けなければ、精神の均衡を保てないからなんだろう。
マルビナス諸島では、イギリス占領下の現在でさえ、危険すぎるため地雷が除去できずにそのままになっているという。イギリス人が現に住んでる島でさえ、だよ? 今後アフガニスタンやイラクはどうなんのよ?
原題は「ILUMINADOS POR EL FUEGO」。スペイン語なのでよくわからないが、アメリカでは「Blessed by Fire」の題名で公開されたそうだから「炎に照らされて」という感じだろうか。それがなぜこういう邦題になるのかはナゾ。
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