映画「戦艦ポチョムキン 復元・マイゼル版 クリティカル・エディション」
戦艦ポチョムキン 復元(2005年ベルリン国際映画祭上映)・マイゼル版 クリティカル・エディション
1925年ソ連
監督:セルゲイ・エイゼンシュテイン
音楽:エトムント・マイゼル
キャスト:
ワクリンチュク…アレクサンドル・アントノフ
マチュシェンコ…ミハイル・ゴモロフ
ギリャロフスキー大尉…グレゴリー・アレクサンドロフ
戦艦ポチョムキンの水兵たちは、ひどい労働条件や上官のいじめに日々不満を募らせていた。その上、唯一の楽しみである(たぶん)食事にウジのわいた肉で作ったスープを出される。さすがにこれは食えん、と皆でボイコットするのだが、それを上官に対する反抗とみなしたゴリコフ艦長は処罰しようとする。しかし、水兵を射殺するよう命じられた衛兵も、そのあまりの理不尽さに大いにためらう。
「プリー(撃て)!」
艦長の号令と同時にワクリンチュクが叫んだ。
「兄弟! 誰を撃つ気だ!」
仲間を撃つことを拒否した衛兵は、皆と一緒に士官たちを海に放り込む。
こうして戦艦ポチョムキンの水兵たちは反乱した。しかし、混乱のさなか、ワクリンチュクは、ギリャロフスキー大尉に射殺されてしまうのだった。
ワクリンチュクの遺体はオデッサの岸壁に安置されるが、その死を悼んで集まった群衆にさらなる悲劇が襲い掛かる…。
あらら~、ウジも肉と一緒にミンチにしてコロッケにしてしまえば気付かず食ってたのにさ~(爆)という冗談はさておき。
話題の(一部地域で)マイゼル版である。
画面が段違いにきれいになっている。士官が投げ込まれた海中の藻が鮮明に見えるほど。1976年完全版(ショスタコーヴィチの音楽が付いているもの)を見たときは、いくら名作と言われてもこの画質で普通の映画として楽しむのはキツイのぉ、とやや義務的に見たが、この2005年復元版だと娯楽作品として普通に見られるし、シンプルにおもしろい。
なにしろ、音楽が画面に完全に合っている。これぞサイレント映画の音楽という感じがいい。1976年版では、ショスタコーヴィチの交響曲がぶつ切りになっているところでどうも気が散ってしまい、絵の間に出てくる字幕も何だが映画のテンポを乱しているような気がしてならなかったが、これだとすべてが調和していて自然だ。音楽の果たす役割って大きいな。これが「マイゼル版」と通称されるのも実にもっともなことだ。
ロシア革命の流れを全部描くとなると、ダイジェストでも相当の時間を必要とするだろう。何しろ、20世紀の出来事だから、資料も豊富、いくらでもきめ細かに多面的に描くことができよう。そもそも、エイゼンシュテインも「1905年」という題材でもっと長い映画を作る事になっていたんだそうな。
しかし、資金繰りやら(オリジナルネガをドイツに売っちゃうって、どんだけよ)時間的制約やらでそれが不可能になり、戦艦ポチョムキンの反乱をロシア革命の象徴的典型的エピソードとして取り上げることになったわけだ。
まー、金をじゃぶじゃぶ使えばおもしろくなるもんでもないって例は、それこそ腐ってウジがわくほどあるわけだし(笑)。
特典で付いてるドキュメンタリー「『戦艦ポチョムキン』を追って」単体でもおもしろい。50ページもある解説の小冊子もついてて、お得感アリ。
関連作品:
エイゼンシュテイン監督→「アレクサンドル・ネフスキー」「イワン雷帝」
エイゼンシュテイン監督について→「セルゲイ・エイゼンシュテイン-人と作品-」
ロシア革命時期のサイレント映画を舞台にした映画→「愛の奴隷」(ミハルコフ監督)
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