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2007年9月11日 (火)

ドラマ「蒼き狼」第三部

Ookami3第三部 モンゴルの統一

キャスト:(主なキャストは第一部参照)

トオリル…中谷一郎
ジャムカ…若林豪
ジャルメ…可知靖之
テップテングリ…財津一郎
クラン…神崎愛

 相変わらずジュチに冷淡なテムジンだが、当面の課題はジャムカとの関係だ。

 実は数年前、テムジンとジャムカは干戈を交えている。
 テムジン麾下の部族の馬を盗んだ者が殺される、という事件があり、たまたまそれがジャムカの弟タイチャルだったために戦争にまで発展した。(十三翼の戦い)
 テムジンが
「あ、失敗しちゃった」
と思った瞬間にとっとと逃げてしまったのでジャムカが勝ったのだが、勝敗の判定は微妙なところであった(現に『集史』ではテムジンが勝った事になっている)。テムジン…逃げ足の速い男(笑)。

 シャマンであるテップテングリが天のお告げとして聞いたところによると、ジャムカの周りにはタイチウトなど反テムジン派の部族が集まり、ジャムカをグル=カンに推戴して、今度こそテムジンを完膚無きまで叩き潰してしまおう、と準備しているのだという。
 両雄が再びぶつかるのは必至だが、そこで気になるのがケレイトの動向である。
 トオリルは、この戦のあとの計算もあり、テムジンとの誓約もあり、テムジンの側に付くことを決める。しかし、息子の(ニルカ=)サングンはテムジンにパパを取られちゃう~と嫉妬しているので不満たらたら。

 テムジン・トオリル連合軍とジャムカの軍との戦闘は広範囲に行われ、五日に及んだ。五日目の夕方、テムジンは敵兵の放った矢に当たって重傷を負う。

 ジャルメがこっそり敵陣から取ってきた馬乳酒を飲んで翌日は元気になったテムジン。
「…ジャルメ、何で上半身裸?」
テムジンも尋ねているけど、私もジャルメが何で脱ぎたかったか是非知りたい。だって、夜の暗闇の中を忍んでいくんだったら、黒っぽい服着てた方が目立たなくないかね? なぜわざわざ目立つ肌色を晒す(笑)←一応、ジャルメ『秘史』では言い訳してるけど)。

 元気になるなりタイチウトを殲滅しようと張り切るテムジンのもとに、トオリルがジャムカの軍を破ったとの捷報が入る。
 ジャムカが破れた…ということは、三頭体勢が崩れ、この瞬間からケレイトは覇権を競うライバルになったという事だ。獲得した部族を分け合いながらも腹の中を探り合うテムジンとトオリル。

 さて、敗れたジャムカは、どこに消えたかのと思えば、サングンの寝所に現れ、テムジンと戦うよう言葉巧みにそそのかす。
 テムジンとの関係だけを見れば、「殺し好きの翁」などと呼ばれるトオリルもおおむね誠実な関係を保っている。サングンにだだをこねられて肉親の情にほだされ、テムジンと戦うようになるのだって、むしろ人の親としては同情できる選択なのではないのだろうか。『秘史』を読む限りでは、あんまり腹黒く感じない。

 翌年、テムジンとトオリルは共同してナイマン攻めに出撃。しかし、テムジンはナイマンと通じているとジャムカの口車に乗ったサングンおよびトオリルは、ナイマン軍を目前にしながら、テムジンを置き去りにして戦線を離脱してしまう。
 ケレイト軍は退却中にナイマンの名将コグセウ=サブラグに追撃されて大打撃を蒙ってしまう。そりゃあまぁ、赤ん坊将軍(ニルカ=サングン)じゃあ、コグセウ=サブラグにはかなわんよなぁ。裏切ったうえに、このときテムジンに助けられたくせに、結局トオリルはサングンの言うなりになってテムジンを撃つのだ。

 だんだん関係地域が広がってきたので、地図が参照されるようになってくるんだけど、これがイマイチ…(笑)。20世紀の地図に「西夏」って書いただけでしょ。ソ連(当時)の地名になってたらわかるわけない。そもそもナイマンがどの辺にいるか書いてないし一見親切なようで雰囲気だけかいな。

 敗れたテムジンは、わずかな手勢を連れてバルジュナ湖に逃れ、再起を計る。
 そこに近づいてくるあやしい隊商…サルタクのハサン(アサン)に率いられる商人の一行だった。しかし、
「高原の商人たち、あなたに期待している…」
なんてのんきなセリフを言わせてる場合か~。平和ボケ? ま、とりあえず、ヒゲ生やしとけ、ハサン。ヒゲないと宦官に見えてしょうがない。
 こいつ、表向きは毛皮を買い付けに来たなどと言ってるが、オングトのアラクシ=ディギド=クリの手の者だぞ。こういう微妙な情勢の所に、わざわざ入ってくる商人って何者よ? 『秘史』に書き残されているって事は、モンゴル側も彼らがアラクシから送られて来たって事を認識しているって事だから、様子を見に来た斥候どころか、意図を持ってやって来た密使だよな。 
 このあと、アラクシがナイマンのタヤン=カンに協力を要請されても応じなかった事を考え合わせれば、密かにテムジン側に援助物資を運ばせ、秘密の攻守同盟を結んだんじゃないのかね? それこそオングトに匹敵する名門で有力部族であるナイマンを見捨てるなんて重大な決定を下すのに、前兆がなくいきなりなんて事があるかい。
 知らぬはタヤン=カンばかりなりって…コグセウ=サブラグが歎くはずだわ、ドラマには出てこないけどさ(爆)。

 多くの人々の期待を背負って、テムジンはケレイトに再び戦いを挑み、ケレイトの本拠地カラトン(黒い森)に破る。黒い森と言いつつ、相変わらずの砂漠だが。
 破れたトオリルは、逃亡中ナイマンの兵卒の手にかかって死に、サングンのその後はわからない…。しぶとく生き延びたジャムカは、ナイマンに走るのだった。


 ところで、ここでひとこと言いたい。テムジン、戦、下手じゃないか?
 まぁ、下手ってのは言い過ぎかもしれないけど、ここまでの戦闘を見てきた限りでは、凡庸な指揮官のようにしか思えないんだけどなぁ。
 ここまでは自分の部族も小さく兵力もわずかだったから、負けることがあっても仕方ないと言われるかもしれない。でも、圧倒的な兵力で勝つのは当たり前で、それで負けたらそれこそ無能なのでは? たびたび負けても、それこそ上記のアラクシ=ディギド=クリのように手をさしのべてくる人がいる、慕ってやってくる人がいるというのはなぜなんだろう?
 力じゃないとすれば、何が人を引きつけるのか。

 テムジンが古い秩序を壊して新しく秩序を打ち立てかというと、必ずしもそうでもないような気がするんだけどなぁ。モンゴルに征服された農耕地域にとっては目新しい事がいろいろあって有益だったかもしれないけど、伝統的な部族や氏族のしがらみって色濃く残っている気がする。もちろん、論功行賞で組み替えはあったわけだが、それだって伝統的なワクからそうはみ出しているようには見えないけど…。

 単に立地条件と時期がかなえば、テムジンである必然性はなかったって事なのだろうか。

 ある意味、現代でもスベエテイやアラクシのように引きつけられているモンゴル好きの人たちは、テムジンが草原の覇者になった理由をどう見ているのか気ぃになぁるなぁ(爆)。
 一言で言うと、そのうんちくを聞いてみたいということです(笑)。


 さて、テムジンは翌年ナイマンを破り、メルキトの残党を殲滅。クランを得る。また、腹心の部下に裏切られたジャムカが連行されてくる。
 主君を逃がしてテムジンの所にやってきたタルクタイの家来を褒めたのとは裏腹の関係で、主君を売ったジャムカの家臣を処断したテムジンは、貴人に対する礼をもって、大地に血を流さずにジャムカを処刑した。
 ジャムカの行動は結構ナゾ。『秘史』の説明もこのドラマのストーリィも一つの説に過ぎなくて、本当のところはジャムカ本人にしかわからないのかも…。本人にもわからなかったりして。屁理屈でもこじつけでもいいから、なんかもっと納得できる説明を聞きたいような気がするなー(←またそれか…笑)。

 全モンゴルを統一したテムジンは、テップテングリのお告げにより全モンゴルのカンに即位、チンギス=カンとなる(第二次即位。1206年)

 それよりテップテングリ、なんだそのヒゲは!!!(踊りも表情もヘンだけどさ!)


第四部 万里の長城越えへ続く

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コメント

シメは第四部で書けばいいか~と思って最初流して書いたけど、
第四部を見なおして、まともな意見はここで書くべきだと考え直し、改訂しました(←意味深…笑)。

投稿: 雪豹 | 2007年9月13日 (木) 00時33分

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