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2007年9月16日 (日)

ドラマ「蒼き狼」第四部

Ookami4第四部 万里の長城越え

キャスト:(主なキャストは第一部参照)
テップテングリ…財津一郎
カサル…河原崎次郎
クラン…神崎愛
ジュチ…荒木しげる
ソルカンシラ…大友柳太朗

 テムジンをジンギス=カンに仕立てたのは自分だ、と自負するテップテングリは、テムジン兄弟の結束を乱そうと画策中…。一方、カサルはクランに一目惚れして贈り物をしたりと猛烈なアプローチ。テップ=テングリはそれに感づいており、カサルがクランを口説いている所をテムジンが見るようにし向ける。
 テムジンは、カサルを縛り上げるが、ボルテの知らせでホエルンが駆けつけ、自らの手でカサルを縛っている縄を切る。
「敵がいなくなったからといって、今度はカサルを殺すのかぁっ!」
兄弟が吸った胸をあらわにしてテムジンを叱る。

 神のお告げを取るか、母を取るか悩むジンギス=カン。
 そして、結局、母を取る。そりゃまぁそうだ。神のお告げを伝えているに過ぎないシャマンより、天命を受けて地上にやって来た神の化身の狼の直系の子孫の一族の方が偉いに決まってる。力士たちに背骨を折られてテップテングリは死ぬが、死体は3日後に消え失せたという。

 しかし、この件が老いた母に過度の心労を与えたのか、その年の暮れにホエルンは死去する。
 …そうだが、このくだり、なんかツッコミどころ満載なんだけど…(笑)。とりあえず、ホエルンの育てた四人の孤児が柩を担いだというけれど、ホエルンが死去したときって、ボロクルは故人じゃないの?
 もっとも、ジュチの森の民への遠征がこの後に置かれているから、生きていてもいいのかもしれないけど…。だんだんこの辺から「?」という感じになってくるなぁ(笑)。

 第三部までが比較的『秘史』に忠実だった分余計に第四部には、なぜこのエピソードが? と首をひねってしまう箇所が多い。『秘史』以外の史料がでてきて自由度が高まるはずなのに、高まっているのはトンデモ度だ。
 何がいけないんだろう、と何度も見て考えたが、クランにまつわるエピソードが全て駄目なのかもしれない。時間が足りないというのなら、クラン関係を全部削って、せっかく権力欲まみれのヘンなおじさんでおもしろくなってきたテップテングリをテムゲ=オッチギンと対決させて暴れさせるとか、あれだけ伏線を張っていたジュチ関係の話を増すとかした方が良かったんじゃないのかなぁ。だって、ジンギス=カンが後継者を指名する場面でもただ
「エゲデイ」
って言って終わりなんだもんな~。なんか格好いいセリフがあったような気がするんだが、エゲデイもおっ、って感じで頷くだけ。受諾の心構えを一言言ってもよくはないか?(「莎草に包みても牛に食われざる、脂肉に包みても犬に食われざる…」ってアレ。)
 …って、まぁ、結局この辺は好みの問題なのかもしれない(笑)。でも、クランを氷の中にって話は、はっきり言って、生理的嫌悪感をもよおすぞ(爆)。誰が考えたんよ、この話?
 という訳で、クランの絡む話を心の目でカットして次行ってみよー(爆)。

 1211年、万里の長城を越えて金を攻撃講和を結ぶ。
 1215年、中都占領。

というような遠征をささっと経て、1218年のオトラル事件。
 耶律楚材が慎重にせよと助言するが、ジュチの進言により、1219年春、ホラズム侵攻。ジュチは先鋒になる(この遠征に先立つ宴席で上記後継者の指名が行われている)。そしてドラマの中では、ジュチはキプチャク平原からそのまま戻らず、ジンギス=カンと二度と会うことはないのである。

 しかし、耶律楚材が出てくるのなんか意味あるの? この人、占いしかしてないじゃん。しかもカラキタイ攻撃を予言って…同族意識ゼロなのか…。非道いヤツ(爆)。
 今のモンゴルにつながる影響を与えた人物というなら、タタトンガの方を取り上げるべきじゃないか? 彼がテムジンに仕えることになったいきさつの方が、テムジンの人となりを象徴的に表している気がするんだが…。もっとも、タイチウトを殲滅したくだりでも、主君に忠実だった正直な人をテムジンが褒めたって話も出てこないが。何で?
 あるいは、テムジンも老いたな~って話をしたいなら、長春真人と会う話の方が良いじゃないか。

 狩猟中に落馬したジンギスカンに、ボオルチュは我々も老いたし、もう帰ろうと提案するのだが、ジンギスカンは更にインドへの遠征を企てる。しかし、ここまで一緒に来ていたクランも死に、ジンギスカンもようやくブルカン岳への帰還を決定する(1924年)。
 遠征中の殺伐なるものを祓うため、ポカソキコ平原で酒宴を催す。そこに迎えに来たツルイは彼の息子のフラグとフビライを連れてきていた。
 フラグを全く無視してフビライの解説をするナレーター。フラグには字幕もナシ。非道い差別だ(笑)。日本人は、イラン方面に全く関心なしですか?(爆)。

 ジンギス=カンが故郷に帰り着くと、帰還せよとの命令に従わないのでどうしたのかと不審に思っていたジュチがキプチャクで狩りをしている、という噂を聞く。ボオルチュやジャルメが諫めるのも聞かずにジュチ征討の決定をしたところに、ジュチの死を伝える急使が到着する…。
 ジュチだっていい加減に大人…というか、当時の寿命で言ったらそんなに早死にでもない気がするし、だいたい、息子が40人もいて、なかなか充実した人生だったろうと思うのだが…。
「…戦陣の中でしかこの嘆きは癒せない!」
と西夏遠征を決定するジンギス=カン。…なにやら迷惑な話だなぁ。
 この遠征の途中で、ジンギス=カンは没する。

Linew_2

 なんだかんだとぶーぶー言いながらも、大いに楽しんで見た。
 40モンゴルとか言うだけあって、モンゴルの中の部族が頗る多く、その関係やらなんやらを覚えなければならないと思うとくらっとする(笑)。わかってくるとおもしろいんだが、ハードル高いぜ(笑)。
 そういうとき、知ってる顔が演じていると、かなり助けになるものだ。オールスターキャストって、その点では非常に助かる。戦国時代の大河ドラマ風なのも、日本で作るんだったらむしろその方が味があって(←醤油味モンゴル…笑)良いじゃんって気がしてきたし。下克上の時代の話なら、価値観的にもそれほど違和感がない。むしろ、現代もののドラマや映画に出てる人の方が台詞回しとか動きとか思った以上に浮いてる(笑)。

 いや~自分はなんにも知らなかったと勉強不足を痛感しつつも、これで少しは、モンゴルマニアの話に入っていけるかな?と期待。良いドラマでございました。


蒼き狼 成吉思汗の生涯 DVD-BOX
第一部 成吉思汗の誕生
第二部 大平原の誓い
第三部 モンゴルの統一
第四部 万里の長城越え

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コメント

キャストの人物、財津一郎以外わかりません(^^;

なんか自分記憶違いしてるのか?!

>モンゴルマニアの話に入っていけるかな?

最近まっとうに勉強してないので、私は既に遥かに追い越されてます(笑

投稿: 武藤 臼 | 2007年9月16日 (日) 18時11分

あの人が出てたはずなのに???
ということでしょうか?
その他名前が出てた人といえば

デイセチェン…田中浩
チラウン…林道紀
チンベ…林邦史朗
ムンリグ…佐藤和男
ベルグダイ…伊藤達広

…知ってる人がいません(爆)。
なお、ナレーターは仲代達矢

>モンゴルマニア

私のモンゴルまにあ度は付け焼き刃、もしくは竹光なので、真剣で斬り付けられるとすぐばれます(笑)。

投稿: 雪豹 | 2007年9月16日 (日) 23時49分

いや、役者の名前に聞き覚えがないという意味です

いずれも記憶にありません(笑

投稿: 武藤 臼 | 2007年9月17日 (月) 01時14分

この頃はあんまりアイドルの人は出てなかったたんですね。
…荒木しげるはアイドルなのかな?

投稿: 雪豹 | 2007年9月17日 (月) 06時32分

>…荒木しげるはアイドルなのかな?

http://ja.wikipedia.org/wiki/荒木しげる
なかなかユニークな経歴ではないですか、
時代劇から特撮まで幅広くこなしてますねぇ
ストロンガーは見てましたが主役のイメージは全くありません。
最近見たことがあるドラマもないですねえ

投稿: 武藤 臼 | 2007年9月17日 (月) 13時33分

ストロンガーとなると全くわかりません。
仮面ライダーではっきりあの人がやっていた、とわかるのはぶいすりゃー!までです(笑)。

時代劇も、秀忠、家光以外は知らない人の役だな~(笑)。

投稿: 雪豹 | 2007年9月17日 (月) 19時20分

引越し真っ最中で全然覗きにこれないうちに、守備範囲ど真ん中の面白い話題が・・・!
モンゴルはまりたてのころ、ネット探しまくってビデオセット買った人です☆ でも、DVDが出てるので買いなおそうかと思っているところ・・・

このドラマ見て、やっと謎の男ジャムカの気持ちがちょっぴり分かりました。
「奴こそは男の中の男、奴を見ると俺は、挑まずにはいられないのだ・・・!」
それを恋って言うんだよジャムカ!
哀れなやつめ、テムジンはもうお前のことなんかまるでなんとも思ってないというのにううううう・・・・(泣υ)

雪豹さまが何じゃコレと言ってる所は、だいたい井上靖の創作部分みたいです。
『蒼き狼』はかなり秘史に忠実ながら、創作部分も相当にカッ飛んでましたから。
特に場外ホームランなのは、どっから持ってきたのやらのガウランちゃんエピソードで、インパクトが強すぎて以降日本のモンゴル小説のクランは(陳舜臣先生のを除いて)すっかりわけのわからん女です。

ああ・・・喋りたいこと山ほどあるけど明日は仕事なので、前の分も含めてまた書き込みに寄らせていただきます。寝なきゃυ

投稿: 島崎精舎 | 2007年9月18日 (火) 04時06分

 「さま」って呼ばれると照れちゃうな~。どうかお気楽に。
 ツッコミ入れまくってますが、私の方が的はずれなこともあろうかと思いますので、さらにどんどんツッコミんでネタしてください(笑)。

>ジャムカの恋

 恋…なるほど~コイですかぁ…。
 私はその方面はニブイからなぁ…って、気付きませんって!
 テムジンに惚れた人は多いと思うけれど、ちょっと毛色の違う惚れ方のようですね(笑)。

 ↑こういうのとか、カサルがクランを口説いてるくらいならあるかもーとか、なるほどーとか納得させられて良いのですが、
 ガウランとか、ヒマラヤの氷とかは、せっかくその世界にひたっているのに冷や水を掛けられたみたいに正気に戻ってしまうのですよ。
 想像部分も夢から醒めない程度にうまーく創ってくれないとなぁ(笑)。

投稿: 雪豹 | 2007年9月18日 (火) 19時15分

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