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2007年10月31日 (水)

映画「シベリアーダ」

Sibiriadaシベリアーダ

1978年ソ連
監督:アンドレイ・ミハルコフ=コンチャロフスキー
音楽:エドゥアルド・アルテミエフ
キャスト:
アレクセイ・ウスチュジャーニン…ニキータ・ミハルコフ
ニコライ・ウスチュジャーニン…ヴィターリー・ソローミン
アナスタシヤ・ソローミナ…ナターリヤ・アンドレイチェンコ
ターヤ・ソローミナ…リュドミラ・グルチェンコ
?…ウラジーミル・サモイロフ
エターナル・グランドファザー…パーヴェル・カドチニコフ
スピリドン・ソローミン…セルゲイ・シャクーロフ

 これが日本未公開とは。
 第2部だけでも充分エンターテイメントとしてまとまっているので、今からでも大きなスクリーンで上映できないものだろうか。

 たとえば、だ。
 アリョーシャが村を出て行こうとするとき、ふと立ち止まるシーンがある。なぜ立ち止まったか、最初見たときはわからなかったが、後のシーンを見てひょっとして……と思い、音を大きくしてもう一度見てみた。すると、、、

ゴゴゴゴゴゴ

うおお、すごい微かだが確かに音が入ってる。し、しかし…。こんな地を這うような重低音、パソコンのスピーカーで聞こえるかあああああ(涙)!

 あれ、映画館で見たら、シートが突き上げるように震えるね。間違いなく。この後のシーンとか、序盤のクレムリンを背景に花火が上がるシーンなんて、大画面で見たらストーリィ無しでそれだけでも感動で言葉もないと思う。ああ見てみたい…。

 確かに第1部を見ないと、最後のシーンの花束の少女の意味が何となくしかわかんないか…。死の沼とか、ターヤはずーーーっとアレクセイを待っていたんだ、とか……。
二部だけだと、エターナルじいさんのエターナルぶりがよくわからないかな? 他人の夢の中に勝手に出てきたり、充分人外ぶりは発揮されてるが、頭に鳥が留まってたりもっと妖精?じみてる。あれは、レーシーみたいなもの?

 最近のアニメとか映画では、隠し設定とかで謎を謎のままにして大して説明しないのも多いから、2部だけでもギリギリいけると思う。
 んで、あの数々の謎は何だったんだろう、と1部から通しで見る。すると、何気ないカットにも全て意味があるとわかり、それを探る謎解きのおもしろさで一作品で二度おいしい。
…なんてのはやっぱ、邪道の見方なんだろうなぁ(笑)。

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 西シベリアの某所、エラニ村。ソローミン家とウスチュジャーニン家の人々の三代にわたる愛と憎しみの物語。
 第2部では、第二次世界大戦後、復員してボーリング技師になったアレクセイが、石油を掘りにエラニ村に戻って来たことから始まる。
 先祖代々の墓のごく近くで掘り始めたことで、先祖代々の村の生活や森を守りたい村人と感情の行き違いが起こるのだが、もっと深刻な事態が迫っていた。
 世界最大級の水力発電所の建設のため、エラニ村がダム湖の底に沈むというのだ。
 石油が出なければ湖の底、しかし、石油が出たら出たで、めでたしめでたしというわけでもない。村も村人も今のままではいられない。

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 それにしてもDVDのジャケット、マキシム=ムンズクが前面に出てるけど、実際は端役だよね。
 シベリアの住人で父祖の地を守ろうとしている人たちも、ダム建設をしようとしている人たちも、石油を掘ってる人たちもロシア人で、しかも、結局はエラニ村出身の人たちの話なのだから。

 むしろ、例の彩プロのような爆裂コラの方が合ってる。その理由は……ネタバレになるので、以下へ↓

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2007年10月14日 (日)

映画「火を噴く惑星」

Planet_of_storms火を噴く惑星

1961年ソ連
監督:パーヴェル・クルシャンツェフ
キャスト:
ヴェルシニン…ヴラジーミル・エメリヤノフ
ボブロフ…ゲオルギー・ジジョーノフ
アリョーシャ…ゲンナジー・ヴェルノフ
シェルバ…ユーリィ・サランツェフ
マーシャ…キュンナ・イグナトヴァ
アラン・ケルン…ゲオルギー・テイフ

 これさー、ずるいよ~。原題は「嵐の惑星」…金星のことじゃないか~!! 確かに、重要な局面で火山が爆発するし、風もあんまり吹いてないけどさ。それにしたって、この題名は狙いすぎじゃないか? 釣られて見ちゃたじゃないか~(笑)。
 それに、煽り文句の

『惑星ソラリス』『不思議惑星キン・ザ・ザ』を産んだロシアからまたまたトンデモ惑星が登場!!

って…。ソラリスはトンデモじゃないだろ(笑)。

 というわけで、宇宙開発競争が盛んだった1960年代の真面目な空想科学映画で、決してウケねらいでやっているワケではないのである。…………が、、、

 天然ボケ最強ぉぉぉ!

冒頭のナレーション(?)、

…我々が空想で描いたこの未知の世界は
現実とは違うかもしれないが…

に、一言言いたくなる人続出だっっっ!

 開始2分30秒。金星に向かっていた有人宇宙船3機のうちの1機カペラが隕石にぶつかって爆発。いきなり大惨事じゃないか~!
 もちろん、そんなことでソ連の宇宙飛行士は、計画を断念したりはしない。モスクワの司令部も「人命第一」と口では言ってるけど、宇宙開発のような最先端の科学の発展には、ある程度の犠牲は織り込み済みって雰囲気がみなぎってる(笑…い事じゃないんだよなぁ、本当は)。当時の宇宙開発競争に身を投じていたソ連の科学者、軍人などなどの気概が感じられ、すがすがしくさえある(果たしてそうか?)。

 ついいまさっきまで冗談を言い合っていたのに、と同僚の死を嘆き悲しみつつも、ヴェガの乗員シェルバとケルンは、ロボット・ジョンに最善の計画を計算させようと起動させる。

 このジョンがすごいんだ。米国G・S社製なんだけど、なぜか敬語でしか命令を受け付けない。緊急を要するときにめちゃくちゃ丁寧な言葉遣いをしなくちゃならなくてロシア人は、
「ふざけてる!」
とみんなイライラ。ジョンと話す機会が多いおかげでケルンが常に丁寧な言葉遣いなのがなんだかアメリカ人っぽくない(笑)。受けるジョンの方も返事が
「ダー(はい)、サー」
って…何で半端にロシア語なのよ!? 「イエッサー」でいいじゃん。…「サー」以外は全部ロシア語のくせにサー(笑)。

 物語は淡々と進んでいく…ように見えるがよく考えると、すごい危機的状況が次々と襲い掛かってるではないか! それを、感じさせない乗務員の落ち着きぶりはさすがエリート中のエリートである宇宙飛行士。…マーシャ以外。
 このマーシャが。マーシャがなぁ~~~!(泣) 宇宙飛行士にしては不安定すぎないかな。案の定、錯乱した彼女の行動が後でとんでもない事態を引き起こすのだ。

 ジョンの計算で、シェルバとケルン、ジョンがヴェガの着陸船で金星に着陸し、マーシャがヴェガで、残りの乗員がシリウスで軌道上に残る事になった。通信に音声しか使えないっていうのがいかにも昔風だなぁ。
 そればかりでなく、あらゆる物がアナログっぽく、色遣いはソ連っぽい。でも、窓枠が木だったりするのは、一回りしてむしろ今風かも(笑)。宇宙の長旅、やっぱりインテリアは木の方が暖かみがあってほっとできるもんね。

 それはともかく…ケルンたちと連絡が取れなくなってしまったために、シリウスが金星に着陸することになる。そして着くなり、アリョーシャはにょろにょろしたものに捕まってしまう。
 それはラフレシア型の植物であった。人の声とも、風音ともつかない不思議な音声(テルミンの音)の警告で仲間が気付き、アリョーシャは食われずに済むのだが、「金星に生き物はいるか?」と着陸前ワクワクどきどきしてた一番の金星探査の目的が、もう終了?(笑) 川口浩探検隊だったら、このネタだけで特番の最後まで引っ張るところだが(笑)、そんなケチなことはしない。

 それもそのはず。一行の前に、ブロントサウルスが現れた!
 食肉植物くらいで驚いていてはついていけないゾ(笑)。それにしても、いくら恐竜でも、尻尾から血を採られてから痛いと気付くまでそんなに時間かかるかいな。草食動物なんだから、そんなににぶくちゃ食われちゃう。
 そのほかにも、ランフォリンクスとおぼしき翼手竜に襲われたり、地球の生物に似すぎてないか??? これって、時間旅行じゃなくて宇宙旅行なんだけどなー。ま、金星だからそういうこともあり得るかも(いや、あり得ないってば)。

 それにしても、ジョンって時々本当に優秀なロボットなのか疑問に思える行動・言動をするんだよな~~~。
 中でも仰け反ったのは、宇宙服に穴があいて細菌に汚染されたとかで具合の悪くなったケルンたちに薬を飲ませなければならなくなった時。かぱっとヘルメットを開けて薬飲ませてる! あわわ、そりゃ即死だろ。
 そんなジョンも、ケルンの好きな音楽を流しての最期は涙を誘う(ケルンの)。でもしょうがないね。溶岩流の中を歩いてるんだもの、そりゃあ、溶けるわ(爆)。ジョン、鋼鉄でできているらしいし。

 こうしてジョンの身を挺した活躍により、ケルンとシェルバはシリウスの乗務員と会うことができた。その後の探査はきわめて順調に進んだのだった。

 ところが最後の最後で、問題が発生。マーシャが
「規定では軌道上で待機する事になっているけど、着陸しなくちゃ! だって金星が呼んでいるんですもの!」
と口走っている通信が、シリウスの留守録に残されていたのだ! いやいや、規定通りにしろよ!
 しかも、録音テープ(もちろん当時はオープンリールである)が尽きていて、本当に着陸するのか、どこに着陸するのかがわからない。もし本当にヴェガが金星に着陸してしまっていたら、全員、地球には帰れないのだ!

 マーシャはいったいどうしてしまったのか?

 また、金星には、知的生命体はいなかったのか?


関連作品:
ジジョーノフが出ている映画
→「エア・パニック -地震空港大脱出-
→「スターリングラード大攻防戦
SF(コメディ)映画
→「不思議惑星 キン・ザ・ザ
→「UFO少年アブドラジャン

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2007年10月 8日 (月)

映画「ベアーズ・キス」

Bearskissベアーズ・キス スタンダード・エディション

2002年フランス/スペイン/イタリア/スウェーデン/ドイツ/ロシア
監督:セルゲイ・ボドロフ
音楽:ギア・カンチェリ
キャスト:
ローラ…レベッカ・リリエベリ
グロッポ…ヨアヒム・クロール
ミーシャ…セルゲイ・ボドロフJr.
ルー…キース・アレン
マルコ…マウリツィオ・ドナドーニ

 前々からそうだろうと感づいてはいた。
 しかし、やっぱりそうだったんだ…。

ロシア人=熊

 いや、それはいいとして(←いいのか?)
 これはせつない話ですなぁ。ハッピーエンドなのかもしれないが、よくよく考えてみると、ハッピーエンドじゃないような気もするしなぁ…。

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 ローラはヨーロッパ中を旅するサーカス一座の空中ブランコ乗り。団員もいろいろな国の出身でサーカスの中では、英語、ロシア語、イタリア語などが飛び交っている。
 ただ、ローラの父も母も本当の親ではなく、しかも仲が悪い。サーカス用の動物を仕入れにウラジオストクの動物商を尋ねたとき、ほんの赤ん坊の子熊を見たローラは一目で気に入り、無理をして買ってもらう。

 そのいてもいなくても良いような義理の両親でさえ、旅を続けるうちにスウェーデンで母のカルメンが去り、ドイツで父のマルコが死ぬ。

 まだマルコが生きていたとき、ローラは不思議な夢を見る。シャマンが太鼓を叩いて熊の毛皮をまとって踊るというものだ。何となく気になって見に行くと、熊のミーシャは人間になっていた。
 ローラは当然のことながら、自分の見たものを信じない。気が変になっているからそんなものを見たのだと思って教会に懺悔に行ったものの、そこで男に金を盗られそうになってしまう。この時、人間の形をしてミーシャが現れ、ローラを助けたことから二人は親密な関係なるのだった。ミーシャは、一緒に森に行こうとローラを誘ったりもしたが、その時はマルコが生きていたこともあり、ローラはついていくことを拒み、ミーシャにも一緒にいてくれと頼むのだった。

 スペインでもローラとミーシャは外でデートをしたりして二人だけの幸せを味わっていた。ある時、たまたまロマの占い師にミーシャは運勢を見てもらった。この占い師、ミーシャが熊であると見破っても別に不思議とも思っていない様子。しかも、
「彼はもうすぐ永遠に人間になる」
と予言される。森に帰れなくなるのかー、とミーシャは少し複雑な様子…。
 しかし、おきまりの展開で、サーカスの座長ルーがローラに手を出そうとしたために、ミーシャは彼を殴り殺してしまうのだ。どんなに人間側に非があろうと、人間を殺した動物が殺処分になるのは、日本でもスペインでも同じ事。ローラは、ミーシャを助けだそうと手を尽くすが…。

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 神話的な世界を描いているのだが、何となく昔読んだ少女漫画のようでもある。少女漫画はあんまり読んだ訳ではないけど(いや、本当ですって)、少年漫画に比べて結構性描写ありではなかったっけ? そういう点でも、現実離れする事を気にしない設定にしても。今の小学生がどんなか全く知らないけど、
「ここには自分の居場所がない…」
と感じる年代(小学校高学年くらいから?)と、そういう時代のあったオトナには共感を得られる作品ではないだろうか。
 それにしても、あれだけサーカスが盛んな(盛んだった?)ロシアでも、サーカスってのはもの悲しいイメージがあるのかねぇ…。

 ところで、こういう話に突っ込むのも野暮とは思うが、どうしても一言言いたい。
「ローラ、その熊、あなたより相当(10歳以上)年下なんだけどいいのか?」(そこかよー)。


参考:
Rminzokuロシア民俗夜話―忘れられた古き神々を求めて (丸善ライブラリー)
栗原成郎 著

この中の「熊形の神」が、農耕到来以前、森で狩猟生活をしていた時から存在する古い神格ヴォロース(ヴェーレス)に関連の章。その中に、熊の民話・昔話がいくつか紹介されている。


Siminwaシベリア民話集
斉藤君子 編訳

ローラの夢の中で、シャマンが太鼓を叩いて熊の毛皮を着て踊るシーンでは、ホーミー(?もっと低音)のような歌が流れるので、ここではブリャートの「熊男」を。

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