映画「ベアーズ・キス」
2002年フランス/スペイン/イタリア/スウェーデン/ドイツ/ロシア
監督:セルゲイ・ボドロフ
音楽:ギア・カンチェリ
キャスト:
ローラ…レベッカ・リリエベリ
グロッポ…ヨアヒム・クロール
ミーシャ…セルゲイ・ボドロフJr.
ルー…キース・アレン
マルコ…マウリツィオ・ドナドーニ
前々からそうだろうと感づいてはいた。
しかし、やっぱりそうだったんだ…。
ロシア人=熊
いや、それはいいとして(←いいのか?)
これはせつない話ですなぁ。ハッピーエンドなのかもしれないが、よくよく考えてみると、ハッピーエンドじゃないような気もするしなぁ…。
ローラはヨーロッパ中を旅するサーカス一座の空中ブランコ乗り。団員もいろいろな国の出身でサーカスの中では、英語、ロシア語、イタリア語などが飛び交っている。
ただ、ローラの父も母も本当の親ではなく、しかも仲が悪い。サーカス用の動物を仕入れにウラジオストクの動物商を尋ねたとき、ほんの赤ん坊の子熊を見たローラは一目で気に入り、無理をして買ってもらう。
そのいてもいなくても良いような義理の両親でさえ、旅を続けるうちにスウェーデンで母のカルメンが去り、ドイツで父のマルコが死ぬ。
まだマルコが生きていたとき、ローラは不思議な夢を見る。シャマンが太鼓を叩いて熊の毛皮をまとって踊るというものだ。何となく気になって見に行くと、熊のミーシャは人間になっていた。
ローラは当然のことながら、自分の見たものを信じない。気が変になっているからそんなものを見たのだと思って教会に懺悔に行ったものの、そこで男に金を盗られそうになってしまう。この時、人間の形をしてミーシャが現れ、ローラを助けたことから二人は親密な関係なるのだった。ミーシャは、一緒に森に行こうとローラを誘ったりもしたが、その時はマルコが生きていたこともあり、ローラはついていくことを拒み、ミーシャにも一緒にいてくれと頼むのだった。
スペインでもローラとミーシャは外でデートをしたりして二人だけの幸せを味わっていた。ある時、たまたまロマの占い師にミーシャは運勢を見てもらった。この占い師、ミーシャが熊であると見破っても別に不思議とも思っていない様子。しかも、
「彼はもうすぐ永遠に人間になる」
と予言される。森に帰れなくなるのかー、とミーシャは少し複雑な様子…。
しかし、おきまりの展開で、サーカスの座長ルーがローラに手を出そうとしたために、ミーシャは彼を殴り殺してしまうのだ。どんなに人間側に非があろうと、人間を殺した動物が殺処分になるのは、日本でもスペインでも同じ事。ローラは、ミーシャを助けだそうと手を尽くすが…。
神話的な世界を描いているのだが、何となく昔読んだ少女漫画のようでもある。少女漫画はあんまり読んだ訳ではないけど(いや、本当ですって)、少年漫画に比べて結構性描写ありではなかったっけ? そういう点でも、現実離れする事を気にしない設定にしても。今の小学生がどんなか全く知らないけど、
「ここには自分の居場所がない…」
と感じる年代(小学校高学年くらいから?)と、そういう時代のあったオトナには共感を得られる作品ではないだろうか。
それにしても、あれだけサーカスが盛んな(盛んだった?)ロシアでも、サーカスってのはもの悲しいイメージがあるのかねぇ…。
ところで、こういう話に突っ込むのも野暮とは思うが、どうしても一言言いたい。
「ローラ、その熊、あなたより相当(10歳以上)年下なんだけどいいのか?」(そこかよー)。
参考:
ロシア民俗夜話―忘れられた古き神々を求めて (丸善ライブラリー)
栗原成郎 著
この中の「熊形の神」が、農耕到来以前、森で狩猟生活をしていた時から存在する古い神格ヴォロース(ヴェーレス)に関連の章。その中に、熊の民話・昔話がいくつか紹介されている。
シベリア民話集
斉藤君子 編訳
ローラの夢の中で、シャマンが太鼓を叩いて熊の毛皮を着て踊るシーンでは、ホーミー(?もっと低音)のような歌が流れるので、ここではブリャートの「熊男」を。
10/20追加:
東北アジアの神話・伝説
荻原眞子 著
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