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2008年4月16日 (水)

映画「ブリッジ」

ブリッジ

2006年イギリス/アメリカ
監督:エリック・スティール
音楽:アレックス・ヘッフェス

 実は劇場公開時に見たんだが、その時は感想を書く気になれなかった。なのでちょっと時期はずれになってしまったが……。

 アメリカ公開時に激しい批判を浴びたせいか、日本版トレーラーが酷かったんだね。あたかも自殺を思いとどまらせるようなフレーズを恣意的に切り出している。映画自体は自殺を否定も肯定もしていない。自殺しようとする人を押しとどめるでもなく、背を押すでもない。
 しかし、受け取りようによっては自殺者の行為を誉め称えるような遺族の発言も含まれており、「自殺は罪」としているキリスト教的モラルを壊される、と直感した人々がありとあらゆる難癖を付けたんだろうなあ。
 日本ではそういったクレームを避けるためにああいうトレーラー(これはTVCMで流されたものだろうと思うが、テレビがないので知らない)にしたんだろうと思うが、アレを見て見に行かなかった人も多かったんじゃないだろうか。「ダメ、絶対!」的なキャンペーンを張っても、本当に自殺を考えている人には届かないし、誰にとっても意味がない。だって、それで自殺が止められるのなら、キリスト教国では自殺はないはずじゃないか。ゴールデンゲート・ブリッジから飛び降りて死んだ人の数は1250人(映画公開時)。映画中にも「自殺は大罪」と考える信仰心の強い遺族が出てくるが、そういう環境の中でもこれだけの数の人が自ら命を絶ったのだ。

 固定カメラで捉えられるゴールデンゲート・ブリッジがあまりにも美しい。橋の向こうが雲の中に消える映像はまさに別の世界への入り口のよう。ここで死のう、と考える人が多く出るのもわからないでもない。自殺の場所として、ここを選んだ人(未遂)は、
「受験する大学を選ぶようなもの」
でいろいろと情報収集して冷静にこの橋を人生の終わりの場所に選んだと証言している。

 「愛されているとわかっていたら死ななかったかも…」
という友人のコメントが出ているけれども、その愛してくれた人が死んでしまった時はどうする? それでも生きろというのはあまりにも酷ではないだろうか。多くの場合は、他にも少しでも自分を必要としてくれている人がいると気付くし、その間、時間の経過が心の痛みを癒すから、一瞬、死にたいような気になってもたいていはまた生きていくのだが、その差はそう大きくないと思うのだ。

 「誰かに止めて欲しかった」
という人が中にはいるのも本当なんだろう。しかし、友人や身内に毎日毎日5年も6年も
「死にたい」
と言われ続けて、ずっとなだめて引き留め続けるのもなかなか難しい。誰もが余裕なくいっぱいいっぱいで生きているような時なんだし、煩わしくなってくる。結局いつも死なないんだし、口癖のようなものだ、死ぬ死ぬというヤツに限って死なないさ、と思ってしまうのも無理からぬ事だと思う。
 でも、面倒くさいと思いながらも対応していたその一言が、その人の命をつないでいたとしたら…。たった一回、ハイハイいつもの事ねと無視したためにその人が自殺してしまったとしたら…。

 私には自殺をしようとする人の気持ちは理解できない。わからないながらも、「止めて欲しい」と無意識に思っている人ならば引き留めたいとは思う。
 しかし、ゴールデンゲート・ブリッジから飛び降りて、粉々になった腰骨が内臓に突き刺さり、それこそ死ぬような苦しみを味わったのに、三回もダイブを繰り返した青年と家族のインタビューのかみあわなさに、自殺者の心中を理解し、説得する困難さを感じる。たとえば、本当に死のうと考えた人がこの映画を見てどういう反応をするか、全く想像ができない。だから、自殺を考えている人にこれを是非見ろとも、絶対見るなとも言えない。

 自殺については簡単に答えの出る問題ではない。正解はないのかもしれない。だからといって見て見ぬふりをしてやり過ごせるような事でもない。

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