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2008年12月 9日 (火)

映画「君の涙ドナウに流れ ハンガリー1956」

君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956

2006年ハンガリー
監督:クリスティナ・ゴダ
キャスト:
カルチ…イヴァーン・フェニュー
ヴィキ…カタ・ドボー
ティビ… シャーンドル・チャーニ
水球チーム監督…カーロイ・ゲステシ

 ソ連の戦車が整然とブダペスト市街に入り、手当たり次第にその辺のアパートを砲撃するシーンを見て猛烈な既視感に襲われた。つい最近、似た光景を見たことがあるような……。

 これか。

ツヒンバリに侵攻するグルジア軍の戦車の上からケイタイで撮った動画YouTube

 日本のテレビでもちょろっと流れたようだけど、YouTubeでは結構長い間上位に上がっていた。ロシアでは強い興味を持ってみられていたんだろ。リアルにヒャッハーとか言っちゃってんのはソ連軍に限らんぞ。

 1956年のソ連のハンガリー侵攻を扱っている映画だから、ここに出てくるロシア人は憎たらしい限り(もっとも、ソ連の水球選手を演じている人は全然ロシア人に見えない)。
「ロシア人は出て行け! ロシア人は出て行け!」
なんて自由ハンガリーの象徴のようにシュプレヒコールされたりする。しかし、ブダペストを走り回ることになるソ連の戦車は西側や日本の戦車と比べて車高が低いので、戦車乗りはでかいロシア人ではなく小柄なアジア系が多いと聞いたことがある。その人たちに「ロシア人出て行け」とな? 
 しかも、ハンガリーに駐留していたソ連軍は、演習などでハンガリー人と接して戦友と感じるようになっていたのだろう。ハンガリー市民に対して砲口を向ける気になれずに、平和なデモ行進に参加してしまうのだ。反ソデモを組織したリーダー格のエステルが、
「……じゃあ敵は誰なの?」
と口走る。まったくその通りだと思う。「ロシア人は帰れ」とは誰にでもわかりやすいスローガンではあるが、戦うべき本当の敵は誰なのだ? いや、それは「誰か」なのだろうか。

Semenovs_footnotes

 1956年、モスクワで行われた水球の試合で、ソ連の選手のラフプレーや、地元びいきの審判員に腹を立てたハンガリーチームの花形選手カルチは、試合後、ソ連選手らに暴言を吐き乱闘事件を起こしてしまう。
 そのため、ハンガリーに戻るなりAVO(秘密警察)に呼び出しを喰らい、二度とソ連の「同志」にそのような無礼をはたらいてはならない、とクギを刺される。カルチ自身はスターなので直接暴力を振るわれる事はないのだが、拷問の様子をそれとなく見せたり、家族のことを持ち出したり、なによりもカルチの言動が全て筒抜けである事を示してやんわりと脅迫したのだ。オリンピックに出るという夢があり、家族のことも愛しているカルチは慎重になろうと思うのだった。

 しかし、1956年はソ連共産党第20回党大会の年だ。フルシチョフが猛烈なスターリン批判をしたことで有名な党大会だが、その内容は一般には公表されていなかった。
 とはいえ、スターリンが死んで何かが変わると期待していた人々にはその気配は敏感に感じ取られ、まずポーランドのポズナンでのストライキが暴動に発展し、情報統制はされていたもののハンガリーにもその影響が及んでくる。

 カルチが在学している大学でも官製の共産青年同盟を離れ、独自のハンガリー独立学生同盟を結成し、ナジ・イムレを首班とする政権を実現させようとの動きが高まってくる。
 カルチは及び腰なのだが、積極的に学生運動を行っているヴィキが気になってつきまとっているうちに、学生ばかりでなく全ての市民が参加するデモの雰囲気を味わい、また当局による武力鎮圧で友人が射殺される場面に立ち会ったりして、無関係ではいられない気分になってくるのだ。

Semenovs_footnotes

 執拗に襲い掛かる悲劇的な状況を一つ一つ乗り越え希望が見えてくるたびに、この事件の残酷な結末を知っているこちらはいたたまれない気分になる。
 それはそうと、カルチの行動は少々無理がありはしないかな。ストーリィをわかりやすくし、状況を説明するためにしても脚色しすぎなのでは……。いくらなんでもオリンピックに出られる気がしない。実際の個々人の体験はもっと淡々としたとりとめのないものだったんではないかと想像するんだが……。

 さて、こういう深刻な映画でこういう事を言って良いものかどうか迷ったが、やはり言わずにはいられない。
水球チームの監督が「スラムダンク」の安西先生そっくりだった!
いったんはオリンピックを捨て革命に身を投じたカルチが、やはり
「水球が……水球がやりたいんです……」
というシーンがあったとかなかったとか。

参考:メルボルンの流血戦(ウィキペディア)

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