映画「この道は母へとつづく」
2005年ロシア
監督:アンドレイ・クラフチュク
キャスト:
ヴァーニャ・ソンツェフ…コーリャ・スピリドノフ
マダム…マリーヤ・クズネツォヴァ
グリーシャ…ニコライ・レウトフ
院長…ユーリィ・イツコフ
カリャーン…デニス・モイセーンコ
院長が飲んだくれで駄目駄目な孤児院。そんな状況でも子供たちは自分たちの社会を作ってなんとか生きていこうとしている。
……ソ連時代ならそれだけの話だが、今は自由主義の国ロシアの時代だ。国際養子縁組ビジネスを営む通称マダムがこの孤児院に目を付けた。マダムってあだ名が付くこと自体いかがわしい事この上ないが、自分のビジネスに後ろめたさなんか全然感じていない人買いなんである。子供たちの間でも行く先が
「良い外国人なら幸せになれるが、悪い外国人だとパーツ取りに使われちゃうんだってよ」
なんて会話が交わされている。外国に養子に行く事に対する期待と不安が入り交じる複雑な心境がそこに凝縮されている。
ヴァーニャも人柄の良さそうなイタリア人夫妻との養子縁組みがほぼ決まって、期待と不安で落ち着かない。イタリアに行く事になるヴァーニャにはさっそく「イタリア人(この映画の原題)」というあだ名が付いた。
そんな頃、先日養子に行ったムーヒンを彼の母親が訪ねてきた。ムーヒンはこの孤児院に送られてくる前もヴァーニャと一緒の孤児院にいた大の親友。
「ようやく探し当てたのに一足遅かった……」
と落胆して酒をあおる彼女。いつもはこんなに飲まないと自分では言ってるが、傍から見れば立派なアル中なのは明らかで、彼女が子供を捨てた理由もだいたい察しが付く。かわいそうだが、この母親の手元に戻さない方が子供のためには良いだろうなぁ、と思うのだが、この後彼女は列車に飛び込んで自殺してしまうのだ。
彼女が孤児院から立ち去る直前に、尋ねられるままにムーヒンや養子先のことを彼女に話していたヴァーニャの心は大きく揺れる。もし、母親が自分を探す気になったら、ロシアのどこかならともかくイタリアまでは行けないだろう、と思ったのだろう。母に会わなければならない、そのためにはどうしたらいいのかと小さいなりに考え、行動していく。
養子に行けと強く勧める大人たちや子供たちのボス的存在のカリャーンも、既にあきらめてしまった自分の夢をヴァーニャに託している。ヴァーニャを手助けする方もそう。マダムはどうか知らんけど。
ネタバレしてしまうと、この映画は最後まで見てもはっきりした結末は描かれていない。
たぶん見た人の解釈次第だと思うので私の感想を書くと……ヴァーニャとしては母に会いたい、というより自分が母を助けなければ、と思ったんじゃないだろうか。もし母親が自分が養子に行ったあとで訪ねてきたときに自分がいなかったら、悲しんで死んじゃうかも知れない、という。母が自分を捨てなければならなかった事情についても理解し受け入れる事ができているのではないかな。母に会いたい一心で、とキャッチコピーにはあるけど、6歳の子供でも我々大人が思っている以上にオトナな気がする。
だから、実母と会って自分はこれこれの次第でイタリアに養子に行きます、と伝えることができれば良いのであって、あとは納得して養子に行ったのではないかな?
まぁ、その辺は見た人なりの感想って事で。
そういえば、このアンドレイ・クラフチュク監督ってこの前から気になってた歴史超大作「アドミラル―提督―(邦題「提督の戦艦」)」の監督なんですね。主人公のアレクサンドル・コルチャーク提督ってソ連時代には取り上げられるはずのない人だし、海戦シーン(日露戦争?)がロシアのオイルマネーをどかっとつぎ込んだっぽいど迫力……トレーラーを見た限りでは。こういうのこそでっかいスクリーン、シートを揺らすほどの大音響で見たいよな。横浜でロシア革命の報に接したとか、日本とも多少縁のある人なんだけど、日本では公開されるのかな?
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