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2009年3月14日 (土)

ドラマ「ザ・コマンド」

ザ・コマンド

2007年ベラルーシ
監督・制作:アレクサンドル・ライエ
キャスト:
ロマン・ヴェトロフ少佐…オレーク・シテファンコ
マリーナ…エヴゲニヤ・クリュコヴァ
アナトーリィ…アレクサンドル・ペスコフ
ハキム…ムフタル・グセンガジエフ
ベク…スラヴィク・ステパニャン
セマギン…アレクサンドル・ポドベド
ヴェトロフの父…アナトーリィ・ヴァシリエフ

 1.ピースメーカー、2.ヘロイン、3.ともだち、4.帰還の四話からなるTVシリーズ。原題「ヴェトロフ少佐」。DVDでは1と2が「炎の奪還」、3と4が「最後の標的」にまとめられている。推理物としてはゆるいというか関係者がみんな知り合いかよ~(笑)とか、死亡フラグ~(笑)とか思ったところもあったけど、○○サスペンス劇場的なノリでおもしろかった。どちらかというと刑事物なのに、攻撃型ヘリがミサイルを撃って民家ドッカーン!ってのもロシアならでは(制作ベラルーシなんだが)で違和感なし(笑)。ロシア語のこういう娯楽色の強いドラマが簡単に見られるようになるとは実にすばらしい。

 舞台は1990年代のロシア(正確にはСНГ)南部国境。1.の「ピースメーカー」というのは、主人公のヴェトロフ少佐をこう呼んでいるらしい。と、いうのも彼が所属しているのが国境地帯の平和維持軍(直訳ではピースメイキング・フォース)だから。日本語や英語では平和「維持」軍というけれども、そもそも平和の存在しないところ(例えばアフガニスタンとかイラクとか)で平和を「維持」って確かにおかしいわな。その点では「平和を創り出す軍」と表現しているロシア語の方が正しいかもね。

Semenovs_footnotes

 突如として何者かの襲撃を受けたヴェトロフ少佐の部隊。敵の一人を生け捕りにして吐かせたところ、その連中は荷を馬で運んで国境外にある渓谷の集落に向かったという。
 部下を殺されたヴェトロフは復讐のためわずかな部下を連れて国境を越える。しかし、その連中がアジトにしているベクの家で返り討ちに遭い部下は全員死亡。ヴェトロフだけ生き残った。敵のボスはアフガニスタンでヴェトロフを撃ったハキムという男だった。
 ハキムの部下には中国人っぽい顔の人とか、アフリカ人っぽい顔の人もおり、国際色豊かなうえにロシアの軍隊を相手にまったく引けを取らない戦いぶり。実は内務省のセマギン大佐が追っている麻薬密売組織なのだが、彼らはベクの手引きでレチェンスクで運び屋をみつけ、ヨーロッパに大量のヘロインを輸送しようと計画していた。

 ベクの娘の手助けで脱出したヴェトロフは、なんとか平和維持軍の基地に戻るが、命令違反の挙げ句部下を失った罪で逮捕され、監視付で病院に拘束されてしまう。おまけに、自分の捜査を妨害されたと快く思っていないセマギンは、アフガニスタンに続きまたしてもヴェトロフだけが「奇跡的に」助かったのはおかしいと疑っている。

 さて、実はハキムたちが向かったレチェンスクというのは、もう何年も会っていないヴェトロフの父や古い友人たち……ヴェトロフの帰りを待ちきれずにそのうちの一人アナトーリィと結婚してしまった昔の恋人マリーナが住んでいる故郷だった。病院を抜け出したヴェトロフは身一つでレチェンスクへ向かう。

Semenovs_footnotes

 オッサンがやけに格好良いのがステキ。ヴェトロフの世代も充分オッサンなんだが(アフガン帰りのヴェテランだしね)、ヴェトロフ父とかセマギン大佐とかアナトーリィの叔父さんとかベクとかよりオッサンな連中が何気なく芯があっていい。それに比べると、ヴェトロフでさえ優柔不断なヒヨッコに見えてくる(笑)。いや、同世代でもマリーナやもっと若そうなジャーナリストのヴィーカ等々女性陣は肝が据わっているように見えるけど(笑)

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2009年3月 9日 (月)

映画「ブダペスト市街戦1956 ソビエト軍侵攻」

ブダペスト市街戦1956 ソビエト軍侵攻

2007年ハンガリー
監督:ギョルギ・スゾマヤス
キャスト:
ガーボル…サンドロ・クレゾ
ユーリ…カタ・ガスパル
トーチャ…ペーテル・バルナイ

 原題は「太陽通りの少年たち」でいいのかな。キャストの名前の読み方もこれで良いのか。良くない気がする。
 少年たちの恋や友情を描く青春ドラマだが、舞台が1956年のブダペストなので、少年たちは熱意だけで、というか遊びの延長でソ連の戦車に立ち向かっていく。
 だから動乱の全体像はこの映画からはよく見えない。実際の当事者たちにとっては、こうだったのだろうな、という感じでリアルではある。自分たちが死ぬって事を考えていないように見える点も。でも、世間知らずゆえにどうにかなるんだとがむしゃらに突き進む、それが若さだよな~。結構老けて見えるけど少年の範疇なんだな。10代なのかな。

 ところで、彼らが拠点にしている映画館でアラム・ハチャトゥリャンが曲を書いている「The Battle of Stalingrad(第1部1949年、第2部1950年。原題「スターリングラードの戦い」邦題があるかどうかさえ知らない)」が上映されていた。それを喜んで見た少年たちが、
「これはヤツらが反乱した話だろ?……それが今じゃ侵略者だ」
なんて話をしていた。
 どんな映画か見たかったヤツなので、思いがけなく見られて大喜び。本筋にまったく関係ないけど(笑)。制作年も制作年だし、スターリンやヒトラーが出ているようなので「ベルリン陥落」と同じ匂いがするけど、見てみなきゃどの程度イッちゃってるのかわからないしね。モノクロだし、日本でDVD化されることはないのかな。ちらっと出てる爆撃シーンだけでもちゅどーんと迫力あるんだけどなぁ……。どうにかならんのか>彩プロ、アルバトロス or IVC!

ハンガリー動乱関連の映画→「君の涙ドナウに流れ ハンガリー1956

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2009年3月 2日 (月)

映画「怒りの戦場 CODE:PIRANHA」

怒りの戦場 CODE:PIRANHA

2006年ロシア
監督:アンドレイ・カヴン
キャスト:
マズール…ヴラジーミル・マシコフ
オリガ…スヴェトラーナ・アントノヴァ
プローホル…イェヴゲーニー・ミロノフ
シニリガ…ヴィクトリヤ・イサコヴァ

 おお、これぞロシアじゃ、冒頭からロシア全開!
 原題「ピラニア狩り」。狩ってるつもりの側が次々と喰われちゃうんですね! ククク。

 プロローグで起こる1974年の秘密施設での事故の尻ぬぐいをソ連崩壊後の今になってやらなければならなくなった。と、いうのも、国境の変更でこの周辺が中国領になることになったからだ。その任務に抜擢されたのがキリル・マズール海軍大佐。もう20年も特殊部隊で働き、今は教官をしている。
 施設の処理をするのために彼の上司として一緒に行くことになった化学生物学者のオリガ・フメリニツカヤは結構ドジっ娘で、いきなりシャツのボタンをはめ忘れて登場。胸の谷間どころかブラジャーが丸見えである。

 こういう始まり方だし、敵のボス(プローホル)がボレロに合わせてフェンシングをしてたり、彼の女が雌豹のような凶暴な美女だったり、よくあるストーリィかと思えば、そこはロシア。良い意味で期待を裏切ってはちゃはちゃになっていく(笑)。

 そもそも始めっから、ああいう生物化学兵器を扱ってるヤバイ極秘施設に研究者の息子とはいえ子供が易々入って行けるわけないだろ、と突っ込むなかれ。ロシアだと充分ありそうなので困る。そのせいで事故が起り、しかも全てのタンパク質を分解するような危険な生物化学兵器が漏れたとわかっているのに、その危険を一番わかっているはずの女性研究者が、中の仲間を放っておけずに隔離壁を開けてしまうのもロシア的だなぁ、と思う。

 さて、無事に施設を爆破してマズールが気がつくと、変な連中につかまって馬に積まれて妙な村に連れて行かれてしまった。そこは服装から生活のありようから全てが奇妙で、
「指三本で十字を切るようになっちゃあ、ロシアもおしまいだ!」
なんて言ってるヤツもいる。ラスコーリニキ(分離派、古儀式派)かよ。爆破の衝撃でタイムスリップ? はたまた革命前から人里離れて暮らしてきた隠れ里みたいな所? などと妄想しているうちに、ゲームが始まる。マズールら捕虜をわざと逃がして狩って遊ぼうというのだ。

 敵のボス・プローホルが日本の漫画やアニメに出てくる敵役のロシア人そのもので見ていて微笑ましい気持ちになった。プラチナブロンドで筋肉隆々でクラシック音楽を聴きながら無感情に人を殺す。キザですね(笑)。
 プローホルは40歳くらいのはずなんだが、日本刀を振り回すアニメっぽい絵柄のゲームやってるのはロシア人が見て普通なのかな? まぁ、ゲームはやめろと言われてるけど。

 黒すぎるブラックジョークとか、口琴をしている隣でチェブラーシカの歌を口ずさんでいたりとか、怪獣のようなおばさん(←強い)が出てきたりとか、ごたまぜ感がロシアロシアしててよかった。正直、「指を三本…」の辺りでいったいどうなってしまうのかと呆然としたが、結局はテーマの中に収まってるのな。何かその辺りもロシアだなー、と。

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2009年3月 1日 (日)

映画「モスクワゼロ」

モスクワ・ゼロ [DVD]

2006年アメリカ/スペイン/UK
監督:マリア・リドン
キャスト:
オーウェン…ヴィンセント・ギャロ
リューバ…オクサーナ・アキニシナ
アンドレイ…ヴァル・キルマー

 モスクワの地下を縦横無尽に走る地下道は地獄に通じている通路がある。地下で生活しているホームレスたちもその先には行かないが、時々消え失せる者もいて悪魔が連れ去ったのだと噂されている。

 という都市伝説(?)に魅せられて消息不明になった友人を捜してアメリカ人のオーウェンが地下の河を渡り「地獄」に潜る。案内人が次々と消え、生命の危険を感じ始めて引き返そうとすると、地上に通じる通路は何者かに閉鎖されていた。オーウェンたちは地上に戻れるのか? 友人は探し出せるのか?

 …というホラーなんだが、そんなに恐くはない。キリスト教信じてないんで「悪魔」とか言われてもちっとも恐くない。ま、ネタバレしちゃうと、悪魔って相対的なものだよねって現代的解釈の話ではある。
 地下の雰囲気を楽しめればいいのだが、モスクワの地下といえば地下鉄が思い浮かんで、結構深いところにあるアレを掘るときにこんなの無傷なワケないよな、とか
むしろクレムリンからモスクワの外に出る地下道があるとかいう都市伝説の方が有名だよな、とか
ロシア人だったら地下に潜るよりシベリアのタイガの中に人知れず村でも作るんじゃね?とか
アキニシナ出てるけど、出てるだけじゃん?とか
の点でロシアっぽくなくてロシア好きには食い足りなそう。カッパドキアの伝説を現代に置き換えたような話で、むしろスパニッシュホラーっぽい。舞台をモスクワにしている意味があまりない気がする。だってさ、モスクワにカタコンベみたいなのあったっけ? 世界的に有名なカタコンベのある都市を舞台にした方がリアリティある気がするんだが。まぁ、骸骨が一面に整然と並んでいるのが恐いっていうのは日本人的感覚であって、ヨーロッパ人には恐くないのかも知れないけど。
 こういう感覚の違いはおもしろい。何が恐いかって動物の本能的なところから出てきているようで実はそうじゃない。


オクサーナ・アキニシナの出ている映画:
ウルフハウンド
ミッション・イン・モスクワ

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