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2009年4月18日 (土)

映画「赤壁 レッドクリフ part II ―未来への最終決戦―」

レッドクリフpart II ―未来への最終決戦―

2009年中国
監督:ジョン・ウー(呉宇森)
キャスト:
周瑜…トニー・レオン
諸葛亮…金城武
曹操…チャン・フォンイー
孫権…チャン・チェン
尚香…ヴィッキー・チャオ
趙雲…フー・ジュン
甘興…中村獅童
小喬…リン・チーリン

 おもしろかったよ! ジョン・ウーらしくて!!
 火攻めがしたくてこの挿話を選んだんじゃないかって思うくらい気持ちよく爆裂してくれました。

 まぁ、曹操軍が硫黄、孫権軍が魚油を使ってる事になってる割にはいろいろ炸裂しまくってて、硫黄ってもっといやらしい燃え方するんじゃなかったかな、とか爆発するアブラってガソリンくらいだよな、という思いが頭の片隅に浮かばないでもなかったが、そういう事に拘りたいならこの監督起用しないわな。
 なかなか複雑な話のはずだが前知識なくてもすごくわかりやすく、さすがにうまい(手慣れてる)な、と思った。その分、真の三国志ファンにはいろいろ言いたいことがありそうだ(笑)。

 第1部でなんだよ、結局変態コスプレ親父の妄想かよ、という終わり方をしたのでどうなることかと思ったが、曹操がとても格好良く、一兵卒として仕えるならこいつの方が良い、と思ってしまった。だって劉備や孫権存在感なしで、どの点が人々に慕われるのかまったくわからない。民のためになんちゃら~という話しはしばしばするが、「民のために」「国民のために」というヤツの「民」なんていわば「民(脳内)」であってリアルな民のことなんてわかっちゃいない事が多いからな。口先だけで言われても説得力はないねぇ。
 そんなわけで曹操がそれほどひどい暴君に見えなくなってるところでもあり、双方が間諜を放って情報収集をしているのに、曹操だけが周瑜の策略に引っかかったような描き方は少しかわいそうに思った。情報なんて集めれば集めるほど正反対の情報が同じような信用度で入ってくるもの。「情報ほどあてにならないものはない」って言うじゃないか。周瑜の得たのが良い情報ばかりってのがリアリティがぁ……まぁそんなもの最初から求めてないから良いんだけどね。ただちょっとかわいそうかなって。

 甘興がまたおいしいところをもっていってて、火炎瓶っぽいものの試作段階で思ったより火力が強くてぬおってなる役(わりとお約束)をやってた。
 あと、槍ぐさーっと刺さって逆側から引っこ抜いて貫通~ってのも、チャン・チェの「水滸伝」のシーンを思い出して一人でウケてしまった。↑のもいわばセルフパロディだけど。

関連作品→「赤壁 レッドクリフ part I」「男たちの挽歌II

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2009年4月11日 (土)

ドキュメンタリー「スターリンについて知っているいくつかのこと」

Stalinスターリンについて知っているいくつかのこと

2003年ロシア
監督・ディレクター:ヴァシーリィ・ピチュル




 「民族」というものには学者の間にも共通の定義がないそうだが、そういう中でも必ずスターリンによる定義「言語、地域、経済生活、および文化の共通性のうちにあらわれる心理状態」は引き合いに出される。批判や反対意見も多いようだけれども、今でもたたき台として使えるというのはなかなかすごいことじゃないかと思う。

 そういうわけで、「スターリンは悪」と決めつけて評価終わりにしている人を見ると、そうなんだろうかと疑問に思わずにはいられない。それって、「スターリンは神」というのと同じくらい間違っているんじゃないだろうか。

 2003年はスターリン没後50年だったためか、あの現象は何だったんだろうということでスターリンについての映画やドキュメンタリーが各国でいくつか制作されたようだ。これはロシア国営テレビ制作のもの。

 国民総懺悔みたいなソ連崩壊後の茫然自失からようやく立ち直り、精神的にも経済的にも落ち着いてきて良いことも悪いこともそのまま受け止めようというロシアの余裕のようなものが感じられる。
 スターリン時代のことを知ってる人も少なくなって客観的に見ることができるようになってきた反面、個人崇拝や自国民の大量虐殺を取り上げてスターリンは悪の元凶だと決めつけるか、ドイツへの勝利やソ連を超大国に引き上げた功績を評価して偉大な指導者だと褒めそやすか両極端になりがちなのもよく知らないからじゃないだろうか。どっちかじゃないだろう。人って善か悪かの二つに一つに分けられるほど単純ではない。

 全体の印象としては「鉄の男スターリン」もずいぶん優しい感じになっている。それは、肉親らスターリンの身近にいた人たちのインタビューが主となっているためだろう。スターリンを好きな人たちの証言である。近くにいてスターリンを嫌いな人たちは生きてないよ、とも言えるが、娘や孫には甘い父もしくは祖父で周囲のプレッシャーも比較的弱かったというのは納得できる話だ。二人の息子は、「偉大な」父が何を望んでいるのかわからず戸惑い萎縮して、結局、父より先にあまり良くない形で人生を終えている。

 スターリンが革命の時不在だったのはナジェージダ・アリルーエヴァを口説いていたからだ、というのは単なるアネクドートだと思っていたが、本当の話だとは。微笑ましいエピソードではある。ところが、のちにナジェージダは鬱病のためピストルで自殺してしまう。娘のスヴェトラーナが成人して母の死の真相を話さねばならなくなった時、
「こんな父を見たくはなかった」
と言わせるほど後々まで引きずっていたという。だからといって、他の女性を愛する事を妨げないのだけれど。
 当時、ナジェージダの死は病死と公式発表されたらしく、それがソ連らしいスキャンダル隠蔽体質の好例とされ、果てはスターリンが射殺したのだという陰謀説を生んだことは現在の我々も知っているとおり。家族の受けた衝撃の大きさを思うと、本当のことが言えなかったのもしかたなかったのかもしれない。公人だからこういうことはありのままに公表すべきなのだろうが、他人が好奇心で遺族の心の傷口に手を突っ込んでまさぐるような事をしてもいいのか、という気持ちもある。

 第3部では、映画「ベルリン陥落」のラストシーンが印象的に使われている。取りようによっては大変な皮肉なんだが、実は「ベルリン陥落」って無意識のうちに真実がにじみ出てる深い映画だったんじゃないかという気がして、もう一度見たくなった。
 「ベルリン陥落」のラストシーンでは群衆がわぁっと歓声を上げてスターリンに駆け寄る。
 それは、スターリン時代とはまさにこういう時代だったのだ、ということを象徴的に表しているように思える。

Semenovs_footnotes

 スターリンをめぐる人たち……粛正の犠牲になった政治家や軍人にもひととおりの言及はある。トゥハチェフスキーやトロツキー等々ですね。ああ、そうだよな、と思える解釈だった。スターリンの犠牲になったからといって善人じゃないんだよ。例えば、トロツキーが政権を取ってたらソ連はもっと人間的な国になっていたかと言えばそんなことはない。
 トロツキーといえば、トロツキーの演説上手はヒトラーもお手本にするぐらいだったとか。比較のためにトロツキーとヒトラーの演説シーンが並べられていて、あまりにもソックリで驚いた。同じ文化圏に属していて非言語コミュニケーションの部分は共通しているのだろうが、それにしても似てる。それだけヒトラーが勉強家で良いものは貪欲に取り入れたって事なんだろうか。
 あと笑ってしまったのは、ベリヤが言ったというセリフにピー音が入ってる事とか。なんだよ、思ってたとおりのヤツじゃん。また、スターリンの臨終にはスースロフが文字通り駆けつけたとか。この人、こんな時代からいたんだ。妖怪だってのは本当の話だったんだな。

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2009年4月 2日 (木)

映画「タンカー・アタック」

タンカー・アタック [DVD]

2006年ロシア
監督:バフチヤル・フドイナザロフ
キャスト:
アンドレイ・グレコフ…デニス・ニキフォロフ
アンナ…イェカテリーナ・グセヴァ
ドミートリィ・トレズニャク…マラート・バシャロフ
イネッサ…ラリサ・グゼーエヴァ
ピョートル…アレクセイ・グスィコフ

 あれ? ソ連映画? と思って制作年を見直してしまった。
 ルクオイルが新たに開発した油井の海上プラットホームにグリーンピースがいて、
「あなたの味方、グリーンピース!」←どこが!
等々ラブリーにアピールしている辺りはどう見てもロシアなんだが、絵柄といい登場人物の見苦しいほど情けない人間っぷりといい絶対に何か(RPGとか)本当に撃ってるだろ、という爆発具合といいソ連臭い。もちろんいい意味で(笑)。
 だってさ、装甲車(BRDM-2?)実物大炎上だよな。水陸両用の装甲車があんなに速く水上を移動できるなんて知らなかった。おまけ機能じゃなかったのね~。当然のように海に入って行ったところがすごく格好いい。しかも船に追いついてるじゃん。

 ラブコメのくせに戦闘シーンが随分と本格的なんだよなぁ。ラブコメ要素とアクション要素で二度おいしいと見るか、合わね~、と見るかは微妙なところ。

 1998年のできごととなっているのがまた興味深い。
 主人公のグレコフがタンカーとは名ばかりのボロ船で軍の物資を横流しするようなあやしげなビジネスをしてるのも1990年代はなんでもありなアナーキーな時代だったから大いにあり得るし許されるって感じなんだろうか。そんなことしてるから、巻き込まれるんだけど。

 でもまぁ、グレコフも恋が成就してあやしげなビジネスから足を洗えたあたり、ロシアも今世紀に入って全体として地に足が着いてきたから、こういう感じの映画が撮れたのかなぁ、とも思った。そうだと良いな。

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2009年4月 1日 (水)

映画「ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝」

ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝

2008年ドイツ/アメリカ
監督: ロブ・コーエン
キャスト:
リック…ブレンダン・フレイザー
皇帝…ジェット・リー

 まぁ、舞台が寧夏なんで。
 古代のシーンでお団子ピラミッドみたいなのの麓に家が固まってるのを見て、西夏文字でも書いてあるのかと旗をコマ送りで見てしまった。なんのことはない、単に「勅」って書いてあっただけだった(笑)。
 ハムナプトラなのでピラミッド様の物は不可欠なのかも知れないが、西夏廟が元は今のような姿でなかったことは、むとさんちで指摘されているとおり。

 皇帝の手下である統制の取れた兵馬俑兵士たちと万里の長城を築くために使役された挙げ句埋められた奴隷が戦って奴隷が勝利するというのは、政治的に正しいというか、イデオロギー的に正しいというか…。
 古代に車裂で殺されたはずのミン将軍が片腕取れただけの姿で蘇っているのを見て、
「あー、いっせいに引っ張っても力は均等にかからないからだな~」
なんて思った。いやいやそうじゃないだろたぶん(そこまで考えてないだけだろう)。

 シャングリーラーまで出てくるし。それってチベットじゃないの? もしくは雲南とか。
 しかも皇帝は三頭の竜になっちゃうんだよ。暴君ザッハークか。そっちはペルシャじゃん。
 中国じゃないネタの方が多いような…。

 ネコっぽい顔のイエティはかわいい。ひょっとしてイエティ=ユキヒョウ説が影響している?(笑)

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