映画「レッド・ウォリアー」
2005年フランス/カザフスタン
監督:イヴァン・パッセル/セルゲイ・ボドロフ
キャスト:
マンスール…クノ・ベッカー
エラリ…ジェイ・ヘルナンデス
賢者オラズ…ジェイソン・スコット・リー
ガルダンツェリン…ドスハン・ジョルジャクスィノフ
ガウハル…アヤナト・クセンバイ
シャリシュ…マーク・ダカスコス
18世紀。
オイラトのジューン・ガルがカザフをたびたび攻撃した。そのころ、カザフは大きく三つの集団(ジュズ)、無数の部族に分裂しお互い協力するという事をしなかったため、アクタバン・シュブルンドゥ(跣足の逃走)と呼ばれる災厄に耐えるしかなかった。
賢者オラズは、
「いつかチンギスハンの末裔の勇者が現れ、カザフを束ねて外敵を退ける」
という伝説を信じ、未来のカザフの救世主を探して諸国を渡り歩いている。
ある日、オラズが先祖の記念碑である草原の石人に祈っていると、天啓によってその勇者が生まれたことを知る。しかし、ジューン・ガルの巫師もそれを感知していた。ジューン・ガルのハーン・ガルダンツェリンはその赤子を殺そうと刺客を差し向ける…。
壮大な山々を遠景に美しいカザフスタンの草原を勇者の卵たちが裸馬に乗って疾駆する。
ジューン・ガルは既に砲兵部隊を持っていてカザフ側の要塞を砲撃するんだが、カザフ側はモロトフ・カクテル(?)で反撃、大爆発するシーンは圧巻。お約束の車裂もモロ。フレッシュな枝肉のようにぷるるん、と足が躍動。これだけあっけらかんと千切られちゃうとグロくはないのだけれど、これ見ると、「モンゴル」はあれでも相当抑えた表現になってたんだぁ、と思ってしまう。
ジューン・ガルのガルダンツェリンがオルタ・ジュズ(中オルダ)のアブライを捕らえて2年近く捕虜にしていたという史実から生まれた民話、もしくは英雄叙事詩といった趣きの物語。
カザフ人自身がカザフという「民族」のアイデンティティーをどの辺りに置いているのかと実感できる点でも興味深い映画だ。原題の「NOMAD: The Warrior」もあんまり適切じゃない気がする。むしろ「カザフ」という名の原義「ハーンの支配の枠から離れた民」「放浪者」を邦題にした方が良いような気がする。そうするとガルダンツェリンが賢者オラズのことを「カザフ」と呼ぶのも生きてくる。でも、それじゃあその筋の人しかぴんとこなくなっちゃうのかもしれないな。
こんな感じでカザフスタンの国策映画っぽい内容なのに、主役級の人たちがどう頑張ってみてもアメリカ人にしか見えない(クノ・ベッカーはメキシコの人らしいけど)のがとても不思議だった。
ひょっとすると、「ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習」に大いに憤慨したカザフスタンが、
「正しいカザフとはこうだッ!!!」
とアメリカ人に教え諭すために、アメリカ人にも受け入れ易い顔の人を起用したって事なのかな。
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