映画「提督の戦艦」
2008年ロシア
監督:アンドレイ・クラフチュク
キャスト:
アレクサンドル・コルチャーク…コンスタンチン・ハベンスキー
アンナ・チミリョーヴァ…エリザヴェータ・ボヤルスカヤ
セルゲイ・チミリョーフ…ヴラジスラフ・ヴェトロフ
ソフィア・コルチャーク…アンナ・コヴァリチュク
カッペル将軍…セルゲイ・ベズルーコフ
ケレンスキー…ヴィクトル・ヴェルジビツキー
セルゲイ・フョードロヴィチ監督…フョードル・ボンダルチュク
1916年、第一次世界大戦中のバルト海。
機雷施設作業を終えたコルチャークの船は、ドイツの戦艦フリードリヒ・カールに遭遇。
「210ミリの大砲か。こっちは45ミリだぜ」
誰かがつぶやく。その言葉が終わるか終わらないうちに砲撃が始まり、船上はたちまちズダボロの人体の散乱する地獄と化す。コルチャークは自ら水兵の死体の折り重なる中を進んで照準を定め、ドイツの戦艦に一矢報いることができた。
思わぬ反撃にひるんだ敵の隙をつき、進路を機雷原に向けさせるコルチャーク…。
この冒頭の海戦シーンはかなりの迫力で、人間が生身で近代兵器に対したときの凄惨さをディテールにこだわって描いている。にもかかわらず、なぜかリアリティーに欠けるような印象がぬぐえなかった。それは、コルチャークの活躍も結局の所、アンナの夫からの伝聞に過ぎないという設定だとすれば納得がいく。海戦メインの戦争もののようなオープニング・タイトル、エンド・クレジットだが、本当は恋愛ものなんだろう。コルチャークが線が細過ぎやしないかと思えるくらいやさ男なのも女性向けっぽい。
コルチャークを主人公として考えると、本妻と息子はパリに逃がして己の遺伝子は安全な所で生き延び、自分は最後の時を好きな女と過ごすって……。これ以上幸せな生涯があろうか。さぞ本望だったろうよ。だいたいこいつが演説をしていると感動した歴戦の兵士が感極まって跪くシーンがあるが、どこが感動するかわからん。だいたいコルチャーク、神頼みしすぎだ。
でも、アンナが主人公と考えると、「信仰と希望と愛はいつまでも残る。そのなかで、最も偉大なものこそ愛である」というパウロの言葉を忠実に映像化したのだな、という感じで「……夢のまた夢」という終わり方もなにかしら心に残るものがある。それでも、海戦で一般の水兵が手足がちぎれたり血まみれで戦ってる一方で、貴族の奥さんのアンナはのうのうと風呂入ったり、あなたにお手紙書くためにモールス信号勉強したのよ~とか、あまりにも酷い。そりゃあ革命も起こるだろうよ。
ところで、シメのシーンで皮肉られてるセルゲイ・フョードロヴィチ監督ってボンダルチュク? あれは『戦争と平和』の撮影シーンかな?
と、するとこの映画にはひとひねりあって、隠しテーマでもあるのか、と勘ぐりたくもなる。…お遊びかもしれないが(セルゲイ・ボンダルチュクの息子が演じているしね)。
アンドレイ・クラフチュク監督の映画→「この道は母へとつづく」
コンスタンチン・ハベンスキーの出演している映画→「ナイト・ウォッチ」「デイ・ウォッチ」「ウォンテッド」
おまけ:
セルゲイ・ボンダルチュク監督の映画→「戦争と平和」「人間の運命」「バトル・フォー・スターリングラード(祖国のために)」
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