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2010年4月23日 (金)

映画「ウイグルから来た少年」

ウイグルから来た少年

2008年日本/ロシア/カザフスタン
監督:佐野伸寿
キャスト:
アユブ…ラスール・ウルミャロフ
カエサル…カエサル・ドイセハノフ
マーシャ…アナスタシア・ビルツォーバ

 中国の新疆ウイグル自治区からカザフスタンに一人で逃れてきたアユブがテロ組織に売られて……と架空のストーリィなのだが、正直、今ひとつピンと来ないし、リアリティーが全くない。

 そもそも、アユブが自分の命を自爆テロに捧げる動機が全くわからない。テロ組織に売られたにしても、だ。その辺で「?」となってしまったので、感情移入が全くできなかった。だいたい、なぜ5月9日にアルマトィで自爆テロなのか? 11月12日に、あるいは8月25日辺りにロシアでやるっていうならわからなくもないが、カザフスタンで5月9日って、全く意味不明。カザフスタンの5月9日の祭日って、対独戦勝記念日で休みなんじゃなかったっけ? この監督さん、カザフにも暮らしたことがあるようだし、この辺の歴史に詳しいのなら、テロリストがその日をテロのターゲットにした意味を映画の中に盛り込んでおいてくれると良かった。何しろ、観客であるこちらはこの辺の歴史を詳しく知っているわけでもないので。
 それにしても、ウイグル人の非暴力主義を訴えたいのなら、現在のウイグル人を7世紀モンゴル高原の遊牧ウィグルに結びつけるのはやめたらどうか。そもそも名前が同じだけで血から見ても文化・伝統から見ても継承関係は全くないのだから。

 それで、アユブはそんな「かわいそうな」ウイグル人で、カエサルは怪しげな外国人と援助交際しているカザフ人不良少年、マーシャは売春婦で「かわいそうな」ロシア人の少女なんだが、なんかこれも妄想の産物というか、妄想といって悪ければ理念的で
「ほら、これがかわいそうな子供たちだよ~」
って感じ。さあ同情しろ、とでも言いたいのか。
 妄想といえば、スクール水着の少女が平泳ぎで泳いでいるシーンなんか妄想全開。あんなに髪長い子が帽子もかぶらず束ねもせず泳いだらホラーだろうが。実際、プールであんな風に泳いでいるの見たら汚いだけだぞ。妄想の中では、長い金色の髪が水にたなびいて美しいだろうなあって思うんだろうけれども、水に濡れたら金髪だって暗色になってほぼ貞子だよ。
 マーシャの夢の中の話だから妄想でOKって事かもしれないが、マーシャは自分の泳いでいる姿を下後方から見上げるような映像で想像しないと思う。カメラ、食い入るように股間を追ってるもんな~。それ、少女(マーシャ)の目線じゃないだろうよ。

 とはいえ、映画冒頭のウイグル文化センター議長のお話やおまけの「カザフスタンのウイグル人(公式サイト上からも見ることができる)」は情報の少ない地域のことなのでためになった。
 欲を言えば、「カザフスタンのウィグル人」はせっかくカザフ政府の公式見解のような内容なのだから、カザフ側の考える「カザフ」と「ウィグル」の違いを我々門外漢にわかるように説明してくれると良かった。今はもちろん別の民族とみなされるのだろうが、ソ連邦が結成されて「カザフ人」という民族が形作られていく以前の姿を想像するに、生業の違い(遊牧と農耕といったような)以外にカザフとウィグルの違いって何?ってよくわからないものだから。
(タジクとウズベクの違いのようなもんか?)
 その辺りの帰属意識の違いがわかると、東トルキスタン共和国を建国しようとして共闘しつつも解け合うことのなかったウィグルとカザフの間の心の機微を現代の我々が自分のことのように感じる助けともなりそうなのだが。

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2010年4月17日 (土)

映画「ミッション:アルティメット」

ミッション:アルティメット

2008年ロシア
監督:オレグ・ポゴジン
キャスト:
クレムニョーフ…ヴラジーミル・エピファンツェフ
シェーリング…セルゲイ・アスタホフ
ナジェージダ…オリガ・ファジェーエヴァ
リャミン将軍…ヴラジーミル・スチェクロフ
ロコトフ将軍…ユーリィ・ソローミン

 クレムニョーフは数カ国語を操り、どんな困難な状況に置かれても必ず切り抜ける「無敵の」(←この映画の原題)男。今回の任務は、石油会社の社長にして大富豪のソーキンの悪事の証拠を握るシェーリングを捕まえてロシアに無事に送ること。

 話はシンプル。それだけのことだが、べらべらしゃべりまくるくせに本心は見せないシェーリングと強いけど愚直なクレムニョーフ(意志の強いとか頑固な、という意味の名前)のやりとりがおかしい。クレムニョーフは七つ道具が入っているスーツケースを置き引きされたり、銃を向けられたら反射的に撃っちゃったり、ちょっと間抜けっぽい。でも結構かわい気がある。

 クレムニョーフ対いろんな敵との戦闘(主に銃撃戦)シーンすごいなぁ。これはかなりぐっとくる。
 特に良いのがナジェージダ役の人。アクション映画でも、容姿を優先して選ばれるのか、動きについてはうーーーん、仕方ないかぁ……ってあきらめなきゃならないのかと思ってたけど、そんなことはなかった。説得力ある。これなら荒くれギャング何人相手にしても勝つわ。
「ハー!」
って気合いも決まってる。美女は単に花を添えるだけじゃないぞ~。

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2010年4月16日 (金)

もうすぐ封切り(ロシアで)映画「ヤクザガール(仮題)」

ヤクザガール(原題「Дочь якудзы(ヤクザの娘)」)

2010年ロシア
監督・制作:セルゲイ・ボドロフ/グーカ・オマロヴァ
キャスト:
ユリコ…荒川ちか
リョーハ…ヴァジム・ドロフェーエフ
アントンおじさん…セルゲイ・ガルマシ
マルファおばさん…イリーナ・ロザノヴァ
 その他に、六平直政、ヴィクトル・スホルコフ、アンナ・ミハルコヴァ、新井浩文など

 ユリコの父、山田はヤクザ。かわいい娘のことが心配で鉄壁の警備態勢を敷いている。ユリコには昼も夜も学校に行くときもボディーガードがついているのだ。
 そんなあるとき。山田にちょっとまずいことが起こった。ユリコをローマに避難させようとボディーガードとともに飛行機に乗せたのだが、飛行機はロシア南部に着陸する羽目に。ボディーガードもいなくなってしまい、見知らぬ国に一人取り残された10歳の少女ユリコ。

 しかし、ユリコはヤクザの娘。困難にぶちあたっても切り抜けていくパワーを持っているのだぁ!

 ……というような話らしい。
 だってまだ公開されてないし、公式サイトもないみたいだし、IMDbにも載ってないから詳しいことはわからない。
 ロシアの無軌道な若者リョーハの命を助けた事から、ユリコに「義理」ができ……みたいなことが書いてあって、「義理」をどういう風に解釈してるのか気になる。「モンゴル」のアンダ(ロシア語では「義兄弟」って表現することがある)とか、そういうのにボドロフ監督が関心があるとか、ロシアで受けが良いとかそういう事なのかな?

 ポスターをぱっと見たとき、主役の女の子が大人びて見えたので酒井法子みたいな感じの話で(なんだそりゃ)、コメディってラブコメかな?と思ったけど、荒川ちかブログみたら、10歳だって! 子供じゃないか~~~。というわけで、撮影風景ではユリコが空飛んだり、おばさんが機関銃ぶっぱなしたり、どかんと爆発したり、普通にコメディ?
 むしろ、「怒りの戦場 CODE:PIRANHA」「72M」にも出てるセルゲイ・ガルマシ、「ロシアン・ブラザー」「レッド・ガントレッド(アンティキラー)」のヴィクトル・スホルコフといった顔ぶれを見ると、アクション?って気もする。

 ロシアのアクション、犯罪映画には定評があるからDVDは発売されるだろうが、劇場公開はされるのか~?

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