« 2010年7月 | トップページ | 2010年9月 »

2010年8月29日 (日)

映画「インプリズン」

インプリズン KGBが遺した罠 [DVD]

2010年ロシア
監督:オレーク・アサドリン
キャスト:
ユーリャ…タチヤーナ・コスマチェヴァ
サーシャ…チモフェイ・カラタエフ
ジェーニャ…アレクセイ・ヴォロビヨフ
イーラ…レナタ・ピオトロフスキ
ロマン…ピョートル・トマシェフスキー
ヴィーカ…アグニヤ・クズネツォヴァ
マイク…ピョートル・フョードロフ

 「妖婆・死棺の呪い(ヴィイ)」はホラーというより昔話だし、「ドウエル教授の首」はホラーというよりSFだし……等々、日本でホラーといって思い浮かぶような系統のホラーをソビエト・ロシア映画で見たことないような気がするので、ホラーっぽいプロットに興味津々。心霊ものなのかな? 今も生き残るスターリン時代の遺物なのかな?
……その辺は見てのお楽しみ。

 原題の「フォボス」はクラブの名だけれども、言わずと知れた恐怖の神。実はこのクラブ、古い核シェルター(表向きは)を改装したものなのだが、どういう由来なのか正確に知っている者はいない。結婚式をこのクラブでやろうと計画しているユーリャとジャーニャの他に、スターリンなんか知ってるのかなぁ?という感じの現代の若者7人が誤ってシェルターの中に閉じこめられてしまう事から恐怖のどん底に…。

 とはいっても、どうやら各人の恐いと思っているモノで責められている様子で、映画を見ている側も、映画の中の人も本人以外はそんなに恐くはない。
「みんながそれぞれ持っている恐怖を克服しなければ、ここから出られないのよ!」
なんて展開に至っては、しかも、恐いものは「恋愛」なんて人がいたりするともう青春映画になっちゃったかと(笑)。

 日本だったら、心霊スポットを探検に行った若い七人が次々と…といった話に当たるんだろうけど、こういう、極秘の(実は呪われた)施設に迷い込んじゃってどうにかなるという話はどこにでもあるんだなぁ。日本でもまだ731部隊がホラー映画のネタに使われるくらいだから、スターリン時代に不幸な死を遂げた人の怨霊は、まだまだ生きているんだろう。

……とはいえ、一番びっくりしたところは、モスフィルムがホラーを作ってるんだ!とかプロデューサーがフョードル・ボンダルチュク(「提督の戦艦」でセルゲイ・フョードロヴィチ監督役やってた人)じゃないか!といった方面だったりして。

続きを読む "映画「インプリズン」"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年8月21日 (土)

映画「エルミタージュ幻想」

エルミタージュ幻想
Hermitage_22002年ロシア/ドイツ/日本
監督:アレクサンドル・ソクーロフ
キャスト:
黒服の異邦人:セルゲイ・ドレイデン
エカテリーナ大帝:マリア・クズネツォヴァ



 歴史好きがその現場を訪れてみたいというのは、まさにこの映画のような事なのかもしれない。

 私だったら、
「むぅ、ここがあの事件の現場かぁ……」
としみじみする程度だが、絵を描く人や、それこそ映画監督ならディテールまで鮮明に見えているのかもしれないな。まさにそういう人の目に映った物を映像化したような映画だ。
 その場所に刻まれた記憶が、その場に立ったことによって再生されるように、エルミタージュを訪れた主人公(=ソクーロフ監督自身)の前に展開される。しかし、彼はその中に入り込んでしまったわけではなく、再生されている幻影を見ているに過ぎないことはわかっている。
「かかわるまい……どうせ手遅れだ。史実なのだから」

 でもまぁ、「史実」とはいっても、彼が感じ得た歴史の事実なので、客観的な史実ってわけでもないみたいだ。エルミタージュに展示されている絵などの美術品の表現している真実なんてものも混じっている。
 もう一人の登場人物、黒服の男はヨーロッパを擬人化したものらしいけれども、むしろ「ヘタリア」に出てくる某国みたい。ふらーりふらーり、すぐどこかに行ってしまい、気がつくと女の人にちょっかいを出していたり、抱きついたり、つまみ出されたり。
 自分の好きな物(陶器や絵や女性)にはまっしぐらだけれども、嫌いな物にはしつこくからみ、突然、
「うなぁあ!」
と威嚇したりして、猫みたいでもある。リアルなヨーロッパというよりは、戯画化されたイメージだな(←それってまさにヘタリアじゃん)。あるいは、監督のイメージするヨーロッパの擬人化か。ヨーロッパにあこがれ、無人の沼地にいきなり「ヨーロッパの窓(=サンクト・ペテルブルグ)」を創ってまでヨーロッパの文物を取り入れようとしたロシアのイメージしたヨーロッパかもしれないな。
 しかし、そうまでして取り込んだロシアの中のヨーロッパなのに、場に刻み込まれた記憶の中の人にも、ソクーロフの友人や普通の入館者など現世の人たちにも煙たがられたり、怒られたりと余計者扱い。確かに、
「カトリックを知らないのに、あなたに未来がわかるのか!」
とからんでくる面倒くさい人ではあるが、ちょっとかわいそう。

 もっとも、ロシアやロシア人……我々といっても良い……が追いつき追い越す目標であったヨーロッパも、実際には未来を知っているわけではなく、指針・規範とすべき何かを持ってはいなかった。ヨーロッパの人々も人間なんだから当たり前といえば当たり前なんだけど、その当たり前のことに気づいても、人は前へ、混沌の未来へ進んでいかなければならない。キリスト教はこの世に終末があると説くが、未来の混沌の海には果てがない。
 ひょっとしたら、この混沌の海は、原初の混沌と同じものかもしれないな。それからすれば、いまエルミタージュで見てきた数百年の歴史なんて小舟のような物なんだろう。

ソクーロフ監督作品→「太陽

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年8月 9日 (月)

映画「アーマード・ソルジャー」

アーマード・ソルジャー [DVD]

2007年ロシア
監督:アントン・メゲルジチェフ
キャスト:
アルチョーム・コルチン…デニス・ニキフォロフ
ヴィーカ…エレーナ・パノヴァ
ヴァリエフ…アンドレイ・パーニン
フェリクス・メンデス…ヴィクトル・ロペス
ネチャーエフ…ドミートリィ・シェフチェンコ
マイケル…ミハイル・ゴレヴォイ
ジュリア…イェカテリーナ・マリコヴァ

 これ、「シャドー・ボクシング2 リベンジ」っていうんですね。またいきなり続編かー。選んでる訳じゃないんだが。
 前作がわからなくても、全編CMかイメージ映像、またはPVみたいなツクリなので全然困らない。ストーリィもちょっと昔のアメリカ映画のような、今から見るとつっこみどころ満載で無理があるって感じだけれども、軽~いのりでテンポ良く見るには良いんじゃないですかね。

 いや~、だってあり得ないでしょう。
 現役引退して5年も経ってる主人公アルチョームが、すばらしい強さで復活して世界チャンピオンに再び挑むことになって試合日も決まっているのに、同じジムの若者を殴り殺してしまう。これが麻薬密売組織のボス・メンデスの一人息子で、怒り狂ったメンデスの報復で恋人ヴィーカを誘拐されてしまうんだが、蛇の道は蛇つー事で昔の悪い因縁を頼ってロシアン・マフィアのボス、ヴァリエフに助けを求めてロシアに飛ぶ。ヴァリエフは服役中なんでロシアの警察に捕まったり、ヴァリエフと殴り合い、切り合いの喧嘩したり、警察の装甲車と銃撃戦したり、メンデスに捕まったりその他諸々で全然ボクシングの練習してないのに(減量はどうなった?)、世界チャンピオンに挑戦するんだよ? ←なんかネタバレも同然?(笑)。

この映画の出演者が出ている他の映画
デニス・ニキフォロフ:「アルティメットウェポン(シャドウ・ボクシング)」「タンカー・アタック」「限界戦線
ヴィクトル・ロペス :「チュパカブラ」
ミハイル・ゴレヴォイ:「デッド・オア・ウェイブ」「ミラーウォーズ」「アンティ・キラー
アンドレイ・パーニン :「限界戦線」「カンダハル」
イェカテリーナ・マリコヴァ:「ナイト・ウォッチ」「デイ・ウォッチ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2010年7月 | トップページ | 2010年9月 »