映画「インプリズン」
2010年ロシア
監督:オレーク・アサドリン
キャスト:
ユーリャ…タチヤーナ・コスマチェヴァ
サーシャ…チモフェイ・カラタエフ
ジェーニャ…アレクセイ・ヴォロビヨフ
イーラ…レナタ・ピオトロフスキ
ロマン…ピョートル・トマシェフスキー
ヴィーカ…アグニヤ・クズネツォヴァ
マイク…ピョートル・フョードロフ
「妖婆・死棺の呪い(ヴィイ)」はホラーというより昔話だし、「ドウエル教授の首」はホラーというよりSFだし……等々、日本でホラーといって思い浮かぶような系統のホラーをソビエト・ロシア映画で見たことないような気がするので、ホラーっぽいプロットに興味津々。心霊ものなのかな? 今も生き残るスターリン時代の遺物なのかな?
……その辺は見てのお楽しみ。
原題の「フォボス」はクラブの名だけれども、言わずと知れた恐怖の神。実はこのクラブ、古い核シェルター(表向きは)を改装したものなのだが、どういう由来なのか正確に知っている者はいない。結婚式をこのクラブでやろうと計画しているユーリャとジャーニャの他に、スターリンなんか知ってるのかなぁ?という感じの現代の若者7人が誤ってシェルターの中に閉じこめられてしまう事から恐怖のどん底に…。
とはいっても、どうやら各人の恐いと思っているモノで責められている様子で、映画を見ている側も、映画の中の人も本人以外はそんなに恐くはない。
「みんながそれぞれ持っている恐怖を克服しなければ、ここから出られないのよ!」
なんて展開に至っては、しかも、恐いものは「恋愛」なんて人がいたりするともう青春映画になっちゃったかと(笑)。
日本だったら、心霊スポットを探検に行った若い七人が次々と…といった話に当たるんだろうけど、こういう、極秘の(実は呪われた)施設に迷い込んじゃってどうにかなるという話はどこにでもあるんだなぁ。日本でもまだ731部隊がホラー映画のネタに使われるくらいだから、スターリン時代に不幸な死を遂げた人の怨霊は、まだまだ生きているんだろう。
……とはいえ、一番びっくりしたところは、モスフィルムがホラーを作ってるんだ!とかプロデューサーがフョードル・ボンダルチュク(「提督の戦艦」でセルゲイ・フョードロヴィチ監督役やってた人)じゃないか!といった方面だったりして。
残されている書類の日付が1953年2月って、スターリンの死の直前だね。スターリンの死の直後、施設を慌てて放棄して(ヤバイ事してた所だから)そのまま……って設定なんで、執務室にスターリンの肖像が掲げてあるんだね。
で、字幕ではその書類を発行した役所は国家保安「委員会」となってるけど、セリフではちゃんと国家保安「省(ミニスチェールストヴァ)」って言ってる。だから、
「エッ……何の省だって?」
って聞き返してるんだな。いくら現代ロシアの若者でも、KGBを知らないって事はないわな(1953年にKGBは存在しない。機関の名称の変遷は、以前に作ったタイムラインを参照)。
地下に秘密の処刑場があったり、抜け道に地雷が埋められていたり、自動的に銃が撃たれるトラップがあったりする、そっち方面だけを極めた方がリアリティあって恐くなったに違いないんだが、それだとロシアの人には生々しすぎて、娯楽にならないのかもな。
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