映画「JIGSAW ザ・リアリティショー」
2008年ロシア
監督:ヴァジム・シメリョフ
キャスト:
サーシャ…ドミートリィ・クバソフ
ヤナ…エヴゲニヤ・ヒリフスカヤ
パーシャ…アルチョーム・マズノフ
エゴール…イヴァン・ニコラエフ
アレクス…スタス・エルドレイ
リカ…カリーナ・ムィンドロフスカヤ
ヴェーラ…イェカテリーナ・コパノヴァ
ナースチャ…ヴェロニカ・イヴァシェンコ
ダーシャ…イェカテリーナ・ノシク
フョードル…スタス・シメリョフ
アリサ…アンフィサ・チェーホヴァ
プロデューサー・キリル…アレクサンドル・マカゴン
猟期的な事件が起こると、日本のようにマスコミが連日よってたかって報道するような国でも、たとえば宮崎勤事件にまつわる秘話、のような形で都市伝説じみた噂がまことしやかに語られたりする。
ましてや、チカチーロのようなシリアルキラーが何年もの間跋扈していながら一切報道されなかった旧ソ連のような社会では、その手の話は生まれやすいはずだ、と思っていた。
新番組撮影のためにオーディションで選ばれた10人の若者(サーシャ、ヤナ、パーシャ、エゴール、アレクス、リカ、ヴェーラ、ナースチャ、ダーシャ、フョードル)。ソ連時代の子供たちが夏休みなどに参加していたキャンプ施設跡地に隔離された若者たちのリアルなサバイバル・ゲーム、といった趣向の番組なのだが、リハーサルで脱落者に選ばれたフョードルが本当に頭を矢で射貫かれて死ぬ。
この事故映像が生放送で流れてしまい、放送は「技術的な理由で」打ち切られる。しかし、「撮影」は続いている。番組司会者のアリサも含め、閉鎖されたキャンプ跡地に閉じ込められてしまっていた。そして、誰もが子供の時に聞いたことがある「子供の怪談」になぞらえる形でひとり、また一人と殺されていく。実はこのキャンプ、過去に悲惨な殺人事件があったのだ。
…というホラーの王道のような話だけれども、その「子供の怪談」がとても興味深かった。
原題の「S.S.D.」というのは、「ソ連の子供たちに死を」という意味で、怪談の中の一つの中に出てくる。ソ連なんてもうないのに、その呪いのために俺ら殺されちゃうの?っていう理不尽さが何とも良い(?)雰囲気を醸し出している。キャンプの廃墟ぶりや殺人鬼のスピーカー越しの声もいい感じ。
こうしてオーソドックスなホラー本編を楽しみながら、ソ連時代でも子供たちはキャンプで消灯後、真っ暗なベッドでこういう怖い話をしあったんだろうなぁ、というのをうかがい知ることができる、一粒で二度オイシイ映画。日本でも似たような話あるぞっていうのから、いやいやそれどこが怖いの?ってのもある。いわばロシア版「学校の怪談」。
こうした怖い話は、ソ連がロシアに戻っても時代に合わせて形を変えながら言い伝えられていくんだろう。
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