「歴史魂(LEXICON)2012」着いたよ
歴史ファンによる歴史オールジャンルアンソロジー「歴史魂(LEXICON)2012」送られてきました。
透明感があってきれいな表紙ですよね。
せっかくなので、ちょろちょろっと感想を書いてみました。
※時代によって濃淡があるのは自分の知識が偏っているせいなのでお許しを。
「王ふたり」(古代エジプト)
父の日らしい父と子の絆の話。これはちょっとぐっとくる。
息子のいるお父さんにはもっとぐっとくるかも。最後のミニマンガも可笑しい。
「古代びぃえる説話」(古代日本)
おお、武内宿禰。子守もできるのかこの人は。スーパー爺さんだな。
一読して、え? これどこがBL? と思ったけど、平たく読んでみると、この状況はそれ以外に説明が付かないよなぁ。資料の読み込みが深いわ。
「女帝の世紀」(飛鳥・奈良時代)
女帝ってこんなにいるのかぁ。今後も普通に女帝OKで差し支えないように思うけどな。
女の皇帝ダメっていうのは、中国の伝統で日本の伝統じゃないもんな。
特定の時期に集中しているというのは興味深い現象だな。
「『古事記』を作った人々」(奈良時代)
編纂1300年とまったく関係なく『古事記』去年読んだので何かうれしい話題。
近所の本屋に行ってみたら『古事記』特集コーナーができてた。そういう世間のはやり廃りに疎いから、こうして取り上げてくれるのはありがたい。
「中国から見た遣唐使」(中国・隋唐/飛鳥~平安時代)
萌えって日本人の遺伝子に組み込まれてるんですねぇ。
イケメンの使い所、ワロタ。武則天はチベットの史料でも手ごわい(←敵ながら有能なって事でしょう?)女帝として描かれているし、雲南で則天文字が随分後の時代まで使われていたりと変なイデオロギーがなければ、普通に名君だと思いますが…。
ちと気になったのは安禄山の本名がアレキサンダーというのは俗説だと思います。ソグド語のルクシャン(光)ととる方が自然です。安というのは養子に行った先の姓で本姓は康であろうと考えられるので、やはり姓は姓、名は名と分けるべきでしょう。敦煌文書等に姓が安、康、史といった出身地を示す漢字で、名前が夜露死苦式の変なあて字のソグド人って結構出てきます。
「解き放たれた黒烏の翼」(中国・唐/プレ五代十国)
自分のアレなんでツッコミが入る前に自分で突っ込んでおくと、『新唐書』の記事のつじつまの合わないところを三箇所ほど勝手に直して話にしてみた。
1.吐蕃が沙陀尽忠を大論に任命したというところ。『新唐書』に「以尽忠為軍大論」とあるけど、平凡社『騎馬民族史3』p.297のように「大論はロンツェンポで、総理大臣にあたる語」と解釈するのはおかしい。あれほど位の上下にうるさい国で、沙陀の首領ごときにたとえ名目だけでも宰相に当たる肩書きをやるわけがない。じゃあ、何だということで、敦煌文書に出てくる肩書きで大論と書けそうなdgra blon chen poをあててみた。
2.沙陀を河外に遷すというところ。甘州って既に河(黄河)の外じゃん…。ということで河外→黄河の西=河西→河西と言えば河西九曲という連想でこうしてみた。
3.祁連山の東を巡ってというところは『新唐書』は「烏徳鞬山」の東となっているけど、これだとその後のルートがおかしい。そもそもウテュケン山なんて敵(ウィグル)の中の方までわざわざ入っていく意味がわからない。入唐した地点が石門→霊州なら、実際に巡っているのは祁連山だろう。2.の改変と合わせると、なんだかうまい具合に合うじゃん! 採用!
…という実にてきとうな話でした。
「古典の中の鳥たち」(平安時代)
へぇぇ、見事にみんな鳥が入ってるもんですな。
大和武尊の白鳥は有名ですが、シベリア辺りで生まれる前の人の魂は鳥の形をしている、というのと何か関連性がありそうで興味深いです。
「平家追善」(平安時代)
すごい。全部現地に行って取材してるし、すかし入り頁のデザインもかっこいい。よし、真似しよう。
「職人魂3」(イタリア・ルネサンス期)
あんちょこはずるい。でもわかりやすい。人生って皮肉なもんですなぁ。
「歪んだ鏡像」(イタリア・ルネサンス期)
出だしで脳内に555のテーマ曲が流れたのは内緒だ。
21世紀の現在でさえ、結構子が親の後を継ぐ事が当然のようにいわれててウザって思うのに、昔のプレッシャーは相当なもんだろうと。
「如水の黙示録」(戦国時代)
鈍☆感☆力、ワロタ。信長ってこういう人だよね。「上司にしたい戦国武将」とかで信長必ず上位になるけどマジでごめん被りたい。
コマの外までびっちりトレビアがつまってて、ぱっと読み→じっくり読みみたいに何度も繰り返して楽しめる。
「チェンバロとちゃんばら」(-)
本格エッセイ。「黄金の日々」は見てたと思うが良く覚えてない。私が最後にしっかり見た大河ドラマは「北条時宗」。今はそんなに長く続くテレビドラマは見れないなぁ。
「凌霜U-17」(江戸時代)
そうですよね。そういう年齢なんですよね、彼ら…。
「遙か」(江戸時代)
おっ、高杉さんが出てる(何故さん付け?)。そういや坂本が拳銃もってるのはこういうわけでしたね(何故呼び捨て?)。
「郵便えとせとら」(明治時代)
切手とイメージが違う~(前島密ね)。
ページがさりげなく切手になってるのに気付いた時、ついにやけてしまった。
「紅桃誕生物語」(朝鮮・日本統治時代)
社長さんのツッコミがおもしろく、地の文(脚本)もすんなり読むことができた。
自画自賛する夫のところでクスっと笑ってしまった。かわいい。
しかし、やはり読めない名前は覚えられない(↑)。漢字で書かれる名前の読みをどうするかというのは自分も迷うところだから、こういう方針でルビが振られていないのはわかるけれど、正直な感想は「仮でもなんでもいいからふりがなお願いします」。
…とまぁ、駆け足での紹介でしたが、興味を持ったらお一つどうぞ。また、次回投稿してみるのも良いかもしれませんね。
(詳しくは歴史部サイト、または執筆者サイトへ。歴史区分の間違いなどこの感想に対する指摘事項はコメ欄にお願いします。)
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