映画「パレスチナ」
2011年トルコ
監督:ジュベイル・シャシュマズ
キャスト:
ポラット・アレムダル…ネジャーティ・シャシュマズ
モシェ・ベン・エリエゼル…エルダル・ベシクチオウル
シモン・レヴィ…ヌル・アイサン
「トルコ人にはかまうな、彼らが汝らに何もせぬうちは」
というアラブの格言をイスラエル人は知らなかったのだろう。
2010年5月31日、ガザ地区への支援物資を積んだ支援船団がイスラエル特殊部隊に襲撃され9人が死亡するという事件があった。死亡した人たちはほぼトルコ人で船もトルコ船籍であったが、明らかにこの事件と思われるボランティア船襲撃シーンが映画の冒頭にきていて、主人公であるポラットたちの目的がこの襲撃を指揮したモシェの殺害である事については他に全く説明がない。
ゆえに、全編銃撃戦に次ぐ銃撃戦。しかも終盤30分は逆視点の「ブラックホーク・ダウン」か、というような迫力。
民兵が戦車に石を投げているシーンはインティファーダを思わせるが、これも他に武器がないからというよりは戦術の一つらしい。最終的に戦車は火炎瓶で撃破されるのがなかなか感慨深い。
更にヘリコプターを撃ち落とすところで思わず、
「うわー、これ本当に撃ち落としてるよ! 危ねー、どこでこんなの撮影したんだ!」。
…いや、撮影したのはトルコのどこかで、野暮を承知で言えばワイヤーで吊っての撮影なんだろうが、それでも、ヘリコプターがバラバラになって墜ちてくる実写(CGでない)って恐怖だぞ。特にメインローターなんか回転しながらこっちに向かってくるんだから!
原題「Kurtlar Vadisi Filistin(パレスチナ ―狼の谷―)」でわかるように、アメリカで鑑賞禁止になったという「IRAQ ―狼の谷―」と同じ元トルコの特殊部隊隊員ポラットら3人のチームが活躍するシリーズもの。トルコの観客には先刻ご承知のことなので主人公たちの素性については語られない(長髪のアブデュレーは確かクルド人だ)。そのため、アクションを楽しみたい、余計なストーリィはいらない、という人には嬉しいスピーディな展開になっている。
一応、ユダヤ系アメリカ人女性レヴィに、
「(モーセの十戒の)『殺すな』はどうなったの!?」
とモシェと論争させたり、地元のシャイフに、
「イスラム教は平和な宗教だ…」
とアリバイ的に語らせたりはしているものの、現実世界では周囲の皆が手を焼く駄々っ子イスラエルをぶっ飛ばしてスカッとしよう、という娯楽映画なので堅苦しい事は抜きにしてアクションを楽しむのが正解!
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