映画「夏の終止符」
2010年ロシア
監督:アレクセイ・ポポグレプスキー
キャスト:
パーシャ…グリゴリー・ドブルィギン
セルゲイ…セルゲイ・プスケパリス
ロシア版ゆとり世代パーヴェル(パーシャ)君がちょっとした気後れで上司のセルゲイに重要な知らせを伝えそびれ、それを取り繕うために嘘に嘘を重ねてだんだんドツボにはまっていくサスペンス・コメディ。
「闇金ウシジマ君」でニートがひどい目に遭う話があったけどあれに似ているなぁ、と思った。でも、パーシャ君のひどい目に遭いようっていうのは極北地方らしくて良い(良いのか?)。
季節はタイトル通り夏なのだが(原題を文字通り訳すと「僕はこの夏をどのように過ごしたか」)夏でも雪山のような所だから、ちょっとしたことで命に関わる。パーシャ君のパニクりようも酷く、その辺が「ゆとり」呼ばわりされるゆえんなんだが…。
でもまぁ、字幕のように上司を「セルゲイ」と呼び捨てにするほど傍若無人ではないぞ。英語から訳してるせいなのだろうか。ロシア語知らないまでもせめて日本語でいいからチェーホフくらいは読んでる人に訳してもらいたいものだ。この字幕のひどさは機械翻訳でホームページを作ったどこぞの地方自治体を笑えないレベル。
あと、放射能を思いっきりお笑いのネタに使っていて不謹慎極まりないから、この手のジョークが苦手な人は笑えないかもしれない(パーシャが時々プレイしているシューティング・ゲームは「S.T.A.L.K.E.R.・チェルノブイリの影」というゲームだそうな)。手をかざして暖かい、と感じるような放射性廃棄物が露天に放置ってヤバイだろ。
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ロシア極東チュコトカ自治区。夏でも流氷漂う北極の海に浮かぶとある島の極地観測ステーション。パーヴェルはステーション長セルゲイとたった二人で気象データを観測して本部に送る仕事をしている。仕事第一職人気質のセルゲイは、今時の若者パーヴェルの仕事に対する遊び感覚の態度に時にはいらだちさえ感じている。
ある日セルゲイは潟(ラグーン)にマス釣りに出かけてしまうが、その間に本部からセルゲイの愛する妻と子供が事故に遭ったとの知らせが入る…。
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東シベリア海に臨むヴァリカルカイ(北緯70度4分52秒東経170度58分)極地観測ステーションで夏の3か月、夏の短い地方のことなので2年がかりでロケされたそうだ。
海鳥の声が微かに聞こえるだけの凪の海、水たまりだらけの岸辺に吹く強風、突如として辺りを真っ白にしてしまう濃霧、パーシャにたかる大量の蚊や彷徨くシロクマ、どれも極北らしい良い雰囲気。それだけでも見応えがあるし、パーシャのゆとりぶりとの落差に思わず黒い笑いがこみ上げてくる。
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