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2012年7月21日 (土)

『モンゴル史』部族篇第1章@12日(日)西ま24a

 『モンゴル史(集史)』部族篇第1章、なんとか入稿しました。これでコミックマーケット82群雄」のブース(2012年8月12日(日)西ま24a)には、オフセット印刷された『モンゴル史』が平積みされている事でしょう。

 第1章は過去ペルシャ語から日本語訳が試みられたことがある(私はその論文を見たことない←超稀覯本だよな~)とのことなので、ロシア語読めなくても当時のソ連の研究成果にお手軽に接することができるようにセミョーノフが付けた注部分を全部訳してみました。まぁ、注釈入れたセミョーノフも翻訳者のヘタグーロフも、今回「序に代えて」で利用したロマスケーヴィチも死後50年以上経ってる人なんですが、これを知らずにモンゴルを語れるかってくらい現在でも耳を傾けるに値するおもしろいことが書いてあります。

 とはいえ、第1章は「オグズの章」とか「オグズ説話」などと通称されるように、モンゴルの歴史と言うよりはほとんどテュルクの話です。しかも、ラシードは「ウィグルの歴史書を見た」と言っているにもかかわらず、他の「ウィグルの歴史書を見て書いた」と言っている人たち(例えば『世界征服者の歴史』のジュワイニー)の語るウィグル・イディクト王家の始祖伝説とはまったく違う話をしています。
 これはもちろん意図あっての事で、おそらくラシードが『モンゴル史(集史)』を執筆した目的と係る重要なことに違いありません。何しろ、イスラムの帝王ガーザーンに捧げる大切な書物の書き始めなのですから。
 『モンゴル史(集史)』は、モンゴルの歴史を知るうえでの最重要史料ですが、筆者はモンゴルに仕えている人とはいえ、人がいったんあらゆる資料を取り込んで論理的に再構成して書いている以上、何らかのフィルターがかかってしまうのは避けられません。
 そのフィルター…執筆者の意図するところ、つまりこの歴史書の傾きの度合い・方向を知らずにむやみに利用するのは危険です。

 どんなフィルターがかかっているか…例えば「トルイ家の皇位継承を正当化する」とか「ムスリムに改宗したガーザーンの行動をモンゴルの伝統に反しないと理論づける」とか…これだけの大著を書かせたエネルギーはどこから湧いてきたのか、この第1章でラシードの心の奥を垣間見る事ができるのではないかと思っています。

 さて、一見して『モンゴル史(集史)』部族篇第1章には『オグズナーメ』に酷似した個所があります(テュルク諸部族の名前の起源のところ)。

 そこで、ラシードの見たウィグルの歴史書とは『オグズナーメ』なのではないかと思い、『オグズナーメ』を何度も読みかえしたのですが、日本語訳の底本がなんなのか、それがどんな由来の物か全く書いていないに等しい。成立したのがいつか、口承だったものが文字に書き起こされたのかいつかがわからなければ、『オグズナーメ』が『モンゴル史(集史)』の元ネタだとはいえません。だって、それの方が遅い時代だったら『モンゴル史(集史)』の記述が人づてに伝えられて『オグズナーメ』になった、あるいはすでにあった伝説に混入したかもしれないじゃありませんか(口承の英雄叙事詩などではよくあることです)。

 うっはwww使えねーwwwと苦笑していたところ、自分だって底本の由来書いてないじゃん!!!と気づいたので、今回はロシア語版が何を元にしているかをロマスケーヴィチの序文をもとにまとめてみました。自分自身は『モンゴル史(集史)』の写本そのものを見ていない(見てもペルシャ語読めないけど)ので、変なこと書いてるかもしれませんが、そこはまー日曜歴史家の限界ですんで、しょうがねーなーと、24時間365日を研究に費やしている本職の実力を見せつけてくれると喜んで信奉者になりますのでよろしくお願いします(←誰に言ってる)。

 最後に、固有名詞の綴りは何度かチェックしていますが、自分で自分の間違いにはなかなか気づかなかったりしますので、何かお気づきの点は教えていただけるとうれしいです。あっちゃーと言いながら正誤表差し込むことになりますが。

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