映画「べールィ・チーグル」
2012年ロシア
監督:カレン・シャフナザーロフ
音楽:リヒャルト・ワーグナー
キャスト:
ナイジョーノフ…アレクセイ・ヴェルトコフ
フョードトフ…ヴィターリィ・キシェンコ
ジューコフ元帥…ヴァレーリィ・グリシコ
ベルディエフ…ヴィターリィ・ドルジエフ
スミルノフ将軍…ドミートリィ・ブィコフスキー=ロマショフ
ヒトラー…カルル・クランツコウスキ
大祖国戦争(第二次世界大戦のソ連での呼び名)のとある激しい戦闘の後、一人の戦車兵が大破したT-34の中から助け出された。生き残ったのは彼一人。体表面の90%に火傷を負いながらも奇跡的に一命を取り留め、驚くべき快復力を見せたものの、彼は記憶を失って自分の名前さえも覚えていなかった。戦車の中から発見された(ナーイジェンヌィ)男は、イヴァン・ナイジョーノフという新しい名前と任務を持って前線に帰ってきた。
任務というのは、「白いティーガー(べールィ・チーグル)」と呼ばれる謎めいた戦車を探す、というものだ。その戦車は忽然と姿を現してソ連の戦車を攻撃する。T-34の砲弾が当たってもはじき返す。そして戦車部隊をやすやすと全滅させると忽然と姿を消すという。
それはドイツ軍の新兵器なのか、戦車兵たちの恐怖心が見せた幻影なのか。
・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆
この間黒いヤツ(チョールナヤ・アクーラ)をやったので、今度は白いヤツをひとつ(笑)。
ティーガー、「白い」とあだ名されているけど、少し淡く見えるくらいで本当に白いわけではない。どっちかって言うと、「オバケ戦車」とか「幽霊ティーガー」といった感じなんだろう。ナイジョーノフは「戦車の神様だ」って言ってるけど、神は神でも付喪神とか怨霊で神様になった菅原道真とかの類だよなぁ。
きっとどこかの配給会社が日本でも上映もしくはDVDにして販売してくれると信じているが、これをどういう邦題に訳すのか興味津々(笑)。
T-34が爆走する映画は「鬼戦車T-34
(原題:ひばり)」が有名だけれども、あれはドイツに鹵獲された戦車で、砲弾を積んでいなかった。
この映画では、手で弾をつめて撃つと、戦車内が硝煙でブワッと曇る様子や、砲口に泥土が詰まった事に気付かずに発射して砲身が裂けるシーンなんか非常にリアルというか怖い。
いや、全体的に戦車乗りが感じているであろう恐怖感……視界が極端に狭いとか、燃え上がったら蒸し焼きとかがリアルすぎるくらいにリアルに描かれていて、そういう恐怖が「白いティーガー」の幻影を生み出したのでは? と自然と思わせる。装甲がクッキーの缶みたいにぺらっぺらにめくれ上がってぶっ壊れているT-34が大量に出てくるのも珍しい。これから戦車乗るよーという兵士は、あんなの見たくないだろう。
ティーガーを探してぐるぐる回ったり、砲塔をくるくるしているうちに相手の位置がわからなくなり、ハッチを開けておそるおそる外を見回す…。
「どこにもいません」
と言ってハッチを閉めると、その後方に砲口を向けた白いティーガーが! って正にホラー。
それとか、ナイジョーノフたちが白いティーガーを追って、森を踏み分け、白い霧の中を通り抜けて出たところが無人の廃村で、そこで白いティーガーと一騎打ちになるところなどファンタジーっぽいと言う人もあるかも知れない。
でも、これは戦車乗りの生の感覚をうまく再現していると思った。記録映像には現れにくい面、戦闘に参加した人の異常心理とでもいうか。
是非とも、戦争ものが得意なところに日本語版をお願いしたいなぁ、と。
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
最近のコメント