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2014年4月 5日 (土)

映画「ナチス・ホロコーストの戦慄」

ナチス・ホロコーストの戦慄 [DVD]

2005年リトアニア/UK
監督:アルギマンタス・プイパ
キャスト:
教授…ヴァレンチナス・マサルスキス
ホッペ所長…スティーヴン・バーコフ
カズロウスキ…リューボミラス・ラウセビチャス

 その収容所は「神々のいる森」と呼ばれる森を切り開いて建てられた。木を切り抜根し整地する作業はポーランド人捕虜たちの手で行われたが、過酷な作業の過程でほとんどの捕虜が死んだという。

 この収容所にドイツが占領したリトアニアからの政治犯が送られてきた。その中にいたのが、大学教授で詩人でもある主人公。

 突然の逮捕。学生たちを反ドイツ扇動したという理由だが、本人は政治活動をしていたわけではないから全く身に覚えがない。
 家族には
「すぐに(夕食くらいには)帰るよ」
と言ったまま、収容所送りになってしまう。

 持ち物は全部没収され(金歯まで調べられる)、裸に剥かれて洗われて、サイズさえ合ってない囚人服を着せられる。

 昨日まで大学の教授だったのに、今日は肉体労働。寝床は虱やら噛む虫だらけだし、特権を持った囚人たちに年がら年中暴力をふるわれる。

 お茶の間に流れるTVだと、自主規制やらなんやらですべてがマイルドになっている日本からしたら、この映画はかなり生々しい。生理的嫌悪感を覚える人がいるかもしれない、と思えた。

「おまえは今日死ね、俺は明日だ」
という収容所の掟が教授の口から出てきた時は、それってソ連のラーゲリで言われていたフレーズだよなぁ、ドイツの収容所の話に出てくるとはこれはいったい…? と序盤で引っ掛かるものがあったが、案の定、ソ連軍による解放後、収容所の体験を克明に記した教授の著書『神々のいる森』は作家協会で大激論を巻き起こし、出版できなくなってしまう。戯曲も上映禁止になり、劇団員も解散させられてしまうのだ。

 大祖国戦争のことなら、ナチスの暴虐を暴き、赤軍の勝利を描くんだから、共産党の推薦を受けてもいいじゃないかと思われるかもしれないが、この辺の機微がいかにもソ連なんだなぁ。ソ連をリアルタイムで知らない世代にはなかなかわかりにくい感覚なのかもしれないなぁ、と思ったりもする。
 でも、そもそも映画の主人公からして劇団員に収容所の生活がどんなものだったか理解した演技ができずにイライラしてる。同じ戦争を生き延びたソ連人だというのに。我々はせいぜい頭で理解することができるくらいのものなのかもしれないな。

 リトアニアの作家バリス・スルオガ(1896-1947)の『神々のいる森』をめぐるエピソードを下敷きにしており、映画の最後では、失意の教授を収容所の囚人(たぶん亡者)たちが、
「俺たちは闇に葬られる」
「本が出版されないのは残念だ」
と見送るのだが、『神々のいる森』はスルオガの死後10年を経て出版されている。

 つまり、スターリン批判の後に、ということだ。

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