ドラマ「バトルライン 復讐のソ連兵・ナチス壊滅」
バトルライン 復讐のソ連兵・ナチス壊滅 前編 [DVD]・後編[DVD]
2008年ベラルーシ/ロシア
監督:アレクサンドル・フランスケーヴィチ=ライエ
キャスト:
イヴァン・ブロフ…セルゲイ・ベズルーコフ
ハンナ…マグダレーナ・グルスカ
ヴォイツェフ(ベリスキー)…ロスチスラフ・ヤンコフスキー
オットー・レグナー…パーヴェル・デロング
ギュンター…アレクサンドル・フランスケーヴィチ=ライエ
ヴォルフ…ヴラジーミル・ヤンコフスキー
ミハシ・カルペニューク…ミハイル・カリニチェフ
ルスタム・クリチャエフ…ラファエリ・ムカエフ
「退却命令は受けていない。国境線も変わってない。だから宣誓に従い国境を守るッ!」
イヴァン・ブロフ中尉が、周り中ドイツ兵だらけになった中ひとり生き残って、叫ぶシーンを見て、ははぁ、今年の初めに小野田寛夫氏が亡くなった時、ロシアのニュースサイトで見かけた、「「最後の日本兵」小野田氏がなぜロシアで感動を呼ぶのか」とはこういうことか、と大きく頷いた。
同時に、辻政信がノモンハン事件(ソ連・ロシアではハルヒン・ゴルと呼ぶ)の折、この手の国境の標識を200mほどモンゴル側に勝手に動かしたと回想録で自慢げに語っていたのも思いだして苦々しい気分になった。
主人公のブロフは、ソ連の警官を繋いでいた縄を拳銃で見事打ち抜き、彼を線路の上から助け出したのだが、その射撃の腕を見た赤軍少佐が、喜んでブロフに声をかける。
「見覚えのある顔だ。ハサン湖(張鼓峰事件)だったかな?」
「違います。1939年8月ハルヒン・ゴル(ノモンハン事件)で大怪我を」
ブロフが経験豊かな兵士だという事をさりげなくにおわす会話だけれど、1941年の時点で経験豊かな将校ってことになると、そういうことになるんだろう。戦闘経験のない新兵がいきなり、あんな超人的な活躍をするってのはいくらドラマでもリアリティなさ過ぎる(もちろん、字幕では「ハルヒン・ゴル(ハルハ河)」は「ノモンハン」と訳されています。さすが彩プロさん、ぬかりないぜ)。
国境なんて常に移り変わるもので、その時々の国家間の約束に過ぎないとしたら、その「約束」に対する辻の態度はたいへんがっかりだ。あの戦争で日本に正義はなかったのかな、と思えてしまう。
…まぁ問題は、それが日本とソ連の国境じゃないって所かもしれんけど。
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1941年6月、ベラルーシ西部国境。イヴァン・ブロフはここの「堤防」国境警備隊に所属する中尉だが、地元のポーランド娘ハンナと愛し合っている。しかし、ポーランド人と交際することは禁止されており、こっそりハンナとつきあっていることを密告されて、呼び出しを喰らった所だった。モスクワで尋問されて帰って来て、久々にハンナと会っている頃、ドイツ軍が国境の有刺鉄線を切り始めたたという情報が入り始めた。ドイツ軍のソ連侵攻が始まったのだ。
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最初、主人公ブロフが緑の帽子を被ってるところでかなりぎょっとした。国境警備隊だからNKVDの所属なんだろうが、旧ソ連の視聴者はそういうの抵抗ないのかな。NKVDの部隊っていうと強いのは強いが、懲罰大隊とかの後ろにいて逃げそうなそぶりが少しでもみえると撃ってくるとか、赤軍の指揮系統に属していないのでその場の指揮官に文句を言って従わない事があるとか、怖い人たちってイメージなんだがな…。まぁ、それも西側のプロパガンダに毒された結果なのかもしれんが。
原題の「41年6月」というのが既に死亡フラグ。あんな状況でブロフが助かるって結末はちょっと考えにくい。
ブロフの部下、ミハシはたぶんベラルーシ人。ルスタムは故郷の結婚式のご馳走の話をして、「マトンのスープに馬乳酒、魚の塩漬け。シャシリクうまー」とか言ってるから、カフカスのどこかの出身なのかな? 結婚式ではみんな踊るのだが、娘たちの前で若者は高く跳ねるそうで、『元朝秘史』の即位を祝ってぴょんぴょん跳ねるとか、突厥の始祖伝説で一番高く跳んだ者が可汗になったなんて話を思い出す。そういう風習が現代まで生き残っているっていうのはおもしろいね。
ちょっと笑えたのは、ドイツのドキュメンタリー映画の監督ギュンターが、ドイツ人なのに英語のフレーズを口走ったり、ドキュメンタリーなのにやらせを仕込んだり、刺されたのになかなか倒れなかったりしたこと。何か不自然だなぁ、と思ってたら、この人が監督なんですね。出たがりさんめ(笑)。
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