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2014年8月14日 (木)

映画「ライジング・ロード 男たちの戦記」

ライジング・ロード 男たちの戦記

2009年サハ(ロシア)/モンゴル/アメリカ
監督:アンドレイ・ボリソフ
キャスト:
チンギス=ハン…エドゥアルド・オンダル
ジャムカ…オルギル・マハーン
ホエルン…ステパニダ・ボリソヴァ
ココチュ…イェフィム・ステパノフ
ボルテ…シュザンナ・オールジャク
イオアン修道士…ゲルノト・グリム
シェン・ミ・ヂェン…塗們
クチュルク・ハン…オレーク・タクタロフ
グルベスの護衛…ケイリー=ヒロユキ・タガワ(田川洋行)

 極めてサハ色の強いチンギス=カンの「ライジング・ロード」だった。

 原題は「チンギス=カンの秘密」で最後の方に『元朝秘史』が書かれる様子も出てくるが、『元朝秘史』をそのままなぞる話ではない。

 むしろ民間伝承の匂いがして、個人的にはその点がすごく気に入った。
 『元朝秘史』は書かれた当時の人たちには共感できる話だったのだろうが、後世の人間から見ると価値観の変化でどうしても「ええー?」ってところがある。そういうところが解釈し直されているのだ。
 口承だと、語り手によって当代風にこういう改変が為されることはよくある。
 確かに、ベクテルやタイチャルを殺した理由は、この方が納得できるかもしれない。
 やっぱり、食い物の恨みで兄弟を殺しちゃうのって、やっぱりどうかと思うんだろう。

 トオリル=ハン(オン=ハン)やココチュ(テプ=テングリ)も悪人に描かれてはいない。
 この二人、風貌からしてすっごく良い人っぽくて、『元朝秘史』のイメージとは大きく異なるんだけど、これも良いかな。彼らが殺されなければならなかったのも、テングリの思し召し的になってる。
 ……まぁ、俳優の風貌が私好みだったってのがいいね!と思った大きな理由かもしれない(笑)。トオリル役の人は谷啓が出ているのかと。

 クライマックスが対ナイマン戦になっているのも新鮮。
 確かに、テムジンのモンゴル統一事業で最も重要な戦いだったと思われるのだけれど、他作品でメインに描かれる事はなかったように思う。

 グルベスが偉そうなのがまたツボ。
 ナイマンを取り仕切ってる女帝風に描かれていてステキ。女帝風っていうか、ツァリーツァ(女帝)って呼ばれてるもんな。片割れのタヤン=ハンがどうでも良い殺され方でその他大勢扱い(笑)。
 いや、『元朝秘史』に書かれているとおりだけどね
(ただし、『秘史』ではグルベスはタヤン=ハンの母。妻となっているのは『集史』の方)。

 キリスト教の修道士がテングリの天命を説いていたり、みんなで輪になってぐるぐる回ってたり、荒涼とした大雪原の騎馬戦シーンなんかはモンゴルというよりはサハ(ヤクーチャ)だよなー、と思う。
 象徴的に何度か出てくる広い水面も、蒼き狼が渡ってきた「海(テンギス)」のイメージなのかもしれないが、どう見ても北海(バイカル湖)でなくて北極海。

 鹿石、ヘレクスール(ストーンサークルみたいなもの)、石人君が妙にフィーチャーされているもサハ的なのかもしれない。見た事あるような石人君が出て来て私的にはニヤニヤものなんだけど、「先祖のもの」と強調し過ぎかもしれないね(笑)。
 鹿石と石人じゃ時代が違くないか?と思うし、ヘレクスールは渦巻いてないぞ?とも思うんだが、今の人はあれをこういう風に解釈している(解釈したい)のかな?と考えると興味深い。

 そして、もっともサハっぽく感じたのは、圧巻の戦闘シーン。

 え? 群れをなして迫ってくる、あのちびこくてモッフモッフした可愛い生き物は何だって?
 馬です! 犬じゃありません(笑)。

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