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2016年4月27日 (水)

映画「シー・バトル」

シー・バトル 戦艦クイーン・エリザベスを追え! ! [DVD]

2012年トルコ
監督:イェシム・セズギン
キャスト:
ヴェリ…バラン・アクブルト
マフムート・サブル少佐…ブュレント・アルクシュ
シェフィク中佐…ジェリル・ナルチャカン
ヒュセイン・アイヌル中佐…バルシュ・チャクマク
ムスタファ・ケマル中佐…イリケリ・クズマズ

 アナトリアの最西端、鼻のように丸く突き出した先にある町がチャナッカレ。 まるでその鼻先を丸く覆うかのようにヨーロッパ側から延びているのがガリポリ(ゲリボル)半島である。両者の間にできた狭い水道がダーダネルス海峡、現在でも戦略的要地である事は御存知のとおり。

 ダーダネルス海峡を押さえられると、ここからオスマン帝国の首都イスタンブルまで筒抜けになってしまう。オスマン側としては、ダーダネルス海峡を見下ろすガリポリの高みは絶対取られてはならない要地のはずだが、寄せ集めの軍隊がわずかに守っているだけ……オスマンの主力軍は、カフカス地方の帝政ロシアとの戦線に振り向けられてしまっている。

 連合国側から見れば、綿密な作戦、圧倒的な物量、兵員数及び士気の差、制海権の掌握等々で負ける要素が見当たらない。にもかかわらず、14万人とも言われる死傷者を出して惨敗、海軍大臣チャーチルが引責辞任に追い込まれた……それがこのガリポリの戦いである。

 丹念に戦況を追っている映画なので、地図を見ながら見るとおもしろい。時間時間、場所場所の表示が説明的すぎるかとも思えるが、その丁寧な表示のおかげでダーダネルス海峡の出口にあるボズジャ島(アダ)まで連合国側に占領されて不沈空母化していて、オスマン側のまずい状況が手に取るようにわかる。まぁ、第一次世界大戦だとまだ航空機による絨毯爆撃のようなことはないのだろうけれど、その代わりに無敵艦隊がオスマン側の砲弾の届かない所から撃ってくるわけだ。

 戦場の兵士の日々の暮らしがリアルで、連合国が上陸しようとして最大の激戦地になったアリブヌ(アルブルヌ)の陣地構築では、ああ、また塹壕掘りか……と見ているこっちまでウンザリしてしまう。大量のハエが飛ぶ中での食事もまた嫌な感じでリアル。たかってくるハエを追いながら、
「オレが好きなのか、ははは」
なんておどけてるけど、大量のハエの発生源ってアレじゃない?と思うとゾワッとする。まぁ、すぐ後のシーンではっきり出てくるんだけどね、死体。

 塹壕を掘りをやってる時、下士官が口うるさいくらいにあれしろこれしと兵士達に指示して自分で、
「小言ばっかりだ!」
ってぼやいているシーンがあったけれども、一線級の軍団はロシアとの戦いに行っちゃってて、本当に練度が低かったみたい。よく勝ったな、と思うけれども、本当にああいう風に志願兵?にも丁寧に教えたんだろうね。エンピで敵兵をぶん殴ったり、弾が尽きて銃に剣を挿して突撃したりと(まぁ、あの時は敵も弾薬は尽きてたという話だが…オスマン軍の方がズタボロな補給路だったにもかかわらず)かなり士気が高いように見受けられるのは、バルカンやらアラビアやらの敗戦でオスマン帝国が分解していくのを目の当たりにして、祖国が亡くなるかもという危機感を一兵卒まで共有していた、ケマルら指揮官がよく説明して理解させてたって事なんだろう。これ、負けてたらイスタンブルが陥落して今、トルコという国は残ってないだろうしな。

 少々宗教色が強い感じがしたのは、政権の意向なんだろうか…。作り方によっては、もっと「祖国」を強調して宗教色を薄める事もできたように思う。ケマルが前面に出ていないのも、その辺りの事情かな、とか想像してしまう。

★゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・゜

 この映画の前半の主戦場になっているダーダネルス海峡の両岸・エジェアバート、チャナッカレは、イスタンブルから世界遺産トロイ(トルワ)にバスで行く時に通りかかる所だから、割とみんな馴染みがある町のはず。こうして状況を知ると、実際その場を目標に訪れてみるのもいいかも、と思える。

 歴史好きは歴史ドラマにいつも「史実通りじゃない」っていちゃもん付けるけど、これはかなり時系列通りに追っているように見受けられる

 第一次世界大戦百年を記念して各国でこの大戦に関係する映画が撮影され、中でも悲惨な戦いだったという事で、ガリポリの戦いについても幾つか映画が作られたようだけれど、そういうドラマ性の高い映画を見る前に、これを見てこの戦いについての意義を予習しておくと、理解度・共感度が高くなるに違いない。

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