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2016年4月27日 (水)

映画「シー・バトル」

シー・バトル 戦艦クイーン・エリザベスを追え! ! [DVD]

2012年トルコ
監督:イェシム・セズギン
キャスト:
ヴェリ…バラン・アクブルト
マフムート・サブル少佐…ブュレント・アルクシュ
シェフィク中佐…ジェリル・ナルチャカン
ヒュセイン・アイヌル中佐…バルシュ・チャクマク
ムスタファ・ケマル中佐…イリケリ・クズマズ

 アナトリアの最西端、鼻のように丸く突き出した先にある町がチャナッカレ。 まるでその鼻先を丸く覆うかのようにヨーロッパ側から延びているのがガリポリ(ゲリボル)半島である。両者の間にできた狭い水道がダーダネルス海峡、現在でも戦略的要地である事は御存知のとおり。

 ダーダネルス海峡を押さえられると、ここからオスマン帝国の首都イスタンブルまで筒抜けになってしまう。オスマン側としては、ダーダネルス海峡を見下ろすガリポリの高みは絶対取られてはならない要地のはずだが、寄せ集めの軍隊がわずかに守っているだけ……オスマンの主力軍は、カフカス地方の帝政ロシアとの戦線に振り向けられてしまっている。

 連合国側から見れば、綿密な作戦、圧倒的な物量、兵員数及び士気の差、制海権の掌握等々で負ける要素が見当たらない。にもかかわらず、14万人とも言われる死傷者を出して惨敗、海軍大臣チャーチルが引責辞任に追い込まれた……それがこのガリポリの戦いである。

 丹念に戦況を追っている映画なので、地図を見ながら見るとおもしろい。時間時間、場所場所の表示が説明的すぎるかとも思えるが、その丁寧な表示のおかげでダーダネルス海峡の出口にあるボズジャ島(アダ)まで連合国側に占領されて不沈空母化していて、オスマン側のまずい状況が手に取るようにわかる。まぁ、第一次世界大戦だとまだ航空機による絨毯爆撃のようなことはないのだろうけれど、その代わりに無敵艦隊がオスマン側の砲弾の届かない所から撃ってくるわけだ。

 戦場の兵士の日々の暮らしがリアルで、連合国が上陸しようとして最大の激戦地になったアリブヌ(アルブルヌ)の陣地構築では、ああ、また塹壕掘りか……と見ているこっちまでウンザリしてしまう。大量のハエが飛ぶ中での食事もまた嫌な感じでリアル。たかってくるハエを追いながら、
「オレが好きなのか、ははは」
なんておどけてるけど、大量のハエの発生源ってアレじゃない?と思うとゾワッとする。まぁ、すぐ後のシーンではっきり出てくるんだけどね、死体。

 塹壕を掘りをやってる時、下士官が口うるさいくらいにあれしろこれしと兵士達に指示して自分で、
「小言ばっかりだ!」
ってぼやいているシーンがあったけれども、一線級の軍団はロシアとの戦いに行っちゃってて、本当に練度が低かったみたい。よく勝ったな、と思うけれども、本当にああいう風に志願兵?にも丁寧に教えたんだろうね。エンピで敵兵をぶん殴ったり、弾が尽きて銃に剣を挿して突撃したりと(まぁ、あの時は敵も弾薬は尽きてたという話だが…オスマン軍の方がズタボロな補給路だったにもかかわらず)かなり士気が高いように見受けられるのは、バルカンやらアラビアやらの敗戦でオスマン帝国が分解していくのを目の当たりにして、祖国が亡くなるかもという危機感を一兵卒まで共有していた、ケマルら指揮官がよく説明して理解させてたって事なんだろう。これ、負けてたらイスタンブルが陥落して今、トルコという国は残ってないだろうしな。

 少々宗教色が強い感じがしたのは、政権の意向なんだろうか…。作り方によっては、もっと「祖国」を強調して宗教色を薄める事もできたように思う。ケマルが前面に出ていないのも、その辺りの事情かな、とか想像してしまう。

★゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・゜

 この映画の前半の主戦場になっているダーダネルス海峡の両岸・エジェアバート、チャナッカレは、イスタンブルから世界遺産トロイ(トルワ)にバスで行く時に通りかかる所だから、割とみんな馴染みがある町のはず。こうして状況を知ると、実際その場を目標に訪れてみるのもいいかも、と思える。

 歴史好きは歴史ドラマにいつも「史実通りじゃない」っていちゃもん付けるけど、これはかなり時系列通りに追っているように見受けられる

 第一次世界大戦百年を記念して各国でこの大戦に関係する映画が撮影され、中でも悲惨な戦いだったという事で、ガリポリの戦いについても幾つか映画が作られたようだけれど、そういうドラマ性の高い映画を見る前に、これを見てこの戦いについての意義を予習しておくと、理解度・共感度が高くなるに違いない。

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2016年4月26日 (火)

『集史』紹介小話を書いてみたよ

 「部族篇4」は今まで以上にペルシャ語の単語が出てくるので、うんうん言いながら辞書引いてたわけですが。

 最近はかなり楽に引けるようになって、
「あれ? 最初はあんなにょろにょろ文字なんて読めん、パス!と思ってたけど、結構読めるようになった?」
と思って、まるで自分のペルシャ語が上達したかと思ってたら、そんな事はなかったぜ……ってか、そもそもペルシャ語勉強したことないじゃん(笑)。

 じゃあ、アラビア語もって辞書引こうとしたら、全然引けない。

 つまり、単にいつも見てるコレ↓がど素人でも引きやすい素晴らしい辞書ってだけのことだった(大学書林のアラビア語辞典はないみたい……しょぼーん)。

 かといって、オススメ!みんな買ったら良いよぉ、と言いにくい値段なんだよなぁ。どこの図書館にもあるってのが救いではあるケド。

★゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・゜

 そこで、『モンゴル史』「部族篇」揃うぞ、めでたい気分を盛り上げるために(?)、『集史』紹介の小話「届かなかったLove Letter」を書いてみました。リンクは横→にもあります。

 「ラシードはこんなじゃねぇ!!!」という苦情はコメ欄に受付中です。

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2016年4月25日 (月)

映画「メガ・シャークVSグレート・タイタン」

メガ・シャークVSグレート・タイタン [DVD]

2015年アメリカ
監督:クリストファー・レイ
キャスト:
ドクター・アリソン…イリアナ・ダグラス
モリア・キング…エイミー・ライダー
ドクター・アドラモフ…パトリック・ボーショー
ジャクソン提督…アーネスト・L・トーマス
ジョシュア・ダン…ブロディ・ハツラー

 ん? 私の耳がヘンになったのかな?
 「オキシジェン・デストロイヤー」って言わなかったか?

 オキシジェン・デストロイヤーをものともしないとは、遂にメガ・シャークはゴジラを越えたか(笑)。っていうか、衛星はたき落としたよね? 生身で宇宙行って平気なのね。

 しかも、単性生殖で死ぬ間際に子供を残しているっていうんなら、メガ・シャークを退治出来ないってことなんじゃないかな。

 つまり、「ギャグ漫画の主人公は死なないから最強」って事で良いですかね?(笑)

 すごい低予算らしいっていうのが、見ていてもわかるくらいチープな所もあるけど、どことなく「八時だよ全員集合」の舞台的な雰囲気で、ギャグには合ってるかもね。

 小柄なキングが007ばりに活躍してるのも楽しかった。

続きを読む "映画「メガ・シャークVSグレート・タイタン」"

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2016年4月19日 (火)

映画「敦煌」

敦煌 [DVD]

1988年日本/中国
監督:佐藤純彌
キャスト:
趙行徳…佐藤浩市
朱王礼…西田敏之
ツルピア…中川安奈
李元昊…渡瀬恒彦
曹延恵…田村高廣

 敦煌関係の一般向け書籍読むと必ずと言っていいほど「小説ではああいう風に書かれているけど、実は……」と前置きされてる例のアレですな。ああいう風に曹延恵が何十年もかけて集めた各国の文化芸術の精華にしちゃあ、敦煌文書は断片的だったり、使い古しだったり裏紙だったり。
 たとえて言えば、「平成○○年まで保存」と書いて段ボールに入れて倉庫にしまった書類が、会社が倒産して廃墟になった倉庫にしまい込まれたまま忘れられたって感じなんじゃないの? だからこそ、普通は後世に残さない情報が残った訳でもあり。
 映画の最後はロケ地の中国に配慮しましたーって感じのナレーションで締められるけど、その説明はなんか違うなって感じてしまう。

 でも、まぁ、映画はおもしろかった。
 西夏語/西夏文字バシバシ出て来たし。
 やっぱ李元昊が漢語に見立てた(?)日本語話すと雰囲気台無しだもんね。

 事実なんてものは、たとえ後から何とか事件と名付けられるような歴史的事件でも、散漫で淡々として山もオチも見えづらいもの。映画(小説も)と歴史的事実は全くの別物なので、そこを混同しない限りはまーまー演出の範囲内という事で。

 なんかNHK大河ドラマみたいな雰囲気になってはいたけど。李元昊が織田信長っぽく見えた(笑)。
 それでも、西夏人はちゃんと西夏語しゃべってて、なかなか凝ってる。西夏の話なのに、西夏人あんまり出てないけど。

 全員日本人キャストだと人の見分けが付くという利点があるが、これだけのロケ、人、馬をかけて日本国内だけにしか通用しないというのは興行的に成功しなそうだなぁ、とちょっと心配。

 まず弓、弩弓、投石器で弾を浴びせかけた後に騎馬隊が突っ込むシーンなんて迫力あったし。ただ、あのかなり冗長な戦闘シーンを一般の人が見ておもしろいと思うかどうかは、ちょっと心配。

 騎馬部隊の後ろに歩兵が控えていたり、弩弓や投石器など飛び道具が充実してる甘州ウィグルがやられる所はどうも納得いかなかったが(感情的に)。だいたい何でウィグルが城を守っているのかという。甘州なんて住民は漢人なんだろうから、不利だったら城も町も捨てればいいのに。冒頭に出てた地図の上だともっと西の方もウィグルの領土になってた事だし。

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2016年4月15日 (金)

「黄金のアフガニスタン」展見てきたよ

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 さっそくですが、東京国立博物館で開催されている「黄金のアフガニスタン」展見に行ってきました。

 やっぱり、一番インパクトがあったのはティリヤ・テペの所でしょうかね。そのデザイン、スキト・シベリア文化のあれとかそれとかで見た事ある~って感じのが特に良かったです。

 この展覧会のマスコットになってるムフロン君もここですね。ムフロン君も含め、細かくヒツジヒツジしてる装飾品見て、やっぱり遊牧民はヒツジだよね、とか妙に納得したりして(笑)。

 ひしゃげてもいず、最近作ったのかって感じなのは驚きました。短剣なんか刃の所はボロボロだったので、金だからこそですが、あそこまで完全なカタチをしているとは…。

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←カタログのこの部分がその繊細さを的確に表していてステキです。

 

 そして最後は平山郁夫氏の有名な在りし日のバーミヤンの大仏でした。

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Panda

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 その後は、科博の「恐竜博2016」でスピノサウルスさんのワニのような口先を堪能しましたとさ。

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 もちろん、常設展のメガロドン(メガシャークさん)の歯も見てきましたよ。スピノサウルスとティラノサウルスの歯を触ってるときも、「この歯のフチのギザギザ、サメみたい」とメガシャークさんを思い出してうふふとなりました。

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2016年4月14日 (木)

ドキュメンタリー「ソ連vsドイツ スターリングラード攻防戦」

ナショナル ジオグラフィック チャンネル
完全再現!史上最強の軍隊 (吹替版)シーズン1
第5話「ソ連vsドイツ スターリングラード攻防戦」

 今回は、1942年8月~スターリングラード攻防戦、パウルスvsチュイコフ。
 なんとなくだけど、チュイコフの紹介に毒があるような。たたき上げで何が悪い(笑)。対するパウルスが誇り高いプロイセンの軍人が~って言うのは、絵に描いたようなソ連の宣伝の描くドイツの指揮官だよな。まぁ、元々のモデルがパウルスだったりするのかもしれないけど。

 スターリングラードに関する映画は幾つもあるけれど、どうしても一人一人の人間を描かく必要から、極めて局地的な戦闘を取り上げる事が多いから(これでも「スターリングラード」の狙撃手ザイツェフもちょろっと紹介されてるけど)、こういう大局的な視点も必要かな、と思って見てみた。でもまぁ、あんまり気分の良いものではないねぇ。

 「新兵は動員されたその日に死んでいった」ってのがいかにもソ連だよなあ。資源が豊かな国らしく石油でも弾でもじゃばじゃば使うもんな。それと同じ感覚で人間も使っているんじゃなかろうか。「捕虜となった兵士を一人として見捨てない」とかいうスローガンを真に受けて本当に助けに行ってるようなぬるい軍隊は大怪我するのかもしれないけど、嫌な軍隊だよな。市民をわざと残したってのもなんだかなぁ。

 チュイコフの教え、
「まず手榴弾をぶち込め。突入し、軽機関銃で掃射しろ。奥へ進み、再び手榴弾だ。次の部屋に入って軽機関銃をぶっ放し、先へ進め」
それって、まさに今の戦争じゃん。今の世にも通用するような事言ってるんだ、へぇって感心した。いや、むしろきれい事でなく本音をぶっちゃけるとそうなるのか?

 このドキュメンタリーで唯一おもしろいと感じられたのは冬将軍の話。
 冬なんか地元のソ連軍の方が有利に決まってるとは思ってたけど、両軍の軍服の防寒性の比較実験はおもしろかった。あんなにはっきり違うとは。シベリア出兵の時の日本兵も冬は酷い目に遭ったと聞くが…どうしてそういう基本的な情報を調べないで侵攻するかな?アホですか?とも思うけどさ。

 それにしても、戦車で自動車を踏みつぶすデモは必要だったろうか。やりたかっただけ?(笑)

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2016年4月13日 (水)

映画「ロシアン・スナイパー」

ロシアン・スナイパー [DVD]

2015年ロシア/ウクライナ
監督:セルゲイ・モコリツキー
キャスト:
リュドミラ・パヴリチェンコ…ユリヤ・ペレシリド
レオニード・クツェンコ…エヴゲーニー・ツィガーノフ
ボリス・チョパク…ニキータ・タラソフ
ニコライ…アナトーリィ・コット
マーシャ…ポリーナ・パホモヴァ
マカロフ…オレーク・ヴァシリコフ
エレノア・ローズヴェルト…ジョアン・ブラックハム

 1942年秋。アメリカで開催された国際学生集会の席で、ローズベルト大統領夫人のエレノアは、子供にしか見えないソ連の狙撃手が気になってしようがなくなった。

 25歳の小柄な彼女が309人もの敵を射殺したのだという。

 彼女は知的で英語を話すし、一兵卒にはみえず、ソ連の送り込んだ宣伝要員のように思う者もいた。エレノアは特に彼女一人を招待して身近でじっくり観察するうちに、彼女の体験してきた戦いがいかに過酷であったか少しずつ見えてきた。

 それはセヴァストーポリ防衛戦。
 1942年7月に20万人の犠牲を出して陥落したソ連の負け戦。その数少ない生き残りがパヴリチェンコだったのだ。

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

 邦題やトレーラーで「ロシア」「ロシア」連呼してるけど、リュドミラが学生してたキエフも海水浴で水着披露してるオデッサも、みーんなウクライナだよな。普通に「ソ連」にしとけば無問題なのに、なんでわざわざロシアにした?

 セヴァストーポリはクリミアにあるから、何らかの圧力でも掛かったのかと勘ぐるレヴェル(笑)。

 戦時中のスターリンのプロパガンダと見られがちな女性スナイパーの真実の姿、というテーマなんだろうけど、かえってそれが今のプロパガンダに使われてるんじゃ…と少し引っかかる。一個人は今も昔も所詮、政治に振り回されるばかりって皮肉かい?

 もちろん、主人公はシンボルに祭り上げられただけで過酷な運命であった事には間違いはなく、その点は心が揺さぶられる。

 しかし、何ヶ月も訓練して戦場に行ってるし、これはかなり理想的なあるべき赤軍の姿を描いているように思う。レニングラードなんか、義勇兵をさんざん募っておいて、ろくに訓練もせず、武器も持たせず戦場に送り、当然即日死亡、なんて例も多かったと聞く(他でもそういう話あるらしいし…㍉をたじゃないから詳しくは知らない)。あるいは、女性は色々目立つから、モデルケースとして普通より手厚く扱われてたのかも。

 それにしたって敵は女だからって手心を加えたりはしないから、過酷な戦場であった事は嘘でも捏造でもないのだろう。
ただ、自分があの場にいたらと想像すると、血みどろの泥まみれで濡れた軍服のまま寝て病気にならないか?とか、そもそも下着洗う暇も場所もないよね?とか、生理の時どうしてんだ?とか、日々の暮らしを考えると、赤軍かくあるべし、という理想的な所しか描いてないような気もしてしまうのだ。

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2016年4月10日 (日)

「部族篇4」の翻訳終わったよ

 『モンゴル史』「部族篇4」翻訳終わりました。

 問題はまだ残っていますが、校正しようと印刷したらこんなになっちゃいましたー。

Honbun

 いやー、片面印刷だし、二つ折りだからブワッとしてるし……。

 冊子にしたら、もっとスリムになりますよ~……たぶん。

 

 

 

Inohana05

 現像待ってるうちにすっかり桜終わっちゃいましたね。まだ八重桜があるか。


 

Inohana03

(どうせ桜はどうでもよくてお祭りしたいだけだろ~~~猫・談)

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2016年4月 9日 (土)

映画「スカイ・イーグル」

スカイ・イーグル [DVD]

2011年トルコ
監督:オメル・ヴァルギ
キャスト:
アーメット…チャアタイ・ウルソイ
アイシェ…オズゲ・オズピリンチジ
ブルジュ…ハンデ・スバシ
タナチャン大尉…エンギン・アルタン・ドゥズヤタン

 時節柄、時事ネタが入っていたらおもしろい、と思ってちょっと期待した。

 領空侵犯機に対するスクランブルの場面から始まったので、
「すわ、某R国機か?! げ、撃墜するんですか?!」
とドキドキしたが、そんなこたーなかったぜ(そりゃそーだ←制作年的に・笑)。

 戦闘機飛行中の危機的状況は、ちょちょっとあるだけで、肉親の死に目に会えなかったり、訓練が忙しくて恋人との関係が危なくなったり、コクピットでゲロを吐いたり訓練生から外されそうになる個人的な危機。

 厳しいけどステキな戦闘機乗りのステキな訓練生活が描かれているのは、どこの国でも同じだっちゃー同じなんだが、主席で卒業したのが主人公の幼友達のアイシェだってところがトルコらしいかも。確か、アタテュルクの養女サビハ・ギョクチェンがトルコ初の女性パイロットだったはず。日本じゃあまり女性の戦闘機乗りも旅客機のパイロットも聞かないよな。アメリカだといるようだけど。

 原題は「アナトリアの鷲たち」。トルコ空軍100周年記念にトルコ空軍の全面協力の下製作された映画だそうな。オーソドックスだけれども、今話題のトルコの空軍がどんな所か、他の国と違うのか、同じなのかちょっと見てみるにはちょうど良い。タイムリーでございました。

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2016年4月 7日 (木)

映画「チャイルド44」

チャイルド44 森に消えた子供たち [Blu-ray]

2015年チェコ/UK/ルーマニア/ロシア
監督:ダニエル・エスピノーサ
キャスト:
レオ・デミドフ…トム・ハーディ
ネステロフ将軍…ゲイリー・オールドマン
ライーサ・デミドヴァ…ノオミ・ラパス
ヴァシーリー…ジョエルキナマン
ヴラド…パディ・コンシダイン

 第二次世界大戦の英雄レオ・デミドフは、戦後国家保安省(MGB。NKVDの後身、KGBの前身)に勤めていた。その任務というのは、ぶっちゃけ、密告によって人々を逮捕し、拷問して自白を強要する、といったようなもの。科学捜査からは、およそほど遠い。

 そして1953年。戦友でもある同僚のアレクセイの子供が不慮の死を遂げた。

 正式の調書では事故だとされていたが、レオは子供の死体を見せられ不審に思っていた。
「うちの子は殺された!」
と訴える母親や検死官の言葉から、疑念を抱いてちょっと調べただけで、似たような「死亡事故」が幾つもあった事がわかってくる。事故でなく殺人事件だったと確信し、それをそのままにしてはいけないような気がしてきた。

 なぜなら、これが本当に殺人なら、シリアルキラーを野放しにしておく事になってしまうからだ。

 しかし、きちんとした捜査をしようとすると、それはどうも上司のお気に召さないらしい。レオの身辺に次々とおかしな事が起こり始め、彼はヴォリスクという地方都市の民警に飛ばされてしまう。

そして、着任するなり不審な状況下で子供が死ぬ事件が起こる。その地方の警察署長ネステロフ将軍はレオを中央から派遣されてきた密偵ではないかと疑っており、レオがこの件を連続殺人事件として捜査する事に難色を示す…。

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

 題名からして有名なウクライナのシリアルキラー・チカチーロ事件に着想しているんだろうと容易に想像が付くが、チカチーロに当たる殺人犯ヴラドについてはほとんど描かれていないで肩すかしを食らった。これ原作があるらしいから、たぶん、そっちを読んだ方がおもしろいと思うよ。尺に限りがあるから、どこかに焦点を当てなきゃならないってのはわかるけど、これは映画化失敗の部類だと思う。

 だいたい、主人公が何でもすぐに暴力で解決しようとしているのが私の好みじゃなかった(笑)。子供が次々と殺されているのに、それを自分の復讐のネタにしてるみたいでやな感じだよ。
 でもまぁ、この人は若い頃から戦場で人を殺すのが生業だったんだからしょうがないっちゃーしょうがないんだけどな。軍隊と警察では、適性が違うからね。ソ連だと、警察も軍隊と同じような階級使ってるから同じように見えるけれども、軍隊に事件の捜査は専門外。
 それにしても、ここに描かれているのは随分とちょろい保安機関だな。国民からしたら災厄でしかないが、外国、例えば謀略なんてお手の物の英国からしたら良いカモじゃん。ずっとこういう無能な防諜機関のままでいてもらった方が鉄のカーテンのこちら側からしたらありがたいわな。

 ヒロインもヒロインで、
「レオ! レオ!」
と叫んでいるばかりで常に棒立ち。たとえ出しゃばりで空回りであっても、もっと活動的な女性の方がよかったなぁ。あれでは、口先では止めてと言いつつ、レオをけしかけて殺人教唆しているようにしか見えない。

 その点、ネステロフ将軍が私の好みのオヤジ刑事だった。オヤジと言うにはちょっと歳食ってるかな。地道な捜査をして犯人を地味に絞り込んでいったのはこの人だし。

 あと、蒸気機関車が走って行く森の風景が素晴らしく美しかった。アレどこでロケしたんだろ? ルーマニアかな?

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2016年4月 3日 (日)

映画「日蓮と蒙古大襲来」

日蓮と蒙古大襲来 [DVD]

1958年日本
監督:渡辺邦男
キャスト:
日蓮…長谷川一夫
北条時宗…市川雷蔵

 昔は「仮面ライダーX」のような子供向け番組でも、チンギスカンコンドルのような怪人に使われたりして、モンゴルのイメージは悪かったような気がするんだけど(なにしろコイツは有名なヒトデヒットラーの仲間だ)、今はあんまりそんな事もない。少なくとも、チンギスは「大悪人」ってカテゴリじゃないと思う。今だったら、ヒトデヒットラーの仲間には、スルメスターリンとかが良さげだが…。むしろ今は実在の人物は使わないか。

 だから、今でも「書かれた歴史は農耕民族側からの偏見でなんちゃら」とか書かれているのを見てもピンと来ない。まぁ、普通に日本の立場からしたら攻撃を受けた側だから当然だよな、とは思うでけどさ。っていうかアレは日本の対応も悪いよな。日本って鎌倉時代の昔から、外交で回答出来ないで無視って対応が多いような気がする。

 で、昔はどんなイメージだったのかを知ろうと思い、おもいきり昔、自分が生まれる前の映画を見てみた。

…のだが、オープニングからこちらの思惑なんか吹き飛ばしてくれた。
 主題歌、「南無妙法蓮華経」連呼。宗教色強すぎないか?
…ま、まぁ、最初に歴史無視してますって宣言して始まってるからいいか…な?

 モンゴルのイメージなんかぶっ飛ぶ日蓮全面押し映画だった。
 日蓮を迫害すると大地震が起こって大地は割れーの、処刑しようとすると雷が落ちーの、日蓮が読経すると一天にわかにかき曇り嵐になりーのの、大スペクタクル!

 でも特撮ファンなら一度は見るべき映画だった。嵐でモンゴル軍の船が翻弄されて壊滅するシーンは圧巻。
 ミニチュアで水を表現するのが一番難しいって聞いた事あるけど、とてもミニチュアとは思えないスケール感。今こんなの実写でできないもんな。特撮部分の時間も長いしじっくり堪能できた。

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