映画「ロシアン・スナイパー」
2015年ロシア/ウクライナ
監督:セルゲイ・モコリツキー
キャスト:
リュドミラ・パヴリチェンコ…ユリヤ・ペレシリド
レオニード・クツェンコ…エヴゲーニー・ツィガーノフ
ボリス・チョパク…ニキータ・タラソフ
ニコライ…アナトーリィ・コット
マーシャ…ポリーナ・パホモヴァ
マカロフ…オレーク・ヴァシリコフ
エレノア・ローズヴェルト…ジョアン・ブラックハム
1942年秋。アメリカで開催された国際学生集会の席で、ローズベルト大統領夫人のエレノアは、子供にしか見えないソ連の狙撃手が気になってしようがなくなった。
25歳の小柄な彼女が309人もの敵を射殺したのだという。
彼女は知的で英語を話すし、一兵卒にはみえず、ソ連の送り込んだ宣伝要員のように思う者もいた。エレノアは特に彼女一人を招待して身近でじっくり観察するうちに、彼女の体験してきた戦いがいかに過酷であったか少しずつ見えてきた。
それはセヴァストーポリ防衛戦。
1942年7月に20万人の犠牲を出して陥落したソ連の負け戦。その数少ない生き残りがパヴリチェンコだったのだ。
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邦題やトレーラーで「ロシア」「ロシア」連呼してるけど、リュドミラが学生してたキエフも海水浴で水着披露してるオデッサも、みーんなウクライナだよな。普通に「ソ連」にしとけば無問題なのに、なんでわざわざロシアにした?
セヴァストーポリはクリミアにあるから、何らかの圧力でも掛かったのかと勘ぐるレヴェル(笑)。
戦時中のスターリンのプロパガンダと見られがちな女性スナイパーの真実の姿、というテーマなんだろうけど、かえってそれが今のプロパガンダに使われてるんじゃ…と少し引っかかる。一個人は今も昔も所詮、政治に振り回されるばかりって皮肉かい?
もちろん、主人公はシンボルに祭り上げられただけで過酷な運命であった事には間違いはなく、その点は心が揺さぶられる。
しかし、何ヶ月も訓練して戦場に行ってるし、これはかなり理想的なあるべき赤軍の姿を描いているように思う。レニングラードなんか、義勇兵をさんざん募っておいて、ろくに訓練もせず、武器も持たせず戦場に送り、当然即日死亡、なんて例も多かったと聞く(他でもそういう話あるらしいし…㍉をたじゃないから詳しくは知らない)。あるいは、女性は色々目立つから、モデルケースとして普通より手厚く扱われてたのかも。
それにしたって敵は女だからって手心を加えたりはしないから、過酷な戦場であった事は嘘でも捏造でもないのだろう。
ただ、自分があの場にいたらと想像すると、血みどろの泥まみれで濡れた軍服のまま寝て病気にならないか?とか、そもそも下着洗う暇も場所もないよね?とか、生理の時どうしてんだ?とか、日々の暮らしを考えると、赤軍かくあるべし、という理想的な所しか描いてないような気もしてしまうのだ。
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