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2017年3月30日 (木)

ドキュメンタリー「ハッピー・ピープル タイガで暮らす一年」

Happy Peopleトレーラー(ワンコ走りバージョン)

2010年ドイツ/ロシア
監督:ウエルナー・ヘルツォグ/ドミートリィ・ヴァシュコフ
キャスト:
ニコライ・シニアエフ
ゲンナジー・ソロヴィヨフ
アナトーリィ・タルコフスキー

 エニセイ川中流バフタに暮らす人たちの暮らし。ロシアのTVシリーズを90分にまとめたもの。元のヤツは、ヴァシュコフ本人がTouTubeにアップしているのを見られる。ロシア語だけど

 タイガの中で黒貂を獲って生活しているハンターたちが、
「この暮らしがもっとも幸せだ」
と言ってるのは、『集史』に出てくるモンゴル時代の森の民が、
「ここの暮らしより良いものはない!」
と言って、羊を飼う暮らしを嫌悪しているのを思わせる。ラシードは、彼らが井の中の蛙でもっと良い生活を知らないからだと言いたげだけれど、そうじゃないのかもしれない。
 自分の力量だけが頼りの厳しい暮らしでも、誰にも束縛されず自分自身にだけ従っていれば良いという暮らしを好むということなのかも。そういう他人に支配されるのを嫌う人たちを、指揮官の命令には絶対従う兵隊にしたてるのは大変そうだ。だから、森のウリャンカイは軍隊に編成して戦に行かせたりせずに、チンギスの墓を守る役割を与えられたのかもしれないな。一人で墓所をパトロールなら得意そうだし。そういう適材適所に配したのは誰なのかねー。チンギスかな?

 村まで道がないって村はシベリアには他にも結構ありそうだね。まぁ、エニセイ河が道のようなもんだけど。エニセイ河畔の村の暮らしに興味のある人は、必見。
 ケート(エニセイ・オスチャーク)もちょっと出てるけど、特有の文化の紹介がほとんどないほどに、伝統文化は忘れ去られちゃってるとはねぇ。オンゴンみたいな家の精の人形を持ってたおばあさんも、家が火事になって村を離れてしまうし……。

 熊に食べられないように、木の高いところに食料をしまっておく話は、樹上葬の始まりはそういう事だったのかなーなんて考えさせられた。
 やっぱり、シベリア森の暮らしは興味深いんだけど、蚊がなー。夏のあのやけにでかい蚊が雲のようにまとわりつくのは、勘弁して欲しい。

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2017年3月23日 (木)

ドラマ「マルコ・ポーロ」シーズン2(2.腕の中で)

「マルコ・ポーロ」シーズン2オフィシャルトレーラー

2016年アメリカ
監督:ジョン・ファスコ
キャスト:
マルコ・ポーロ…ロレンツォ・リチェルミ
フビライ・ハーン…ベネディクト・ウォン
コカチン…チュウ・チュウ
チャブイ皇后…ジョアン・チェン
チンキム皇太子…レミー・ヒー
ナヤン…ロン・ユアン
ハイドゥ…リック・ユーン
百の眼…トム・ウー
アフマド…メヘシュ・ジェドゥ
ビャンバ…ウリ・ラトゥケフ
クトゥルン…クラウディア・キム
謎の女…ミシェル・ヨー

 英題はハグ……これ、フビライのハグなんだよね。山のような大ハーンのハグ……どわわわわ。

 さて、フビライ手ずから刎ねた首を、ハイドゥへの返事としてカラコルムへ持って帰ったビャンバ。宣戦布告をしたハイドゥは、多数派工作を進めているが、なかなか思うようにはいかないようで。

 その理由は、ハイドゥが少しクセが強いせいかもね。
 父親(カシ)が酒浸りだったせいで大ハーン位をトルイ家に奪われたと母親(シプキネ)にぐちぐち言われていやそうにしているが、彼自身も酒を絶対飲まないんだよね。カラコルムの酒の湧く木も、ハイドゥが命じて酒がでないようにしちゃってる。ポンジュースでも出ときゃ良いのにねぇ。せっかくオゴデイが作ったのにもったいない。
 トルイも酒で……とか言われてたし、ここの一族は酒飲みばっかりかい。

 一方、マルコは恭帝を大都に連れ帰ったが、宮廷内でコカチンに出会い、彼女がチンキムの妃担っているのを知ってショックを受ける……。
 ラストも、随分とショッキングな場面を目撃して、次回に続く。

ドラマ「マルコ・ポーロ」他のエピソード・シーズン2:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
番外編:百の目
シーズン1は こちら

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2017年3月21日 (火)

ドラマ「マルコ・ポーロ」シーズン2(1.狩人と織り手)

「マルコ・ポーロ」シーズン2オフィシャルトレーラー

Marcopolo

2016年アメリカ
監督:ジョン・ファスコ
キャスト:
マルコ・ポーロ…ロレンツォ・リチェルミ
フビライ・ハーン…ベネディクト・ウォン
コカチン…チュウ・チュウ
チャブイ皇后…ジョアン・チェン
チンキム皇太子…レミー・ヒー
ナヤン…ロン・ユアン
ハイドゥ…リック・ユーン
百の眼…トム・ウー
アフマド…メヘシュ・ジェドゥ
ビャンバ…ウリ・ラトゥケフ
クトゥルン…クラウディア・キム
謎の女…ミシェル・ヨー

 おおー、久々に帰ってきましたよ、「マルコ・ポーロ」。
 第一話は皆さんお変わりなく、といった感じで主要キャストが次々出てきて懐かしかった。

 ただ、最初の場面は、いったい誰?と思ってたら、チンギス・ハンみたいなんだよね。オゴデイかと思った。だってハイドゥに
「オマエの父はハンになる。その次はオマエがハンになる」
とか言ってるから……まぁ、それもヘンなシチュエーションではあるが。チンギス・ハンが後継者にってのはコデンぢゃね?とか、ハイドゥはチンギスと会ったことあったっけ?とか、釈然としないまま始まったけど、トレーラーもタイトル画も、「戦うフビライ」みたいな感じになってるから、ちょっと期待してる(笑)。

 さてそのフビライ。
 出て来るなり小山のような存在感。しかも肩にサルが生息していてワロタ。山のようになり過ぎだ。
 それは、チンキムとコカチンの婚礼の日のこと。忙しくしているフビライのところに、ビャンバが帰ってきた。ハイドゥの使者として、ハイドゥがクリルタイを開いて正統ハンになる意向だと伝えにきたのだ。

 一方、メイリンに案内させて宋の幼い皇帝を探しているマルコ。マングローブの林の中の水路を小舟で行く……って、そこ本当に中国?
 謎の女に襲われながらも、恭帝を見つける。

……と、ストーリィはこんなもんだが、今後キーとなりそうなのが満州のナヤン王子っていうやつ。満州ってモンゴル時代にはないような気もするが、まぁ、当時の地名でいってもわからないしな。それよりも、このナヤンって誰のことを言ってるんだろう? キリスト教徒で教皇の所に行くそうだが、フビライはおじ上って呼んでんだよな。母方のことなのかな? なんとなくオングドとケレイドを混同しているような感じもするが……。

ドラマ「マルコ・ポーロ」他のエピソード・シーズン2:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
番外編:百の目
シーズン1は こちら

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2017年3月18日 (土)

映画「レジェンド・オブ・ヴィー 妖怪村と秘密の棺」

レジェンド・オブ・ヴィー 妖怪村と秘密の棺(字幕版)

2014年ロシア/ウクライナ/チェコ
監督:オレーク・ステプチェンコ
キャスト:
ジョナサン・グリーン…ジェイソン・フレミング
パイシィ司祭…アンドレイ・スモリャコフ
ペトルーシ…アレクセイ・チャドフ
ナストゥーシャ…アグニヤ・ジトコフスキテ
ソートニク(百人隊長)…ユーリィ・ツリーロ
パンノチカ(お嬢様)…オリガ・ザイツェヴァ
ホマー…アレクセイ・ペトルゥヒン

 一部マニアの間で語りぐさになっている、ソ連時代のホラー映画『ヴィー(邦題:妖婆 死棺の呪い)』(1967年)のリメイク。むしろ二次創作か。テイストは、『ジェヴォーダンの獣』や『スリーピー・ホロウ』に似てるかな。イギリス人地理学者のジョナサンが、「お嬢様を殺したのは誰なのか? そもそもなぜ殺されたのか?」を科学的に探るというサスペンスになってる。もちろん、そんなことは原作にも書かれてはいないが。
 しかも、続編でジョナサンは中国に行くらしい。そこまでいったら、もはやヴィーとは関係ないじゃん……。

 1967年版はゴーゴリの原作をうまく映像化していて、あれ、リメイクする必要あんの???って感じだったから、今更同じことやってもしょうがないといえばしょうがない。幸い、邦題からは言わなきゃリメイクとは気付かないから、全く別物として見るのが吉かもしれないね。それにしても、司祭の行動の意味がサッパリわからんのだけれど。

 妖怪どもは……主役のはずのヴィーでさえ、回想と幻想の中でしか出てこないんだよなぁ。蹄のバケモノなんかは結構好きだけど!
 ヴィーは聖者カシヤーンみたいだった。いにしえの神のなれの果てだったら、もっと貫禄あってもいいような気もするが、不死身のカシェーイなんかも痩せた老人の姿で描かれるから、ああいうのが強力なバケモノのイメージなのかもなー。おもしろいね。

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2017年3月13日 (月)

映画「残穢 ―住んではいけない部屋―」

残穢【ざんえ】―住んではいけない部屋―

2016年日本
監督:中村義洋
キャスト:
私…竹内結子
久保さん…橋本愛
田村さん… 山下容莉枝
平岡芳明…佐々木蔵之介
三澤さん…坂口健太郎

 離れた場所、別の時代の事件と思われていた事柄が、調べていくうちに繋がっていく。複雑で特異な形をしたピースが、バチバチッとはまって巨大な全体像を形作る。

 実際にあったできごとに興味を持って調べていると、こういうことがよくある。ピースがぴたりとはまる時の爽快感を一度味わってしまうとやめられない。……という所に歴史好きと実話怪談マニアに通じるものがあるのかもしれない。

 読者の体験した実話をもとにした怪談を連載している小説家の「私」が、「久保さん」という読者の投稿してきた体験談を追っていくうちに、「話すだけで祟られる。聞いても祟られる」という怪談を生み出した深い怨念を掘り起こしてしまう……。

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 久々に書く感想がホラーかよ、と自分ツッコミを入れつつも、おもしろかったんだからしょうがない。じわじわくるホラーが好きな人にはお勧め。
……いや、「ホラー」とはちょっと違う。怖い昔話みたいな感じかな。子供のころ、「まんが日本昔ばなし」を見てトラウマになった話がある人にお勧め。またあの恐怖が甦ってくるよ。

 ここにはオバケらしいオバケはあまり出て来ない。怖いのは人の情念というところがいい。いいというかじわじわくる。虫の知らせのようなのとか、気の触れてしまった人たちは実は見てはいけないものを見ていたから……というところは、幽霊を信じない人でもあまりにも強い人の情念が見せたものとして理解できるんじゃないかな。
 むしろ、無残な死に方……この話の場合はほとんど人災による……をした人たちが、人を呪うことくらいしかできずに消されてしまった表の歴史……「正史」の方が、怖いでしょ?

 最後の男性陣の二人の体験は、ホラーっぽくてせっかくのイヤな後味を微妙なものにしている。漫画チックで笑っちゃうんだけど、あれがなかったら、確かに、あまりにも怖すぎた。あれはある意味、自主規制だよな。

 歴史好きの自分にとってのクライマックスは、作家・平岡芳明さんが登場した喫茶店でのシーン。なにやら、似たような名前の怪談作家がいたよなあ、とにやにやしながらも、彼が話す、
「実話怪談集めている同士が話すと、似た話知ってるってなることあるでしょ……(中略)……全く別の話だと思ってたのが、たぐっていくと根が同じだったってのがある。そういうのは業が深い」
という所にすごく共感した。歴史でもそういうのあるある。だから、時代違い、地域違いでも歴史好きが集まる場というのは、得るものが多くて楽しいんだよねぇ。

 そして、「あれ?」と違和感を持ったところは、大切にすべきだ、というのは改めて思った。
 その時点ではその違和感の理由について論理的に説明できなくても、一般的な説明を鵜呑みにせずに調べていけば、案外核心が出てくるというのは、歴史でも実話怪談でも同じみたいだね。

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