古代オリエント博物館にギョベクリテペ遺跡関連の講演を聞きに行ったよ
ギョベクリテペと言えば、トルコ南東部にある世界最古の神殿とも言われる有名な、そして謎の多い遺跡だ。
この遺跡に関する特別講演会「世界最古の神殿—トルコ、ギョベクリテペ遺跡とその周辺—」が、古代オリエント博物館であると聞きつけ行ってみた。
平たいT字型の石柱に特徴的な動物紋様が刻まれ、顔は表現されないものの、全体的には人間を表している……とくれば、モンゴル高原周辺の鹿石に似てない?ってことで、これは是非聞きたいと、早めに出たつもりだった。
しかし、着いた頃には大入り満員の大盛況。150人程度は来ていたかな。テーブル席に着けずに横に並べられたイス席に座ったよ。
エルドアンが今年を「ギョベクリテペ年」に指定したそうで、駐日トルコ大使も挨拶したりしてトルコ側はたいへんな力の入れよう。日本側も主催者挨拶をした古代オリエント博物館館長、司会進行・通訳ばかりでなく聴衆にも第一線の研究者が集っていたもよう。メインのギョベクリテペ遺跡についてはネジュミ・カルル・イスタンブル大学教授、ここで起こった変革が周囲に与えたインパクトとその伝播についてはエイレム・オズドアン同大学准教授が講演した。
第一線で活躍する研究者の話す最新情報は、予想以上に刺激的だった。
私が思っていた、①あんな巨石をどこから持ってきたんだ? ②神殿に入り口がないってどういうことだ?
……という素朴な疑問は、質問票に書くまでもなくあっさり解決。講演の中で語られた。
すなわち、①石切場は、ギョベクリテペから500mも離れていないところにあり、石の目に沿ってはがして切り出した(切ってないのに「切り出した」と言うのもヘンだけど)
②神殿には、ドーム状の屋根に入り口があり、ハシゴで出入りしてた
……そうな。宇宙人のオーバーテクノロジーじゃなかった(笑)。
おもしろいなと思ったのは、真ん中にあるひときわ背の高いT字型の二本の石柱は人間を表しており、それをぐるりと取り囲む背の低い石柱には牙をむく恐ろしげな野獣が描かれているっていうことは、人間が世界の中心であるということを意味しているという説。こういう考え方って、キリスト教的な世界観につながって、現在まで生き残っているんじゃないかなって思った。蛇の紋様が好んで描かれるのも、キリスト教で蛇が悪魔扱いされてるのと関係ありそうな気がしない?(古い神は貶められる的な)。
もう一つは、神殿を廃棄するには手順がいるってこと。自然に寂れていつの間にか使われなくなったんじゃなくて、最初に小石、次に土、最後に大きな石を入れるという決まった手順があった。そうやって丹念に埋められたからこそ現在完全な形で発掘された……という。
ギョベクリテペは孤立した遺跡でなく、近場に似た遺跡がいくつもあって考古学者には知られていたそうだが、その一つジュルフェルアハマル遺跡のケースだと、頭を取り外した少女を神殿の真ん中に置いて、意図的に火を放って廃しているんだって。……これ、絶対なんかヤバイもの封印しているよね(笑)。
ギョベクリテペ遺跡についてのナショジオのドキュメンタリーを見たことがあるが、ちょっと古い情報だったので、1万2000年前の突拍子もない遺跡かと思っていた。が、今回の講演を聴いて、現在にしっかりと繋がっていると感じることができた。
こうした古代の歴史については、新しい遺跡が発掘されてどんどん新しい発見があるから、常に最新の情報に接しておくのは大切だし何よりおもしろい、と改めて思った。
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