2022年8月11日 (木)
2020年8月10日 (月)
『モンゴル紀行』(1972年)を読んでみたらおもしろい発見があった
小澤重男さんと言えば、岩波文庫版『元朝秘史』や『元朝秘史全釈 』で大いにお世話になった(翻訳時に参照しまくった)ので、小澤重男=元朝秘史ぐらいのイメージができあがっていたのだが、この本に小澤さんが山登りする話が書いてあるらしいと知り、「そんなスポーツマンな面もあったのか!」と少々意外に思って気になっていた、、、割にはツンドラ……いや積ん読になっていたので、今更ながら読んでみた。
読んでみたら、あらすごい。「山登り」程度の話じゃなくて、モンゴル西部の未登峰ハルヒラーに、しかも隊長として挑むというガチな話。いまどきの日曜登山家がホイホイ難しい山に登っちゃうのとはわけが違う。何かすごい。
しかもこれ、日本とモンゴルの間に国交がない時代の話なんだよね。モンゴル人力士が日本で大勢相撲を取っている今からは想像しにくい時代だなぁ……と思ったけど、やっぱりモンゴルだなぁと思えるところはそこかしこにあった。良いところにしろ、悪いところにしろ(笑)。
でも、さすがにその辺の草っ原に飛行機(国内線ではあるが)が離着陸ってのは、今はないだろうなぁ。「そういうの、ノモンハン(ハルヒン=ゴル)戦記とかで読んだことあるぞ」って思ってしまった。……でもわからない。そんなにモンゴルを極めたわけではないので、地方空港へ行ったら案外その辺の好きなところに着陸するスタイルだったりして。
全体の分量の半分以上が、山そのものに着くまでのあれこれの困難と、登頂後のモンゴルの歓待ぶり。登山そのものの記述よりずっと多かったので、アネクドートの「レーニンと会った農民が出版した本」みたいになっとる(笑)。
とはいえ、登山の拠点となる地方都市がウラーンゴム(オラーンゴム、ウランコムとも)、しかもロシア(ソ連)経由で行く話だったので、「どうやって行くんだろう?」と興味津々ではあった。モンゴル西部とロシアは、ハイウェイで繋がってるとかいう話だったので。
しかし、何のことはない。イルクーツクから飛行機でウランバートルへ飛んだだけだった。ちなみに、草っ原滑走路は、ウラーンゴムの話。
ところで、なぜウラーンゴムかというと、ルーン文字碑文と同時期(9世紀前半)に建立されたと覚しきウィグル文字の碑文があるから(何が書かれているかはシェルバク『ターキッシュ・ルーン テュルク人最古の文字の起源』参照)。本文中ではこの碑文に全く言及されていなかったけどね。そのため、見過ごしそうになったが、この碑、挿し絵の写真に写っているではないか!
露天に雨ざらしなのでレプリカかもしれないが、当時のモンゴルだったら、オリジナルが雨ざらしってこともあり得る。まぁ、今ではさすがにそんなことはなかろうが。
直接関係ないナー、と思っても、どこにどんなお宝が潜んでいるかわからない。自分の担当地域(笑)の情報は、片っ端から洗っておくに越したことはないもんだ。
2019年6月 9日 (日)
『大旅行記』の家島彦一氏の講演を聴きに行ったよ
第五回三笠宮オリエント学術賞授賞式の記念講演なのかな?
家島彦一氏のイブン・バットゥータについての講演会を聴きに行ったよ。
一般の人(私のような)も混じっているということで、あまり専門的な話ではないということだったけれども、イブン・バットゥータについて話しても話しても話し足りない、彼の旅行や手稿本について調べるのが楽しくて楽しくて仕方ない、というのがバンバン伝わってきて、平凡社東洋文庫の『大旅行記』もジョチ=ウルス関連のところしか読んでなかったけれども、そんなにおもしろいなら、他のところも読みたくなってきた(←思惑通りの反応?)。
だいたい、私の担当(?押し?)の時代は、テュルクでもモンゴルでもイスラムじゃない時代なので、イスラム世界の常識がイマイチわかっていないんだよねー。だから、ラシードの言ってることがナンノコッチャってところがある。特に『モンゴル史』第1章。『大旅行記』は註も充実しているから、楽しみながら読んでイスラムに親しんでおこう、と思った。
……てなことを考えながら地下鉄に乗っていたら、つい九段下まで乗り越してしまい、仕方なく降りる羽目に。で、久々にナウカに行ったら、オルホン、イェニセイだけでなく、タラス及びチュー、イルティシ、イリ、シル=ダリヤ、ヤイーク(ウラル)といろいろな場所で発見された古代トルコ=ルーン体(突厥)文字碑文・銘文の載ってる本があった!
昨年のウィグル・ルーン体文字碑文の薄い本を作った時は楽しかったなぁ、やっぱ突厥・ウィグル碑文関連で何かやりたいよなぁ、と思ってしまった。
夏には、『モンゴル史4』の改訂版を準備中。そろそろこれで部族篇も完成だからと、底本になっているロシア語訳『集史』の訳者ヘタグーロフさんに関するお話「交響曲第七番 レニングラード」をweb上で読めるように公開しておいた。
しかし、ルーン文字関連のもやりたいし、ロシア人名に関する本についても相談中だし、あれもこれもやりたいこと多すぎ(笑)。
やりたいこと全部にどっぷり浸かれるだけの時間と体力と集中力が欲しいもんじゃのぅ。
2019年1月 3日 (木)
2018年12月23日 (日)
年末寒波爺到来でもこれで大丈夫@土西へ17a
あわあわしてるうちに、コミケットまで1週間を切ってしまいました!
気になる年末の天気ですが……
本年最強寒波爺(ジェッド・マロース)襲来!
……だそうで。
ちゃんと足先ホカホカのヤツを用意しましたよ。
露天のようなものなので、じっと座っていると冷えますが、ちゃんと対策しておけば、そんなに寒いとも思わないんですけどね。夏ノ方ガヨッポド地獄ジャ
何年か前にリアノーボスチが凍傷防止の心得として出していた動画には、
①朝食を食べる②アンダーシャツを着込み、靴下も履き、スニーカーでなくブーツを履く③手袋、マフラーをして帽子を被る
……なんてあったけど、その通りでしょう。特に朝食は大事よ。
……参加者は朝まで準備に追われ、亡者のようになってやって来るのかもしれないけど、朝ご飯しっかり食べると、随分違いますぞ~。
このように本自体はできているので、何か配付資料ができないかと今やってます(汗)。
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2018年11月14日 (水)
コミックマーケット95に参加します
コミケット95「群雄」土曜日西地区 "へ " 17a
群雄堂書店は、冬コミ参加しますよ~。
薄いけど、ウィグル=カガン国時代のルーン文字碑文関連の資料翻訳済みなので、何とかして出したいと思います。本当にうっすいケド(32頁くらい?)……。
まだ、荒訳しただけだけど、既にクワルナフの馬頭さんにカッコイイ地図を作ってもらったので、落とすわけにはいかない。自分で自分の尻に火を付けてみた!みたいな(笑)。
なんでも、群雄は夏に取材を受けた何とかいう雑誌に載るとかなんとかいう噂なので、全く新刊がないのは寂しいなーと思ってひねり出しました。夏コミから時間がないからこんなんで許してー……っていうか、さっさと校正しろー>自分
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2018年8月29日 (水)
プーさんの夏休みに思う冬に出すかもしれないウィグル本の話
こちらプーさんの夏休み@トゥヴァです。↓
Отдых в Туве: как Путин провёл выходные на Енисее (プーチンの休日@エニセイ)
トゥヴァは、接待しているショイグさんの出身地でもあるけど、こういう帰属問題があるところに積極的に大統領が出向いてパフォーマンスするってのは、「ここはロシアの領土である」という強いアピールでもあるんだろうね。
トゥヴァにあるポル=バジン遺跡についての研究に国からお金が出るってのも、まぁ、その一環なんじゃないの。んで、どんどん研究成果を出して各国の研究者が引用していけば、ロシアの一部というイメージは固まっていくわけじゃん?
で、突然なんでトゥヴァの話を始めたかって言うと、先日のコミケットで、露語版『集史(年代記集成)』へロマスケーヴィチの書いた序文を配ったけど、「手作業でやるの大変だから、印刷に回したらどうか?」と、編集長から提案があったんだよね。
でも、8ページだと「薄い本」というよりはチラシ。
なので、先日の編集会議(という名の飲み会)で、「せっかく印刷に回すなら、以前ポル=バジンについての論文を読んで半端に訳したのがあるから、どうせ小冊子を出すならそれの方が良いんで内海?」ちう話をしたわけ。ウィグル=カガン国のルーン体文字の碑文については、大昔に訳したのが他にもあるし。
と、いうわけで、もしかしたら冬コミには、ウィグルの突厥文字碑文についての薄い本が出るかもしれないです。
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2018年1月23日 (火)
ハザールの「旧約的」歴史観は『集史』に影響を与えたのだろうか?
ふぅ、ようやく『集史』の総序に当たる部分の翻訳できた。
今かよ! おせーよ! 冬コミ間に合わなかったじゃん!……というツッコミは自分でしとくとして。
なんか、まだ、「???」って箇所があるんだけどねぇ。とりあえずは出来た!!!
あんまりぐだぐだやっててもしかたないんで、なんとか『モンゴル史』「部族編1」の改訂にくっつけて夏までには出したいもんだ。なぜか「部族篇1」が一番出るんだよなぁ。なんで?
「部族編1」は、イスラム教的世界史の中に、モンゴルをどうやって位置づけるかってことでオグズ説話が出てくる章だ。
なので、『集史』にも言及している『普遍史の変貌―ペルシア語文化圏における形成と展開―』を読み始めた。
ところで最近、別件でハザール可汗国のことを調べていて、ハザールの可汗ヨセフがアンダルス(後ウマイヤ朝)のハスダイに出した返書をじっくり読んだ。そしたら、ヨセフが物語るハザールの位置づけが「部族篇1」に出てるオグズの位置づけによく似てるじゃあーりませんか!
ハザールはオグズじゃないしムスリムでもないから、オグズ説話は出てこないんだけど、ハザール族の祖とされるハザールを、やはりノアの子ヤペテの曾孫の位置に入れているんだよね。オグズ(グズ)とも兄弟になってるし、よく似てるなーと思って。ひょっとして、ハザールの歴史観が『集史』に継承されているんじゃね?
ラシードも、参考にした書物にユダヤの五書を挙げてるから、元ネタは同じなのかもしれない。そもそも、ラシードはユダヤの書物に詳しいかもしれないし。それにしても似た感じがするんだよなぁ。『王書』だと、テュルクの祖はフェリドゥーンの息子から出てるはずだから、全然ペルシャ的ではなさそう。
「普遍史」にテュルクを組み込む試みってのは、イスラム世界の世界観に先行して、ハザールのユダヤ教的世界観があったのかもしれないなー、なんて考えたりして。
『普遍史の変貌』には、その辺、書いてあるかなー? 目を皿のようにして読みますぞー。
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2017年1月17日 (火)
「ラノベのようにすらすら読める集史」シリーズ第二弾が出たよ
Kindleアンリミテッド人気にあやかろうと、始めた『ラノベのようにすらすら読める集史』シリーズ。ようやく第二弾ができました。もっとサクサク出そうと思ってたのに、めちゃめちゃ手間取ってしまいました。ひえ~。
どうでしょう。読みやすくなっているでしょうか???
でさでさ、イスタンブル写本系の特徴で、例の「トゥンガイドとトゥマウドの中身が逆になっている」ってヤツとか直してないんだよね。
「引っかからずにすらすら~ッと読める、っていうのがウリなら直せよ?」
と思ったりもしました。
でも、自分ではラノベのように気軽に読めるようリライトしたつもりでいても、結局、読むのはそういう写本の違いまで熟知している歴史マニアだけだから大丈夫なんじゃないか???と思ってそのままなんですけど!(群雄堂版には、書いてあるしね!)
どうでしょう? ご意見ご感想お寄せください。
なるほど、違いがわからん!
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2016年7月23日 (土)
ハザール帝国時代の墓地を発掘しているよ
シンフェローポリ市(クリミア)のサイトによると、東ボスポロス調査隊がケルチ市郊外クズ=アウル遺跡でハザル可汗国(ハザール帝国)時代のアランと見られる人々の墓を発掘したと報じています!
2016年7月21日
クリミアで考古学者が古代の墓地を発見(写真あり)←というかほとんど写真
場所はケルチの郊外です。
上の記事の写真見ると、海に臨む高台(海岸段丘の上)のようですね。
古墳好きも納得の(?)良さげロケーションです。
プレス・リリースによると、手に持ってるのが石英塊、銅製の装飾品とおもり。1~1歳半の子供が埋葬されてました。その遺骨の上には玉髄の大きなビーズ。5~8世紀のいわゆる「サルトフ=マヤーツカヤ文化」に属しているものである事が判明しています。というわけで、この墓の被葬者はハザル可汗国を構成していたアランであったとみなされています。
遺骸は法医学鑑定ののち発掘物共々クリミアの博物館に収められるとのことですが、具体的な館名が書いてない…クリミアにあるのなら、いずれにせよ、なかなか行くのが難儀そうな(政治的に)所でしょうなぁ。
ハザールってだけでユダヤがどうのー、アシュケナージがどうのー、色々面倒くさい事を言ってくる人がいるのに、クリミアかよ!って思いますが、政治的意図があるからそこら辺から発掘費用が出てくるんでしょうね。ポル=バジンなんかもそうでしょう。わざわざプーチンが見に来たりしてさ。
考古学なんて浮き世のどろどろからほど遠い、純粋でひたむきな学問のようなイメージがありますが、なかなかに生臭い事でございます。
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より以前の記事一覧
- 講演会「文字のシルクロード」聞きに行ったよ 2016.05.22
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- 【翻3-30】カガンのフィギュア 2007.06.30
- 【翻3-29】ウルスとは、人々…とは限らない 2007.06.29
- 【翻3-28】キリスト教徒いろいろ 2007.06.28
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- 【翻3-25】カシュガルのマフムード 2007.06.25
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